「災害時の水のそなえ」アンケート、2位回答に驚き。あらためて考えたい水道の「ありがたさ」
1位は「市販のペットボトル入りの水を買い置きしておく」
災害で水道インフラが機能しなくなると水に困る。被害が広範囲に及ぶと、各家庭に水が行き渡るようになるまで数日から1週間、大きな災害になるとそれ以上の時間がかかる。
そんなことは誰もが知っているはずだが……。
8月1日の「水の日」をまえに、ミツカン水の文化センターが「水にかかわる生活意識調査」(2021年版/東京圏、中京圏、大阪圏の1500人を対象)において、「災害時に対する水の備え」について調査したところ、以下のような結果がでた。
1位「市販のペットボトル入りの水を買い置きしておく」(43.5%)
2位 ?
3位「風呂の水をいつも溜めておく」(15.9%)
4位「水を使わなくても済むような対策グッズを準備する(簡易トイレ、歯磨きシート、ドライシャンプー、ラップフィルム等)(13.2%)
5位「消火栓、防火水槽の場所を知っておく」(7.7%)
では、2位の回答はなんだったか。
2位は「何もしない」(41.5%)である。
そして、「何もしない」は過去3年で急上昇している。
2019年に30.1%だが、2020年は34.3%、そして今年が41.5%と3年間で11.4ポイント上昇した(年平均3.8%)。
反対に1位になった「ペットボトルの買い置き」は、2019年に56.0%だったが、2020年は52.5%、そして今年が43.5%と3年間で12.5ポイント下落した(年平均4.17%)。
この傾向が続けば、来年には「災害時に対する水の備え」は「何もしない」がトップになるだろう。
「不安に感じている災害」の1位は「台風」(58.7%)
同調査では、「不安に感じている災害」についても調査を行っており、1位「台風」(58.7%)、2位「地震」(53.1%)、3位「ゲリラ豪雨」(43.5%)と続き、4位には「断水」(29.6%)となった。
今年2月に内閣府が行なった「水循環に関する世論調査」には以下のよう問いがあった。
「地球温暖化に伴う気候変動の影響により、水問題がさらに深刻化することが懸念されています。あなたは、どのようなことが心配だと思いますか」
これに対する回答は以下のとおり。
1位の「気候の不安定化による洪水や土砂災害の頻発」と回答した人は85.6%にのぼる。
なぜ災害に不安を感じながらも備えをしないのか
災害に不安を感じながら備えをしない理由はいくつか考えられる。
災害が自分ごとになっていない、災害の経験を忘れてしまう、水に関して言えば「備えをしなくても応急給水などで助けてもらえる」「水の存在が当たり前になり過ぎて、水がないことをイメージできない」などだ。
ここ数年、水害が多発し、各地で断水は発生している。しかしながら災害は局所的に発生するので知見が広がりにくい。災害時には電源喪失によって断水が起きることもあるが、災害のたびに「水道って電気がないと送れないんですね」と新情報のように報道されている。
水道インフラに対する過剰な信頼感もある。「水は蛇口から出る」ことが「当たりまえ」になり、断水の発生など想像もできなくなっているのではないか。
しかし、実際はどうか。
高度経済成長期に整備された施設が老朽化し、年間2万件を超える漏水・破損事故が発生している。厚生労働省によると、「全管路延長(712,290km)に占める法定耐用年数40年を超えた延長の割合は、16.3%(平成29年度)」である。
さらに、水道経営の悪化から、更新工事は遅れているし、水道管路の耐震適合率は約4割しかなく、耐震化が進んでいないため、大規模災害時には断水が長期化するリスクを抱えている。また、近年の度重なる災害での水道の現場は疲弊している。
こうした現状を知っても、災害時の水の備えをしないだろうか。
市民はもっと水道の持続性を疑い、経営状況などに関心をもつべきだ。
安易な水道料金の値下げを選挙公約などに掲げる候補者がいたら、水道の状況を聞いてみるべきだ。
そうしないと「いつまでもあると思うな親と金、そして水道」ということになり、災害時に水に困る。