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台風2号発生 赤道を挟んで2つの熱帯低気圧は春の兆し

饒村曜気象予報士
昭和61年5月18日9時の気象衛星「ひまわり」の可視画像

対の熱帯低気圧

 北半球と南半球のほぼ同じ経度上に、熱帯低気圧の円形の雲が対になって発生することがあります。

 赤道付近には、熱帯収束帯と呼ばれる対流活動が活発で、積乱雲群が連なっている領域がありますが、ここからほぼ等距離での発生です。

 真冬の半球では熱帯低気圧がほとんど発生しませんので、春と秋におきる現象です。

 早春は、熱帯収束帯が南半球に南下していますので、北半球の熱帯低気圧の発生場所は南半球の熱帯低気圧の発生場所より、赤道よりです。

 逆に、晩春になると、熱帯収束帯が北半球に北上してきますので、北半球の熱帯低気圧の発生場所は南半球の熱帯低気圧の発生場所より、より赤道から離れます。

 春真っ盛りの時は、熱帯収束帯が赤道上にきますので、赤道からほぼ等距離になります(タイトル画像参照)。

 北半球と南半球では、渦の巻き方は逆です。

 北半球では中心に向かって反時計回りに吹き込み、南半球では中心に向かって時計周りに吹き込みますので、熱帯収束帯を挟んで折り返したようになります。

台風2号発生

 マーシャル諸島に積乱雲が集まり、下層雲の循環が見られます。

 熱帯低気圧が発達中である兆候で、気象庁は2月20日3時の観測で、台風2号の発生を発表しました(図1)。

図1 予想天気図(2月20日9時、台風発生6時間後の予想天気図)
図1 予想天気図(2月20日9時、台風発生6時間後の予想天気図)

 気象衛星から見ると、マーシャル諸島とほぼ同じ経度の南半球に、台風並みに発達した熱帯低気圧がありますので、台風2号の発生で熱帯収束帯を挟んでの対の発達した熱帯低気圧の発生となります(図2、図3)。

図2 台風2号になりそうな熱帯低気圧とオーストラリアの東海上を南下する発達した熱帯低気圧
図2 台風2号になりそうな熱帯低気圧とオーストラリアの東海上を南下する発達した熱帯低気圧

 これは、赤道を挟んで2つの熱帯低気圧ができるという、春の兆しです。

図3 台風2号とオーストラリアの東海上を南下する台風並みに発達した熱帯低気圧(2月20日8時20分)
図3 台風2号とオーストラリアの東海上を南下する台風並みに発達した熱帯低気圧(2月20日8時20分)

 

2月の台風発生

 今年、平成31年(2019年)の1月1日15時、南シナ海西部で台風1号が発生しました。

 この、台風1号は気象庁が台風の統計をとり始めた昭和26年(1951年)以降で、最も早く発生した台風です。

 台風1号が発生したとき、「正月なのにもう台風1号が…」と感じた人が多いと思いますし、マスコミ等でもそう取り上げられました。

 しかし、「正月なのにまだ台風が…」といったほうが適切な表現です。

 というのは、台風は暖かいと多く発生するということから、その年の台風シーズンは、北半球の気温が1 番低くなって、これから暖かくなる2月下旬から始まるといってよく、1月は前年のシーズンの続きだからです(表)。

表 台風の平年値
表 台風の平年値

 台風2号が発生するとすれば、平成31年(2019年)の台風シーズンが、早くも始まったということができます。

 資料が少し古くなりますが、以前に筆者が調査した2月の台風発生数の分布が図4です。

図4 海域別台風発生数の分布(2月)
図4 海域別台風発生数の分布(2月)

 例数は少ないのですが、緯度が5~10度のトラック島の西海上や、ヤップ島の西海上で発生する傾向があるようです。

 また、台風の発生緯度や台風の進行方向などをもとに平均進路を求めると、多くは西進してフィリピンの東海上を北上するものの、数は少ないのですが、東経140度線を北上するものもあります(図5)。

図5 台風の平均進路(2月)
図5 台風の平均進路(2月)

 数値予報によれば、台風2号がトラック島付近で発生したあと、しばらく西進したあと、東経140度付近から北上を始め、転向して日本の東海上に去る見込みです。

 今回の台風は、日本への影響はない見込みですが、春から夏に向かうにつれ、日本に影響を与える台風が増えてきます。

 これから長い台風シーズンが始まります。

タイトル画像の出典:気象庁資料。

図1、表の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4、図5の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計ー月別発生数・存在分布・平均経路ー、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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