米菓、主原料のコメが不足・高騰 光明は高まる需要 持続的成長へ各社試行錯誤
米菓業界にとって今年は試練の年となる。食品や他の菓子カテゴリーと多分に漏れず様々なコストが上昇基調にある中、これまで比較的安定していた国産米の価格が不作により跳ね上がったためだ。 これについては、価格高騰以上に、米菓を安定供給していくための量の確保が切実な問題となっている。 主要企業はコストを二の次に国産米をかき集めることに専念するとともに外国産米の輸入量を増加。 ただし、その外国産米も安価ではなく、主要生産地の不作により高値基調にあり、その上、円安が追い討ちをかけている。 このように増大するコストに加えて人手不足も深刻化。唯一とも言える明るい兆しは需要の高まり。各社とも持続的成長に向けて、売上拡大による収益確保や生産効率の改善に試行錯誤している。
米菓市場は昨年前半、2022年2月に発生した三幸製菓・荒川工場(新潟県村上市)の火災により、品薄状態が続いていた。 そこにトップの亀田製菓が1月から順次実施した価格改定後の需要予測で見誤り、想定を超える需要に対応しきれずサプライチェーンが混乱。これにより空いてしまった米菓の棚を埋めるべく多くの企業が増産対応に追われたとみられる。 後半に向けては、亀田製菓が体制を徐々に整え高まる需要に対応。三幸製菓も火災から一年半が経った23年9月時点で、同社生産能力は火災前の8割程度、商品のカバー率は9割弱まで回復し、2023年米菓市場はプラスで着地。24年3月期(23年4月1日~24月3月31日)の多くの企業も増収の着地見込みとなる。 インテージSRI+によると、米菓(せんべい・あられ)の2023年1-12月販売金額は前年比7.9%増の2389億円。 インテージの市場アナリストの小澤俊之氏は昨年の市場について「(三幸製菓の)火災に伴う工場の稼働停止の影響を受けて減少していた22年から回復の傾向が見られている。とりわけ22年に大きく落ち込んだ3月から8月にかけては顕著な伸びが見られた」と総括する。 市場が活性化する中、コストアップの吸収や安定供給が引き続き課題となる。 「今期(8月期)は前期以上に厳しい環境に置かれると想定している」と語るのは、天乃屋の大砂信行社長。 「歌舞伎揚」など揚げ物を生業にしている天乃屋は前期、食油の価格が2倍(ピークは3倍)に跳ね上がったことが直撃した。そのほかの原料資材も軒並み値上がりし、さらには電気・LNGなどの燃料も高騰し売上高に占める原材料の比率は上昇している。 今年、これまでのコストアップ要因に加えて、主原料である2023年産国産米が不足・高騰し厳しさを増している。 ひざつき製菓の膝附武男社長は「主原料であるお米の仕入れ単価が約2倍に高騰しているため、昨年12月からは5~6%の利益減になっている」と語る。 国産米の不足・高騰には、昨年の猛暑で2023年産国産米が高温障害により不作となったことが起因。高温障害とは、稲の吸水が蒸散に追いつかずしおれて枯れてしまう障害のことで、農家も人手が足りず特に丘陵地にある棚田への散水が滞ってしまったためとみられる。 これにより米菓向けの国産米は歴史的な不足に陥り、多くの企業は外国産米の使用増加や使用増加に伴う産地表示の変更を迫られている。 ぼんちは、アメリカ産米の使用量を増やしていく。ただし、代替となる外国産米も円安で高値基調にある。 ぼんちの遠藤純民社長は「22年アメリカ産米は、一大産地である米西部カリフォルニア州が干ばつ被害に遭い生産量が減少。その影響を受けアメリカ産米は高騰しているが、原材料の確保を第一と考え、購入量を増やすことにした」と述べる。 アメリカ産米の使用量増加により、ぼんちは、今年の施策の1つに産地表示の変更を掲げる。 「最初の対象商品は『海鮮揚煎』の『おじゃこ揚げせん』『うに揚げせん』『えび揚げせん』3品。3月のパッケージリニューアルのタイミングで、表示をうるち米(国内産、米国産)からうるち米(米国産、国内産)へと切り替えた」(ぼんち・遠藤社長)という。 栗山米菓、天乃屋、金吾堂製菓なども今後、一部商品の表示を、うるち米(国内産、米国産)からうるち米(米国産、国内産)へと切り替えを進めていく。 一方、国産米100%使用に徹する岩塚製菓は、契約圃場から飯米(はんまい)を先物買いして調達していることから、国産米高騰の蚊帳の外にある。 *3月29日付米菓特集一部抜粋