デトネーションエンジン搭載の極超音速ミサイル「ガンビット」アメリカ軍の開発の歴史を紐解く
ロケットエンジンに代わる画期的な推進装置「デトネーションエンジン」。2021年に日本が世界で初めて宇宙実証に成功したことでも話題になりましたが、アメリカでも研究が進められています。
本記事では、アメリカの研究状況、そして極超音速ミサイルへの転用についても解説していきます。
日本が世界で初めて宇宙実証に成功「デトネーションエンジン」爆轟を利用した革新的な宇宙用エンジンとは?
■爆轟を利用した「デトネーションエンジン」
デトネーションエンジンとは、火炎の速度が音速を超える爆発的な燃焼現象「爆轟」で発生した衝撃波を推進力とすることで、小型軽量、かつ既存のエンジンよりも低価格で安く高速飛行をさせることができるのです。このエンジンが実用化されれば、従来のロケットより効率の高い宇宙往還機の実現が期待されます。
2021年には、JAXAが観測ロケットにデトネーションエンジンを搭載し、世界で初めて宇宙実証に成功したことでも話題になりました。
■デトネーションエンジンを搭載した航空機「Long-EZ」
2008年には米空軍研究所が主導し、スケールド・コンポジット社の自作機「Long-EZ」を開発し、世界初の有人パルスデトネーションエンジン搭載機による飛行試験が実施されました。この航空機は、時速170km以上で飛行し、高度20mまで上昇することに成功しています。当時の空軍は、改良されたデトネーションエンジンを開発することができれば、航空機をマッハ4以上の速度で飛行させることができると発表しています。そして、スクラムジェットなどの他の推進システムと組み合わせれば、さらに高い速度で飛行させることができると言われています。
■アメリカ空軍とセントラルフロリダ大学がデトネーションエンジンを開発
2020年、セントラルフロリダ大学のチームは、空軍研究所と協力して、燃料が切れるまで燃焼を続ける世界初の実用デトネーションエンジンの製作に挑戦しました。結果は試験に成功し、このコンセプトが可能であることを事実上証明しています。このチームが開発した直径約30cmの銅で製作された試験装置は、90kgfの推力を出すことに成功しました。
■デトネーションエンジン搭載超音速ミサイル「ガンビット」
そして2022年、アメリカ国防高等研究計画局「DARPA」は、デトネーションエンジンを搭載した超音速ミサイルプロジェクトである「ガンビット」を発表しました。開発担当の候補企業になっているのは、液体燃料ロケットエンジンで知られるロケットダインや、戦闘機などのエンジンメーカーで知られるプラット・アンド・ホイットニー社です。
アメリカ空軍では、デトネーションエンジンの開発が最優先事項として指定されており、少なくとも3つのデトネーション兵器、または実証機の開発を開始しているとのことです。より速く、より強力なデトネーションエンジンですが、宇宙開発やロケットへの利用ではなく、兵器としての利用が念頭に置かれてしまっているようですね。
今後の技術革新にも目が離せませんね。
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