エベレストの2.5倍…火星にある太陽系最大の山「オリンポス山」とは?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「太陽系惑星で最大の山、オリンポス山」というテーマで動画をお送りしていきます。
●山の高さの決め方
山の高さというのは、実は意外と決めるのが難しいものです。
さらに地球と火星とでは海洋の有無などで環境が異なるので、これらを共通して比較する基準を整理したいと思います。
山の高さを表す概念として「標高」というものがありますが、地球の山の場合、これを決めるには海の存在が重要になります。
地球の海は平均すると、地球からの重力が等しくなる球面上に分布しています。
地球からの重力が等しくなる球面のうち、特に地球の平均海面と一致するものを「ジオイド」と呼びます。
地球の内部(海面以下)の物質の密度には偏りがあるため、地表では場所ごとに地球から働く重力が意外と細かく異なっています。
そのため地球からの重力が等しくなる球面であるジオイドは綺麗な球面ではなく、でこぼこしたものとなっています。
実際の海面は非常に良くジオイドと一致しており、こちらもでこぼこしたものとなります。
地球の重力は当然地表全体に及んでいるため、ジオイドの概念は海だけでなく、陸地にも拡張できます。
普段目にする「標高」というのは、このジオイドの面を基準とした高さのことです。
水はジオイドを基準として高い場所から低い場所へと流れていくため、標高という指標は災害時にも役立つ情報です。
実は火星でも、地球のジオイドに相当する「アレオイド」と呼ばれる面が、火星上に存在する山の標高を求める際の基準面として利用されています。
●オリンポス山とは?
では本題です。オリンポス山とは、太陽系内の惑星で最大の山です。
前述した、アレオイドを基準とした高さである「標高」でオリンポス山の高さを表現すると、21229mとなります。
エベレストの標高は8848mなので、オリンポス山の方が約2.5倍高いです。
また、オリンポス山の周囲の地形から見た高さだと実に25000m以上にもなります。
オリンポス山の裾野は非常に緩やかです。
ですがそんな緩やかな裾野が、直径約600kmにもわたって広がっています。面積でいうとイタリアなどといった一つの国レベルの大きさです。
このオリンポス山はあまりに巨大なである上に傾斜が緩やかであるため、山麓の端っこに立って山頂の方を見ても、その全体像を見ることができません。
逆に頂上から見ても、自分が非常に高い位置にいることを把握することができないと言われています。
また、裾野の傾斜は緩やかですが、山全体が非常に巨大な崖に囲まれています。
この高さは場所によりますが、2~6kmという高さになるそうです。
山頂部には火山活動によって形成された巨大な陥没地形「カルデラ」が存在しますが、短い方の直径で60km、長い方の直径で80km、深さは3.2kmという巨大さであり、なんとこの中に富士山がすっぽりと入ってしまいます。
また、オリンポス山の周囲には他にも非常に高い山々が存在しています。
この画像の左上がオリンポス山、中央の3つの山は「タルシス三山」と呼ばれるものです。
タルシス三山の裾野の直径はそれぞれ375~475kmあり、標高も10kmオーバーと、どれもオリンポス山ほどではないものの、地球では見られないほど超巨大です。
この3つの山は非常に綺麗に線状に並んでいますが、このような配置になったメカニズムは現時点で不明です。
偶然にこうなった可能性は低いので、今後の研究で謎が解明されるのに期待がかかります。
●なぜ火星の山は大きいのか?
火星ではオリンポス山の付近という限られた範囲に、超巨大な山々が密集しています。
このような構図になった理由として2つ挙げられます。
一つ目は、火星の重力が地球と比べて小さいためです。
火星と地球では地表を構成する物質の組成が似ているものの、火星では重力が弱いため、積み上がった構造が崩れにくく、高い山が形成されやすいです。
二つ目は、火星のプレートテクトニクスが停止しているためです。
この映像がわかりやすいですが、地球では上昇するマグマによっていくつもの火山ができるのに対して、火星では一つの場所でマグマが固まり続け、少数の巨大な山が形成されます。
●真の太陽系最大の山は…
太陽系惑星の中で最大の山はオリンポス山ですが、実は真の太陽系最大の山は、火星と木星の間にある小惑星帯に存在する小惑星ベスタにある「レアシルヴィアの中央丘」と呼ばれるものだそうです。
ベスタは直径500前後小さな小惑星です。
ベスタの南極には、レアシルヴィアと呼ばれる直径が実に460にもなる巨大なクレーターがあり、その中心には巨大な中央丘が発見されています。
その中央丘の高さは22000mにもなり、2011年にこれが発見されてからはオリンポス山を抜いて太陽系で最も高い山として扱われるようになりました。
ただし隕石の衝突など外部の要因ではなく、天体内部の活動によって形成された山としては、依然としてオリンポス山が太陽系で最も大きな山です。
ですが今回紹介したのはあくまで暫定の情報で、今後観測技術が進歩することによって太陽系内にも、そして太陽系外にもさらにずっと大きな山が発見されることでしょう。