Yahoo!ニュース

ケーキバイキングで大量の食べ残し! SNSのために撮影だけして何も食べないのはアリか?

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

ケーキバイキングで大量の食べ残し

少し前にとても残念な行為を取り上げた記事を読みました。

ケーキ屋で”食べ放題”を注文する客…「お会計お願いします」ほとんど食べずに退散…!?⇒客の【注文理由】に衝撃を受ける/liBae(TRILL)

その事案とは、ケーキバイキング=ケーキ食べ放題を“売り”にしている店でのこと。女性が1人で入店してケーキバイキングを注文します。SNSにアップするため、大量のケーキをテーブルに並べて撮影。撮影が終わると、何も食べずに席を立ち、会計して退店したというのです。

フィクションと表記されていますが、アンケートをもとに作成されているとも記載されています。実際にこういった事案は起きているので、ケーキバイキングでの食べ残しについて考えていきましょう。

ブッフェ方式とオーダー方式

まず、ケーキバイキングはどのような仕組みになっているのでしょうか。

ブッフェ方式とオーダー方式にわかれています。

前者であれば、ブッフェ台にケーキが並べられており、客は自分で取りに行きます。ショーケース前まで行って、スタッフに取ってもらうケースもありますが、席を離れるという観点からすれば、ブッフェ方式に分類してよいでしょう。

オーダー方式は、スタッフがテーブルまで来てオーダーを取り、その後に運んで来てくれるというシステム。メニューから選択することもあれば、トレーに載せられたケーキのサンプルから選ぶケースもあります。その際に、1種類1品まで、1度のオーダーにつき3品までなど、制限が課されていることが一般的。

また、ブッフェ方式でもオーダー方式でも、60分から120分くらいの制限時間が設けられています。

件の記事では、客が自分でケーキをテーブルに並べたと述べられているので、ブッフェ方式なのでしょう。

食べ残しについて

私は好き嫌いがなく、お酒も好きなので、提供されたものは全て食べて飲みます。ただ、人によっては、アレルギーや宗教に関連した食の忌避や個人的なポリシーがあったり、どうしても苦手なものがあったりして、食べ残すことはあるでしょう。

思ったものと味が全く違っていたという場合もあるかもしれません。体調が悪くなって食べられなくなることもあります。

食べ残しはできるだけ避けるようにしてもらいたいですが、故意でなければ、ある程度は仕方ありません。

しかし、最初から食べる気がなく、撮影のためだけに食べ残すのは問題です。しかも、写真の見栄えを意識してのことだと思いますが、大量に取ってくるとなれば、極めて悪質です。

食材を廃棄させたり、つくり手の労力や気持ちを蔑ろにしたりするのは非常に残念なこと。お金を払ってさえいれば食べ残してもよいという考えであれば、改めるべきです。

大量に食べ残しさせないために

意図しない少量の食べ残しは、まだ仕方ありません。しかし、意図した大量の食べ残しは、ある程度予防することができます。

記事にもあったように、食べ残しに対してペナルティを与えるというのが効果的です。ケーキであれば、1品いくらと定めるのがわかりやすくてよいでしょう。食べ残した重量によってペナルティを課す方法もありますが、少し手間を要します。

これらに加えて、オーダー方式だけではなく、ブッフェ方式でも、1度に取れる品数を制限したり、全て食べ終えてから次のものを取ると定めたりするのもよいです。

このようなルールになっていれば、大量に取ったにもかかわらず、全く手付かずで食べ残すことは少なくなるでしょう。

自由な食のスタイル

自由に好きなように食べられるブッフェは、自分で考えておいしく適量に食べられるという観点から、今の時代に相応しい食のスタイルです。

人によって信仰や信念、哲学や思想、嗜好や気分が違っており、いつ何をどれくらいどのように食べるのかは異なります。個人が尊重され、ダイバーシティが必要とされている現代では、自身の心と体に相応しい食べ方をするのが適しているのです。

しかし、自由と責任が表裏一体になっていることは周知の事実。自由に食べるだけではなく、食に関連することに思いを馳せたり、感謝の念を寄せたりすることが重要です。

そして何よりも、節度をもって自制心を働かせたり、他の客や飲食店と協調したりすることが大切になります。

どう食べるか

美食家であったブリア=サヴァランは、1825年に「美味礼讃」を上梓しました。そこには「君が何を食べるか言ってみたまえ。君が何者であるかを言い当てよう」という名言が残されています。

現代においては、何を食べるかだけではなく、どう食べるかも、何者であるかを示すのに重要なことではないでしょうか。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

東龍の最近の記事