林修氏が「日曜日の初耳学」でカツカレーを完全否定して賛否両論! 番組での酷評が残念な理由
カレーが人気
カレーは好きですか。
ネットリサーチのDIMSDRIVEが行った調査によれば、月1回以上カレーを食べる人は、男性が83.2%、女性が71.9%となっており、多くの方に支持されていることがわかります。
・「カレー」に関するアンケート/ネットリサーチDIMSDRIVEの公開アンケート調査結果/DIMSDRIVE
好きなカレーの種類については、ビーフカレーが64.9%と一番人気です。以下、ポークカレー48.3%、チキンカレー48.0%、カツカレー40.5%と続きます。面白いのは、カツカレーは、男性では3位となっていますが、女性では7位となっていること。
カツカレーは非常に重たいので、女性よりも男性に好まれる傾向にあるのでしょう。
テレビ番組でカツカレーについて是非
このカツカレーが、あるテレビ番組で取り上げられ、賛否両論を呼びました。
・カツカレー論争 「別々に食べたい」という否定派に愛好家たちが猛反論/マネーポストWEB
・林修先生、カツカレーをバッサリ酷評 「1+1が絶対2にならない料理」/Sirabee
2021年11月28日に放送されたTBS系「日曜日の初耳学」でのこと。著名な飲食店プロデューサーの稲田俊輔氏がカツカレーについて、「日本人はカレーを見たら何かをのせたくなる民族」「1+1が1.5くらいにしかならない」と言及。
インタビュアーである林修氏も賛同します。「カツが本当においしい店で最高においしいカレーは作れない」「カレーがおいしい店はカツを揚げる技術を持っていることが少ない」ということで「1+1が絶対2にならない料理」と講評しました。
これに対して、SNSなどのネット上で、賛成や反対など様々な意見が挙がったということです。
番組ではカツカレーが完全に否定されたような感じでしたが、改めて考察したいと思います。
カツカレーについて
まず、カツカレーとはどういう料理か、改めて紹介しましょう。
カツカレーとは、カレーと豚カツを合わせた日本料理です。ご飯の上に豚カツをのせてからカレーをかける場合もあれば、ご飯の上にカレーをかけてから豚カツをのせる場合もあります。
豚カツの代わりに、牛カツやチキンカツ、メンチカツやハムカツを用いることも少なくありません。キャベツの千切りが添えられたり、ゆで玉子やナポリタンが付け合せになったりすることもあります。
カツカレーの歴史
では、日本でカツカレーが生まれたのはいつでしょうか。
おとなの週末Webに詳しく掲載されています。
・【元祖】カツカレー巡礼!カツカレーの歴史をひも解く東京4店/おとなの週末Web
カレーは1873年に「西洋料理指南」で登場したのが初めてで、豚カツは1899年に銀座「煉瓦亭」でポークカツレツとしてメニューに記載されたのが嚆矢とされています。
そして、1918年に浅草「河金」でご飯の上にキャベツと豚カツをのせてカレーをかけた「河金丼」が誕生しました。1948年になって「銀座スイス」でカツカレーというメニュー名が登場。
カツカレーは100年以上も前に誕生し、多くの人々に愛された結果、今日まで受け継がれてきました。カレー専門店や豚カツ専門店で提供されています。
ファストフードでも提供されるようになっており、幅広く認知され、人気のあるメニューになっているといってよいでしょう。
組み合わせ
カツカレーは、カレーと豚カツを組み合わせた料理であり、独立した料理と独立した料理が組み合わせになったもの。
豚カツの脂とカレーの濃厚さは互いに強いものであり、食味を強める方向にあるといってよいでしょう。その一方で、豚カツの衣がサクサクしているのに対して、カレーはしっとりとしており、食感は反対にあるといえます。
どちらとも日本の洋食黎明期に誕生したものであり、文化的な背景も近いです。
カレーと豚カツの組み合わせは、100年という歴史の長さからも日本人の舌に合っていると考えてよいでしょう。カレーに鴨のコンフィを合わせたり、ピラフの上に豚カツをのせたりするよりはずっと、適切な組み合わせであるように思います。
食における人の嗜好は千差万別。何と何が合っていて、何と何が合っていないのか、完全に決めつけることはできません。
したがって、林氏や稲田氏のように、自分の嗜好に合わないと思うのは問題ありませんが、カレーと豚カツの組み合わせが誤りであると一刀両断してしまうのは、やや行き過ぎであるように感じられます。
