チュアメニとロメウ。現代のアンカーに必要な「調合力」と「戦術眼」。
攻撃と守備の繋ぎ役は、重要だ。
昨シーズン(昨季)、チャンピオンズリーグを制したのはマンチェスター・シティだった。そのシティには、ロドリ・エルナンデスというスペイン代表のアンカーがいる。ファイナルのインテル戦で、ロドリが決勝ゴールを叩き込んだのは、印象的だった。
今季、序盤戦で苦しんでいるシティだが、ロドリ不在時に勝ち点を落としているのは明らかだ。それほどまでに、アンカーのポジションは大切なものなのである。
リーガエスパニョーラに目を向けると、いわゆる2強で、コントラストが見えてくる。
オウレリアン・チュアメニ(レアル・マドリー)とオリオル・ロメウ(バルセロナ)の立ち位置だ。
■調合力と戦術眼
チュアメニは昨夏、モナコから移籍金8000万ユーロ(約120億円)でマドリーに移籍した。高額な移籍金で、期待を背負ってのビッグクラブ加入だった。また、マドリーが昨夏にカゼミーロをマンチェスター・ユナイテッドに放出したことで、移籍一年目からチュアメニの負担は大きかった。
チュアメニのポテンシャルは絶大、そのように思われていた。確かに、スピード、スタミナ、フィジカル、プレー強度、申し分ない能力を持っている。ミドルシュートという武器があり、かつ中盤から鋭い縦パスを差し込める。だがチュアメニには、決定的に不足している要素が二つある。自身の能力の「調合力」、そして「戦術眼」が欠けている。
チュアメニを「シングルプレーヤー」だと仮定してみよう。プレー映像を抜き出せば、彼は非常に上手い選手として映るはずだ。だがチームとして、組織としてのピースになると考えた時、逆に“浮いた存在”になってしまう。ひとつひとつのプレーは巧みだが、必要なタイミングで顔を出すことや、大事なスペースを埋めることが、できない。
カゼミロは違った。【4−3−3】のアンカーポジションに入り、トニ・クロース、ルカ・モドリッチの後方のスペースを悉(ことごと)く潰していた。グアルダ・エスパルダ(スペイン語で『背後を守る人』の意)のニックネームを授かり、そのタスクを全うしていた。
ただ、これはチュアメニの移籍一年目の話である。移籍二年目の今季に関しては、変化が訪れている。また、今後はセンターバックで起用される可能性があり、新たな境地が開拓されるかもしれない。
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■財政事情と純粋なアンカー
ロメウは、この夏、ジローナから移籍金350万ユーロでバルセロナに移籍した。バルセロナのカンテラで育ったロメウにとって、待望の復帰だった。
しかし、バルセロナはロメウを補強のファーストオプションにしていなかった。セルヒオ・ブスケッツの昨季限りでの退団を受け、代役として候補に挙げられていたのは、マルティン・スビメンディ(レアル・ソシエダ)やジョシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン)といった選手だった。
財政事情に顧みて、バルセロナはロメウの獲得に踏み切った。開幕から、シャビ・エルナンデス監督はロメウをアンカーに据えた。フレンキー・デ・ヨング、ペドリ・ゴンサレス、ガビ、イルカイ・ギュンドアン、ここにカンテラーノで台頭するフェルミン・ロペスが加わり、中盤の層は厚くなるはずだった。
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