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パズドラでギャンブル?賭博業の未来は

木曽崇国際カジノ研究所・所長

さて、昨年末あたりからずっと注視をしてきた案件が、いよいよ一歩前進しそうな気配を見せています。以下、New York Postからの転載。

アトランティックシティ、フリースローコンテストが賭博業界を変革する

Atlantic City betting on free-throw contest to re-invent gambling

http://nypost.com/2015/02/13/atlantic-city-betting-on-free-throw-contest-to-re-invent-gambling/

An Atlantic City casino is about to redefine casino gambling by introducing a new style of wagering: competition based on a physical skill rather than luck. Executives at The Borgata tell The Associated Press they’ve gotten permission from New Jersey gambling regulators to host a basketball contest next month in which players shoot free throws for money.

アトランティックシティのカジノが、運ではなく、スキルを必要とする新たなスタイルのゲームを導入することで産業の変革に至っている。ボルガータカジノの経営陣によると、バスケットボールのコンテストを来月にも開催することを規制当局から許可され、フリースローで競う賭博ゲームを開催するという。

来月、米国ニュージャージ州のアトランティックシティにおいて、バスケットボールのフリースローに100万円の賞金が提供されるトーナメントゲームが開催されるとのことです。この種のトーナメントゲームは、賞金(もしくは賞品)がスポンサーから提供される限りはギャンブルという扱いはなされませんが、本大会は各プレイヤーが参加費として20ドルずつ支払い、賞金を「積み上げる」という仕様。すなわち、一般的にいう所の「賭けバスケ」ということになります。

このような参加費を前提とする賭けトーナメントというのは、当然ながらアメリカにおいても厳しく規制されており、ポーカーなどに代表される一部のゲームを、限られた州が認めるのみです。特に、今回のバスケットボールのフリースロー対決のようないわゆる「完全スキルゲーム」が賭けの対象として扱われる事はなく、カジノの扱うゲーム種として今回のように大々的に行われることは全米初、それどころか私が知る限りは世界初であるものと思われます。(勿論、違法なモノは世の中にはたくさん有るが)

上記記事によれば、州当局はバスケットボールのみならず、その他のスキルゲームにおいても同様のトーナメントゲームの開催提案を歓迎する方針とのこと。これが本格的に動き出せば、あらゆるスポーツはおろか、ダーツやビリヤードのような屋内ゲーム、はたまたチェスやコントラクトブリッジのような頭脳スポーツ(日本で言えばマージャン、将棋など)の世界も含めて、世の中のあらゆる競技の世界が大きく影響を受けることとなります。

さらに言えば、アトランティックシティがこの種のスキルゲームをトーナメントゲームとして採用したことの先には、実はもっと大きな構想が存在しています。それが、スキルゲームのオンライン賭博への採用です。以下、昨年10月にNorth Jerseyによる報道からの転載。

ニュージャージ州、カジノ産業の振興として「キャンディ・クラッシュ」を狙う

New Jersey eyes Candy Crush-style games to boost casino sales

http://www.northjersey.com/news/business/new-jersey-eyes-candy-crush-style-games-to-boost-casino-sales-1.1108958

New Jersey's gambling regulator is considering proposals for adding skill-based social games, like Candy Crush, at casinos in the state in an effort to revive the flagging industry. Social games, including King Digital Entertainment Plc's title, could be added to slot machines in casinos or to online gambling websites, which began accepting bets last year, according to Kerry Langan, spokeswoman for the Division of Gaming Enforcement.

ニュージャージ州のカジノ規制当局は、「キャンディクラッシュ」などのスキル型ソーシャルゲームのカジノでの導入を検討しており、産業の活性化につなげたい構えだ。King Digital Entertainment社の提供するようなソーシャルゲームが、カジノ内のマシンゲームはおろか、昨年、同州内で許可されたオンラインカジノ内で提供される可能性があると、ニュージャージ州規制当局のスポークスマンは語った。

キャンディ・クラッシュとは、海外で人気を博しているソーシャルゲーム・アプリで、いわゆる「落ちゲー」と呼ばれるゲームの一種です。日本でいう所の「パズル&ドラゴン」にあたる近年の大ヒットゲームアプリというと判り易いでしょうか。

ニュージャージ州では現在、州の規制当局がこの種のスキルゲームの採用を検討していることが公式に発表されており、リアルカジノ内でのマシンゲームはおろか、そこにサーバーを置いて提供されるオンラインカジノにおいても、その種のゲームが採用される可能性があるとされています。すなわち、将来的に「パズドラ」でギャンブルをして飯を食うようなプロゲーマーが米国ニュージャージ州で現れる可能性がある、ということ。

今回のバスケットボールのフリースロー・トーナメントの実施許可は、このような賭博業界における大きな変革の前哨戦として位置づけられるもの。少なくとも「スキルゲームの賭博化」というところにまでは一歩踏み出しているワケですから、後はゲームの安全性などを考慮しながら州当局が「どの範囲まで、それを認めてゆくか」という技術上の検討段階にまですでに論議は進展している状態であると言えましょう。

本件に関しては、私としても引き続き情報収集および分析を続けてゆきたいと考えているところです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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