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「選挙は政策論争が大事」というバカの一つ覚え

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(236)

文月某日

選挙と言えばメディアはバカの一つ覚えのように「政策論争をしろ」と言い、政策が最も重要な判断基準になるとの印象を国民に与える。しかし選挙には政策を選ぶ選挙もあれば人間を選ぶ選挙もある。

東京都知事のように大統領型のリーダーを選ぶ選挙では政策もさることながら候補者の人間力を選択するのが世界の常識ではないか。間もなく本選挙が始まるアメリカ大統領選挙の場合、人間力を見極めるため候補者同士のディベートが行われる。ディベートは政策論争のように見えるが実は候補者の人間力を見極める機会なのだ。

基本的にアメリカの共和党と民主党との間に大きな政策的差はない。共和党が「小さな政府」を、民主党が「大きな政府」を志向する傾向はあるが、それは絶対的なものではなく、人によって幅があり流動的である。安全保障政策などはほぼ同じと言って良い。

これまでのアメリカ大統領選挙を見てフーテンが感じてきたのは、現職大統領に対抗する候補者は現職の親中国路線を痛烈に批判して選挙を戦う。ところが選挙に勝って大統領に就任すると次第に中国との関係を親密化する。すると次の大統領候補者もその親中国路線を批判し、それがまた大統領になれば中国との関係を重視する。この繰り返しである。

つまり選挙で掲げた政策は当選すると現実の利害関係に左右されて変わるのだ。しかしだからと言って公約違反と非難されることはない。政治の現実は大統領のやれることが本人の意向通りでなくなることが十分にあり得るからだ。ただしその結果責任は甘受しなければならない。それがリーダーの務めである。

問題は政策よりリーダーとしての資質があるかないか。それを見極めるためアメリカでは1年間という長期間の大統領選挙を行う。長い期間を戦う資金を調達できるのもリーダーになるための重要な資質である。また過去の不祥事やスキャンダルの追及を受けることも、マイナス面を持つことが問題なのではなく、そこからどう立ち直るかの人間力が試されるのである。

そしてアメリカ大統領は独裁者ではない。議会のチェックを厳しく受けることになる。ただし官僚機構には自分と政策的に同じ人間を起用することができる。そのため大統領の交代によって政府の官僚機構も数千人規模で交代が起こる。しかし東京都知事にその権限はない。都知事が交代しても16万人の行政機構は微動だに動かない。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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