「賑わい」をわざわざ潰して進める「しゃれた街並み」づくり
以下朝日新聞より転載。
渋谷の109裏のエリアを東京都が「しゃれた街並みづくりの推進」の一環として再開発を進めるという報道です。
渋谷の109裏の一連のエリアは、渋谷内でも雑居ビルが沢山建ち並んでいるエリアの一つ。私が大学生の時代、あの辺を拠点にウロウロしていた時代には「いわゆる風俗街」そのものでありましたが、最近では個性豊かなカフェや居酒屋も集まり、「ラブホテルの横で若い女性が酒を呑む」というなかなか面白い発展をしていました。まあ、行政はむしろ「それ」が気に入らないから「おしゃれな街並みづくり」に描き変えるんだということでしょうが。
この種の雑居ビル群の再開発において、行政は大体「建物の老朽化が問題」などという錦の御旗を掲げるがちなわけですが、建築基準法や消防法に基づいて敷設された建築物がその地域に存在していることに何ら問題はないわけで、もしその基準を満たしていないというのならばそれぞれの建物に対して個別に必要な措置を行えば良いだけ。実態は「老朽化」が問題なわけではなく、その地域の風土そのものが行政観点で「気に喰わん」ということだけであります。
ただ「夜の街づくり」を専門としている私の観点からすれば、渋谷の百軒店に限らず、街の賑わい、特に夜の街の賑わいというのは一回、エリア的な再開発をかけてしまったらそのまま消滅してしまうことが殆どであるということ。そこを理解せず、再開発をかけるも客足が戻って来ず失敗に終わる再開発は全国津々浦々に沢山存在します。
そもそも、雑居ビル群エリアに個性豊かな個店が様々集まるというのは、減価償却が終わった古いビルであるからこそ(相対的に)、安い家賃で挑戦的かつ実験的ななコンセプトを持った商業が展開できるが故。そこに再開発をかけてしまえば、同じエリアにその様な商業が「帰って来れる余地」はそもそもないわけで、結局、再開発エリアに集まってくる商業者は新築ビルの高い家賃に耐えうる大きな予算を持ち、確立したビジネスモデルを持っている大規模商業者のみとなる。結果的に、どこの街にでもある様なチェーン店中心の街並みになるしかないわけです。
「坪単価●万円で再開発し、▽年償還をするとするとー」と要件を定めて計算をすれば、再開発後のエリアの家賃相場はそう難しくもなく算出できますから、既存の様々な業態と比較しながらその家賃に耐えうる商業というのがどういうものなのかをシミュレーションしてみればよい。それが行政が、そして地域の市民たちが望む街並みだというのならば、やってみれば良いんじゃないでしょうかね?(棒)
その様な感想しかないニュースでありました。