1+1がどうなるのか
1+1が2以上にならないのが、カレーと豚カツの組み合わせが否定された根拠でした。
この2倍の定義は、食味が2倍になるという意味だと認識していますが、どういった状態が、2倍の食味といえるのでしょうか。カレーと豚カツが合うか合わないかを議論するよりも、何倍になっているかを議論する方が難しいように感じられます。
他の料理で考えてみると、たとえば、牛フィレ肉のロッシーニ風という、フランスの古典的な料理があります。牛フィレ肉のステーキの上にフォアグラのソテーをのせ、黒トリュフのソースを合わせた贅沢な料理です。
昔から続く豪華でおいしい料理ですが、牛フィレ肉のステーキとフォアグラのソテーを合わせたら2倍の食味になるのか、これに黒トリュフのソースを絡めたら3倍の食味になるのかと問われたら、明快に回答できるでしょうか。
日本料理は引き算の料理、フランス料理は足し算の料理とよくいわれます。しかし、フランス料理に関しては、1つ要素を増やしたら、食味が2倍になることを意味しているわけではありません。足し算することによって、メインの食材を引き立てたり、ハーモニーを奏でるようになったり、多面的になったりすることをイメージしています。
したがって、2倍以上になっていないからという理由では、納得してもらいにくいのではないでしょうか。
食味ではなく値段で考えると、見方が変わります。カツカレーは、カレーと豚カツを別々にオーダーするよりもお得なのは確かではないでしょうか。コストという意味では2倍以上の価値があるかもしれません。
専門店で専門以外の料理
カレー専門店は豚カツの専門店ではなく、豚カツ専門店はカレーの専門店ではないので、カレーと豚カツそれぞれで最高のものが食べられないという主張もありました。
その飲食店が最も得意とするものが一番おいしいのは確かです。ただ、専門店で、その専門以外のものが提供されているケースは少なくありません。
蕎麦屋で天ぷらが揚げられていたり、焼肉店で肉寿司が握られていたり、ピッツェリアでパスタが茹でられていたりと、割と多いです。
回転寿司店に至っては、ラーメン、うどん、一品料理、デザートなど寿司以外のものがたくさんレーンの上を回っています。
ファインダイニングであれば、おまかせコースで、料理人の得意とするものだけを提供すればよいでしょう。しかし、カジュアルな業態では、幅広いメニューを用意して客に多くの選択肢を与えたり、客単価を上げるために内容を少しでも豪華にしたりするので、専門以外のメニューも提供しがちになります。
その飲食店が本当に専門としているもの以外を食べないとなると、選択肢は狭まってしまうでしょう。
海外でもカツカレーが人気
数年前から海外でカツカレーが人気となっています。イギリス、アメリカ、フランス、オーストラリアなどでブームとなっているようです。
・イギリスで「カツカレー」が大ブーム!人気の秘密と、日本では絶対に入っている“あの具材”が入っていないワケ/TABIZINE
・カツがなくてもカツカレー? 海を渡ったがっつり飯/NIKKEI STYLE
・イギリスで日本の「カツカレー」が“国民食”になっている驚きの理由(江國 まゆ)/マネー現代
宗教上の禁忌や健康的であるということから、豚カツではなく、鶏肉のチキンカツをのせたチキンカツカレーが特に人気。カツカレーという言葉がそのまま通じるなど、寿司、天ぷらと並んで日本食のひとつとして認知されています。
日本の食文化を世界に広めていくためにも、カツカレーは重要な料理のひとつとなっているのです。
カツカレーを提供する飲食店
食べログによれば、日本におけるカレー店は23,923軒、豚カツ店は6,987軒あり、合計してみると約3万軒。SARAHによれば、カツカレーを提供している飲食店は4,051軒にも上ります。
※いずれの軒数ともに記事執筆時点
この全ての店でカツカレーを提供しているわけではありません。しかし、少なからぬ飲食店が日々、カレーを煮込み、豚カツを揚げて、カツカレーを提供していることは確かです。
日本で100年の歴史を誇り、カレーと豚カツの組み合わせというボリュームから、多くの日本人の胃袋を満たしてきたカツカレー。海外でも日本食であると認識され、日本の食文化を広めるために貢献しています。
公共の電波を用いた影響力のある番組であるだけに、個人的な感想で完全否定するだけに終始せず、もう少し深掘りした内容になっていればよかったと、残念に思います。