10月の便数半減で姿を消した「高速はこだて号」直行便 どのような路線だったのかを振り返る
2023年10月1日から、札幌と函館を結ぶ高速はこだて号の便数が半減された。高速はこだて号は北海道中央バス、北都交通、函館バス、道南バス4社による共同運行が行われていたが、各社のドライバー不足から便数の維持を図ることが難しくなり、道南バスは共同運行から撤退した。
10月1日からの高速はこだて号は、八雲市街地を通る経由便4往復のみ運行となった。それまでは、大沼公園インターから道央自動車道経由の直行便4往復に加え、八雲経由便が3往復、さらに夜行便の設定があったが、減便直前には八雲経由便のうち1便が隔日運行で、夜行便は運休状態となっていた。
筆者は、高速はこだて号減便直前の9月下旬、函館から札幌まで廃止となる直行便へと乗車したので、今回はその時の様子を紹介したい。
4名の乗客を乗せて函館駅前を発車
筆者はこの日、札幌―函館間を函館本線(山線)経由で運行する秋の臨時列車、特急ニセコ号で函館を訪れた。特急ニセコ号の様子については、記事(秋の定番臨時列車、「特急ニセコ」乗車で見えた函館本線の旅の魅力)でも詳しく触れている。函館から札幌への戻りについては、翌月からの便数半減に伴い廃止となる高速はこだて号の直行便に乗車することにした。直行便は道央自動車道最南端の大沼公園インターから高速道路に乗り、文字通り札幌市内まで高速道路で直行する便で、所要時間は5時間40分~50分。一方で、高速はこだて号は、この他に八雲町市街地まで一般国道を経由する経由便の設定もあり、こちらの所要時間は6時間~6時間5分となっている。
高速はこだて号の函館側の始発は湯の川温泉東停留所であるが、筆者は函館駅から札幌駅前ターミナルまで乗車する。高速バス乗車券については事前に予約していたものを、函館駅前のバス待合・案内所で受け取ることができた。土曜日のこの日の予約状況は、函館から札幌に向か午前中の便については比較的予約が埋まっている様子であったが、筆者が乗車した函館駅を16時18分に発車する便の乗客は函館駅発車時点でわずか4名だった。なお、車内は3列シートで座席定員は30名程度だ。
札幌駅前ターミナル行の高速はこだて号が、函館駅前に到着したのは発車の10分ほど前。バスは函館バスによる運行便で、広くとられたフロントガラス上部にサンシェードがかけられているのが特長的だ。座席は最前部の01番席を確保できたことから、全面展望を堪能しながら札幌へと向かう。
バスは、16時18分の定刻通りに函館駅前を発車すると、亀田支所前など函館市内のバス停で2名ほどの乗客を広い札幌までは総勢6名の乗客となった。
去りゆく函館山を眺めながら
函館市街地を抜けるバスは函館インターから高規格道路の函館新道へと入る。函館新道の車窓からは去りゆく函館山や西側の山地に沈みゆく夕日を眺めることができた。函館新道は無料ながらも七飯本町インターまでは制限速度が100km/hに設定されている。函館新道の終点は七飯藤城インターで、ここから道央自動車道の大沼公園インターまでは未開業区間となっており、バスは再び一般道の国道5号を走行する。
一般道に降りしばらくすると、左手側の車窓には大沼国定公園の雄大な景色が広がる。道央自動車道の大沼公園インターには函館駅を出発してから1時間近くたった17時20分頃に入った。北海道南部の道央自動車道は、どこまでも続く原野の中の一本道といったイメージで、バスはひたすら高速道路を北に向かって直進していく。道央自動車道に入って1時間ほどでバスは長万部町に入り、町内の静狩パーキングエリアで1度目の休憩となった。なお、静狩パーキングエリアは、トイレのみの設置で売店などの施設はなかった。
まさかの高速道路事故通行止めで一般道へ
静狩パーキングエリアを出発すると、運転手さんから「虻田洞爺湖インターから先の区間が事故通行止めとなっていることから、一般道を経由します」という案内放送が流れる。通行止めとなっているのは、伊達インターまでのひと区間であったため一般道の国道37号線を走行したのは20分弱となり、遅れは軽微なものとなった。
そして、道央自動車道へと戻り19時20分頃には有珠山サービスエリアで2度目の休憩。函館出発からはすでに4時間が経過しており、高速はこだて号の旅もいよいよ終盤だ。こちらは、静狩パーキングエリアとは異なり、売店や食堂が併設されていることから、買い物などを行うことも可能だった。
有珠山サービスエリアを出ると、夜の道央自動車道をさらに1時間以上走り、札幌南インターで高速道路を降りた。札幌市内では途中、地下鉄大谷地駅へとより、終点の札幌駅前バスターミナルへと到着したのは21時30分頃となった。
高速はこだて号が到着した札幌駅前ターミナルは、札幌駅周辺の再開発事業に伴いこの約1週間後となる2023年9月30日をもって閉鎖された。5年後には新しいバスターミナルとして生まれ変わる予定であるが、高速はこだて号の直行便とともにこれが見納めとなった。
(了)