「月120万の廃棄」「もったいないから食べてたら8キロ太った」コンビニオーナー2名に聞く
先日、『「月60万の廃棄はいい経営」コンビニオーナー2名が語る』という記事を書いたところ、記事を読んだというあるコンビニオーナーの方からメールを頂いた。毎日、涙が出るほど悔しい思いで食べ物を捨てているという。コンビニの加盟店は弱い立場なので、この問題に対して声を上げて訴えていくことは難しいとのこと。メールには、事実を記事にしてくれたことへの感謝が綴られていた。
「加盟店は弱い立場なので声を上げられない」。
この図式はどこかで見たことがある。
セクシャルハラスメントを受けた記者が所属するメディアが、なぜ財務省に対して当初から抗議できなかったのか。セクハラに対して反発すると、その社だけが特ダネを掲載できなくなってしまうことがある、いわば「特オチ」になってしまう恐れがあるからだという。
食品業界にもヒエラルキー(階層)や主従関係がある。だからこそ、公正取引委員会は優越的地位の濫用を禁じているわけだが、なくなることはない。
今、報道されているハラスメントの音声を聞いた時、これはいったい何十年前の世界なのだろうと思った。権力に抗えず、誰も声を上げられなかったからこそ、何十年間も変わらずに、ここまでの深刻な事態になってしまっているのではないか。そうならないためにも、声を上げられる者が上げる必要があるのではないか。セクハラを暴く週刊誌も、コンビニの食品廃棄のことは書かない。全国のコンビニでは、全体の売り上げに占める書籍の販売金額が年々下がってきている、とはいえ、今でも週刊誌をたくさん売って頂いているからだろう。ここにも主従関係がある(違うのならぜひ取材して記事を載せていただきたい)。
先日のコンビニオーナー2名とは別のコンビニオーナー2名に、食品ロスに関してインタビューした内容を紹介したい。ここに書いた以上のことをお話し頂いてはいるが、主に食品ロス関連のことに絞り、そのほかに関することは省いた。個人情報を伏せるため、イニシャルではないアルファベットを使うことをご容赦いただきたい。
Xさんの話
Zさんの話
2人とも「太った」
2名の共通点は「もったいないから食べてたら太った」と言う点。似た話は、被災した複数の地域で伺った。支援物資がたくさん届き過ぎて、余って、もったいないから食べていたら20キロ太ったという方もいた。
また、Xさんが「多い日は4万捨てる」ということだが、仮に30日を掛けると、月に120万円の廃棄となる。実際、Zさんも「月120万廃棄」について語っている。
コンビニの「月60万円分の廃棄がいい経営」と評価される基準にも驚くが、月120万分の食品を廃棄していたというのも衝撃だ。日本の給与所得者の平均給与(35万)の4倍近い。捨てるくらいなら最初から作らなければ、政府の目指す「働き方改革」など、ラクにできるのではないか。
『コンビニの秘密 便利で快適な暮らしの裏で』
土屋トカチ監督の映画『コンビニの秘密 便利で快適な暮らしの裏で』は、ドキュメンタリーだ。予告編を観ることができる。
あるコンビニオーナーが、試写会でこれを観た。この映画に出ている以外にもまだまだ色々なことがあるとおっしゃっていた。
コンビニもスーパーも食べ物も好き、だからこそ
ちなみに筆者は5歳の時から食品(ハウス食品のゼリエースやプリンエル、くず湯の作られる過程など)に興味を持ち、今はコンビニエンスストアやスーパーマーケットへ行くのが好きで、ほぼ毎日通っている。食品メーカーに勤めていた時からそうだが、海外に行けばその国のスーパーやコンビニを必ず訪問する。商品、棚、配置など、日本との違いが興味深い。以前の記事でコンビニエンスストア本部を取材させて頂いた。本部とオーナーとの言い分の違いは感じた。その後、別の会合で本部の方々にお会いした時には、わざわざお声がけ頂いた。ロスをなくすためには体制や仕組みや社会構造を変えていく必要があるのではと感じた。コンビニを敵にまわして闘いたいわけではない。毎日大量に食べ物を捨てるのがもったいないし、コストも労力も何もかも無駄になるから、それを少しでも少なくしたいという思いだ。食べ物を食べられるのは幸せなことだ。捨てるために食べ物を作るなんておかしい。おかしいことに「おかしい」と声を上げられない世の中もおかしい。命ある間に少しでもよくなればと願う。
参考記事