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夜はカレーが0円! 名古屋喫茶のモーニングが夜向けに進化。「カフェヨシノ」のファイナルサービス

大竹敏之名古屋ネタライター
カフェヨシノ中島店(名古屋市中川区)で2月1日から始まったファイナルサービス

夕方5時~閉店までカレーまたはクリームぜんざいが無料!

名古屋の喫茶店ではおなじみのモーニングサービス。朝の時間帯にコーヒーなどのドリンクを注文すると、トーストやゆで玉子などが無料でついてくるのが名古屋や周辺地域では当たり前となっています。

「朝以外もお得に利用したい!」—、そんな声に応える新たなサービスが登場。「カフェヨシノ」(本社/名古屋市)のファイナルサービスです。

カフェヨシノ中島店(名古屋市中川区)で2024年2月1日からスタートしたこのサービスは、17~22時の間に店内飲食でドリンクを注文すると、ミニカレーまたはクリームぜんざいが無料でついてくるというもの。カフェヨシノは愛知県内に17店舗を展開する喫茶店チェーンで、モーニングサービスはもちろん、午後の時間帯(14~17時)にはドリンクにシフォンケーキがつくアフタヌーンサービスを全店舗で導入していて、これで朝・昼・晩、ランチタイムをのぞくと一日を通してお得なおまけサービスを受けられることになります

カフェヨシノ中島店は2023年11月にオープンしたチェーン最新店。同チェーンはコロナ禍以降の時短策で現在は夜7時までの営業の店が多く、今後は順次、営業時間延長とファイナルサービス導入を進めていく計画
カフェヨシノ中島店は2023年11月にオープンしたチェーン最新店。同チェーンはコロナ禍以降の時短策で現在は夜7時までの営業の店が多く、今後は順次、営業時間延長とファイナルサービス導入を進めていく計画

若い世代と夜需要の獲得を狙う

「喫茶店はミドル~シニアのお客様が中心ですが、学生さんなど若い世代にももっと利用していただきたい。ファミレスなどに行っている人たちにも足を運んでもらうきっかけになれば、と考えました」と社長の吉野貴士さん。

若いお客と合わせて獲得したいのが夜の需要です。「夜間の集客は、喫茶店という業態そのものの課題でもありますが、特に名古屋の喫茶店はモーニングが非常に強いので、夜に利用するというイメージを抱いていただきにくい。ファイナルサービスはこれで売上アップを狙うというよりも、とにかく夜営業を認知してもらうことが目的です」(吉野さん)

モーニング、アフタヌーン、ファイナルサービスはそれぞれ0円メニューがあり。ランチもリーズナブルで、1日を通してお得感を享受できる
モーニング、アフタヌーン、ファイナルサービスはそれぞれ0円メニューがあり。ランチもリーズナブルで、1日を通してお得感を享受できる

同社は昨年11月に同じくカフェヨシノ中島店でほぼ業界初となるドライブスルーを導入。これも子育て世代や外回りのビジネスマンらへ訴求する取り組みで、今回の新サービスも若年層の掘り起こしや利用シーンの拡大を狙ってのものといえます。

「ドライブスルーでもモーニング。名古屋喫茶チェーン『カフェヨシノ』のライバルはコメダじゃない(!?)」 2023年11月14日)

サービス限定のメニューも。ダイエット需要にもマッチしそう

筆者も早速、ファイナルサービスを体験。ミニカレーはレギュラーメニューでも人気のオリジナルカレーを1/4程度のボリュームにしたもの。牛すじ、フルーツなどを6時間以上煮込んだカレーはまろやかなコクがあり、味の満足度は文句なしです。スプーンで5口程度の量で、これだけで満腹になるものではありませんが、ダイエットを意識している人であればちょうどいいかも。クリームぜんざいは、オリジナルの小倉あんにソフトクリームをトッピング。同社の前身は和菓子店だけあって、あんこは甘さに深みがあり本格的。軽めのデザートとして罪悪感を抱かずに食べられます。

ドリンク代+0円のミニカレー。ご飯の量は小ぶりのお椀一杯分程度。味わいが専門店顔負けなため少量でも満足度があり、ダイエット派の晩ご飯にもうってつけ
ドリンク代+0円のミニカレー。ご飯の量は小ぶりのお椀一杯分程度。味わいが専門店顔負けなため少量でも満足度があり、ダイエット派の晩ご飯にもうってつけ

この他、ドリンク代+500円でつけられる鉄板インディアンスパゲッティも。カレーをからめたスパゲッティを鉄板皿に盛って卵をしく、名古屋の喫茶店ではしばしば見られる“隠れ名古屋めし”的一品です。人気商品のカレーをソースとして使っているので味のクオリティは高く、ボリュームも十分です。

レギュラーメニューにはない鉄板インディアンスパゲッティは“隠れ名古屋めし”。ボリューム十分で、ドリンク代+500円はリーズナブル
レギュラーメニューにはない鉄板インディアンスパゲッティは“隠れ名古屋めし”。ボリューム十分で、ドリンク代+500円はリーズナブル

他社にも真似をしてもらい、新たな名古屋喫茶発のサービスに

「ファイナルサービスはファミレスの利用客を意識してはいますが、食事の場の替わりというよりも、ファミレスのドリンクバーを利用しておしゃべりを楽しむ、そんなニーズを取り込みたい。地域の憩いの場という役割をいっそう高めるための取り組みなのです」と吉野さん。

喫茶店は近年、コメダ珈琲店に象徴されるように郊外の大型店が増えています。個人経営の小規模店は夕方までの営業の店が多く、夜のおまけサービス導入は現実的ではありませんが、大型のチェーン店の多くは夜間も営業していて、若い世代と夜間需要の獲得は業界全体の課題。カフェヨシノの取り組みが成功すれば、今後同様のサービスが広がっていく可能性もありそうです。

他社にも真似をしてもらいたいし、真似してもらえるようにこのサービスを定着させたい。そうすれば名古屋発の新しい喫茶店サービスとなり、当社がその先駆けとなりますから(笑)」と吉野さん。0円でおまけがつくお得さで話題をふりまきつつ、最大の狙いは喫茶店の地域に根ざした利便性の向上なのです。

名古屋喫茶の代名詞ともいうべきモーニングサービスももちろんあり。ドリンク代+0円でトースト、ゆで玉子がつく。写真はブレンド珈琲、レギュラーの2・3倍のデラサイズ680円
名古屋喫茶の代名詞ともいうべきモーニングサービスももちろんあり。ドリンク代+0円でトースト、ゆで玉子がつく。写真はブレンド珈琲、レギュラーの2・3倍のデラサイズ680円

名古屋の喫茶店で日常の風景となっているモーニングのにぎわい。今後はこの風景が、夜も同様に見られることになるかも(!?)。モーニングを全国区にした名古屋の喫茶文化が、また新たなムーブメントの発信地となるか、注目です。

(写真撮影/すべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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