Yahoo!ニュース

10月1日に酒税改正。でも、酒税は出荷時課税なのに、なぜ10月1日にお酒の小売価格が変わるの?

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
10月1日に、酒税の税率が、ビールは下がり、「第3のビール」は上がる(写真:アフロ)

10月1日に、酒税が改正される。酒類間の税負担の公平性を回復することが主な目的である。

例えば、これまでビールと発泡酒(麦芽比率25%未満)と「第3のビール」(ビール及び発泡酒以外の酒類のうち、アルコール分が10度未満で発泡性を有するもの)は、類似するお酒ですが、酒税の税率が異なっていた。

2023年9月30日までは、350ml換算で、ビールが70円、発泡酒が46.99円、第3のビールが37.8円である。しかし、10月1日からは、ビールが63.35円、発泡酒と第3のビールが46.99円となる。

そして、2026年10月1日には、これら3つの酒税は統一され、すべて54.25円となる。

さて、酒税は、いつ課税されるのか。実は、酒税は、酒類の製造者、または輸入の場合は種類の保税地域から出荷した段階で納税義務が成立する。

だから、国産のお酒は、お酒の製造場から出荷した時に、その製造者に酒税が課される。出荷時に課税されることから、蔵出し税とも呼ばれる。

ということは、10月1日に酒税が改正されるが、酒税は蔵出し税である。ならば、既に製造所から出荷され小売店に引き渡されているお酒はどうなるのか。

例えば、9月1日に出荷したお酒は、9月1日に納税義務が成立している。そして、その時の税率で酒税が課されるはずである。だとすると、そのお酒を9月30日に買おうと、10月1日に買おうと、既に酒税の金額は確定しているのだから、10月1日に小売価格が変わるというのは変である。

でも、巷では、10月1日に税率が引き上げられるお酒は、9月30日までに買い込んでおこうという消費者がいる。そして、10月1日からは値上げするという小売店舗がある。

蔵出し税である酒税なのに、税率が変わるその日にお酒の小売価格が上がったり下がったりするのはなぜか。それは、

この記事は有料です。
慶大教授・土居ゼミ「税・社会保障の今さら聞けない基礎知識」のバックナンバーをお申し込みください。

慶大教授・土居ゼミ「税・社会保障の今さら聞けない基礎知識」のバックナンバー 2023年9月

税込550(記事2本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

土居丈朗の最近の記事