ドライブスルーでもモーニング。名古屋喫茶チェーン「カフェヨシノ」のライバルはコメダじゃない(!?)
あのコメダにもないドライブスルーモーニング喫茶店
名古屋の喫茶店でおなじみのモーニングサービス。名古屋および周辺エリアでは、コーヒー代だけでトーストやゆで玉子がついてくるのが常識です。
この文化が根づいた名古屋で、新しいスタイルのモーニングが登場。「カフェヨシノ」(本社/名古屋市)のドライブスルーモーニングです。
「カフェヨシノ」は名古屋を中心に愛知県内で多店舗展開する喫茶店チェーン。グループ17店舗目となる中島店(名古屋市中川区)を2023年11月14日にオープンし、東海地方発祥の喫茶店チェーンとしては初となるドライブスルーを導入しました。あのコメダ珈琲店でも、まだこのシステムはありません。
「+0円」でトースト付き。しかもイートインより130円安い!
ドライブスルーでももちろんモーニングサービスを採用。しかも、店内で飲食する場合はコーヒー480円のところ130円安い350円に。この価格で午前中(7~11時)はトースト(バター、小倉、卵サラダペースト、ブルーベリージャムトーストの中から選べる)、午後(14~17時)はアフタヌーンサービスとして自家製シフォンケーキが「+0円」でついてくるのです。
「コロナ禍を経て、6割以上の方が『ドライブスルーの利用頻度が増えた』と回答するという調査結果もあります。カフェのスターバックスコーヒー、ファストフードのマクドナルドでは当たり前ですが、大手以外で、しかも喫茶店チェーンではこのシステムを本格的に取り入れているところはほとんどありません。従来のメインターゲットである50~60代のお客様の下の世代を獲得するためにもドライブスルーは有効だと考えました」と社長の吉野貴士さん。
店内では480円のコーヒーを130円も安くしたのは、「喫茶店のコーヒー代にはサービス代、場所代が含まれる。それがなくなってもなおお得さを感じていただけるよう、この価格設定にしました」と吉野さん。
その他、テイクアウト市場の拡大にも対応し、新メニューをおよそ100アイテム開発。ドリンクのサイズも選択肢を増やし、ドライブスルーではより手軽なスモールを用意。さらにドライブスルー、イートインともにレギュラーより1・5倍のジャンボ、2・3倍のデラ(名古屋弁で「すごく」の意)をラインナップしているのもユニークです。
ライバルは喫茶店ではなくコンビニやマック(!?)
名古屋の喫茶店でモーニングが盛んなのは、単にお得さが求められているだけではなく、喫茶店という空間の中でゆったりと過ごす“いっぷく”の習慣が文化として根づいているからとも考えられます。車に乗ったままコーヒーとトーストを受け取ってテイクアウトするドライブスルーは、名古屋の喫茶店ユーザーに受け入れられるのでしょうか?
「店内でゆっくり過ごすお客様もいらっしゃいますが、滞店時間は平均すると1時間以内。“手軽にコーヒーを飲みたい”というニーズは、特に若い世代を中心に確実に増えていると感じます」(吉野さん)
お得な上にお手軽。つまり、ドライブスルーモーニングのライバルは、同業の喫茶店よりもむしろコンビニやファストフードということになります。
「その通りです。だからこそ350円という価格で、トーストも付くモーニングが必要だった。コンビニのコーヒーは100円で、朝食としてパンなどを買い足すとおよそ300円台。ドライブスルーモーニングは価格は同等な上に、車から降りずに済み、手軽さという点で優位性があります。また、外食業界全体を見渡してもドライブスルーのお得なモーニングセットはほぼマクドナルドしか選択肢がない。従来の喫茶店のお客様に加えて、それ以外の利用者を新たに取り込みたい。それによって喫茶店のモーニング文化をより広げられるはずです」(吉野さん)
大手は売上の5割がドライブスルー(!)。喫茶店の可能性を拡大
カフェヨシノはこれまでほぼ直営店のみでの展開(フランチャイズは直営からの譲渡の1店舗)でしたが、ドライブスルー型を標準に本格的なFC展開を進めていく計画だといいます。その狙いからしても、加盟店に対する訴求力を高めるために、既存のお客をイートインとドライブスルーで分け合うのではなく、イートインにドライブスルーの需要を上乗せする必要があります。
「喫茶店チェーンのドライブスルーはほぼ前例がないので、具体的な売上見込みは出しにくいのですが、大手カフェチェーンでは売上の50%をドライブスルーが占めるともいわれます。当社でもイートインだけの店舗よりも売上を高められると考えています」(吉野さん)
また、業界初ともいえる新業態の開発は、想像以上に難しかったともいいます。「シンプルな仕組みかと思ったらまったく違いました。ドライブスルーのシステムは大手しか持っておらず、POSもそれぞれ独自に開発している。当社の新店舗でもキッチンのスペースが2倍になり、従業員はそれぞれ別々で必要です。つまりひとつの店舗内にふたつの業態があるようなもの。フルサービスとセルフサービスの同居がこんなに難しいとは思っていませんでした」(吉野さん)。
それだけに他社がおいそれと追随できるものではなく、同社が2号店、3号店とドライブスルー型店舗を増やしていけば、先行した強みがより発揮されていくと考えられます。
名古屋に本拠を置く喫茶店チェーンとして、今や業界のガリバーとなったコメダ珈琲店の対抗勢力とも見られがちなカフェヨシノですが、ドライブスルーモーニングは競合する喫茶店以外に対しても競争力を示せるもの。そう考えると、この新業態は喫茶店の可能性や市場性をより広げるポテンシャルを秘めているともいえます。
喫茶店のモーニングをより多くの人、幅広い層へと広めようとするドライブスルーモーニング。名古屋発の新たな喫茶店文化となる、かもしれません。
(写真撮影/すべて筆者)