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「運航会社CEOはタイタン号の悲惨な運命がわかっていた。歴史に名を残したかった殺人者」友人が激白

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ラッシュ氏を非難したスタンリー氏。出典:60 Minutes Australia

 潜水艇タイタン号の事故原因の究明が進められる中、タイタン号を運営し、事故で亡くなったオーシャンゲート社CEOストックトン・ラッシュ氏の友人で、自身もホンジュラスで潜水艇ツアーを運営するカール・スタンリー氏がオーストラリアのテレビ番組「60ミニッツ・オーストラリア」のインタビューを受け、「ラッシュ氏は“ビリオネアーのネズミ取り”を作っていた」とタイタン号がビリオネアーの乗船客を捕まえるためのネズミ取りのようなものだったと激白している。

60 Minutes Australiaが制作したタイタン号沈没事故のドキュメンタリー番組。

 実際、亡くなった乗船客の中には2人のビリオネアーがいた。冒険家のヘイミッシュ・ハーディング氏とパキスタン屈指の富豪一族出身のシャダザ・ダウッド氏だ。ラッシュ氏はまた、ビリオネアーにチケットを販売することにも熱心で、ラスベガス在住のビリオネアーのジェイ・ブルーム氏のところには、自作の実験用飛行機で乗りつけて交渉に当たるほどだった。

歴史に名を残したかったのか

 スタンリー氏はラッシュ氏を殺人者だと言わんばかりにこう断罪している。

「ラッシュ氏はこんなふうに終わることがはっきりとわかっていた。彼はまさに、まるで人類史上最も大きな轟音と共に消え去ったようなものだ。1度に2人のビリオネアーを殺し、彼らにその特権を得るためにお金を支払わせた最後の人物は誰なのか?(つまり、それはラッシュ氏だと言っている)」

 スタンリー氏はさらに「オーシャンゲートCEOは自ら死を望んでいたのか?」という質問に対して、同氏は「唯一の問題は(死が)いつ起きるかだった。彼は自分と乗船客の命を危険にさらして、歴史に名を残したかったのだ。彼は今や彼がやってきたどんなことよりも(事故により)有名になった」と答えている。

銃声のような音を聞く

 スタンリー氏はタイタン号でした恐怖体験についても回想している。2019年、バハマ諸島でタイタン号の潜水テストに同行した際、「3〜4分ごとに大きな銃声のような音が聞こえた。(私の乗船以前には)一度しか潜水したことがなかった潜水艇に乗り、海底で、そんな音を聞くのはとても恐ろしかった」と話している。

 銃声のような音はカーボン・ファイバーの船体にゆっくりと亀裂が生じている音だと分析した同氏は、電話やメールでラッシュ氏に「船体のある部分が壊れている。それは悪化する一方だろう」と警告した。沈んだ潜水艇の絵まで描いてラッシュ氏に警告したようだが「それだけでは十分ではなかったようだ」と述べている。

 スタンリー氏はまた、ラッシュ氏には潜水艇の操縦経験があまりないと感じていたようだ。

 10代の頃から潜水艇の製造に携わり、潜水艇の操縦経験が何千時間もあるというベテラン・パイロットのスタンリー氏は「潜水艇の致命的欠陥は何だったと思うか?」との質問に対して「壊れたところはカーボン・ファイバーの船体であることに疑いの余地はない」と明言した。

 ところで、この番組には、オーシャンゲート社設立時のラッシュ氏の共同設立者で、10年前に同社を去ったギラモー・サンライン氏も登場しているが、スタンリー氏が指摘した船体で聞こえた“銃声のような音”について、「音は、今回の船体ではなく、前の船体で起きていたことで、それは修理された」と弁明、なぜ事故が起きたのかはわからないと話している。

存在がなくなる完全な終わり

 また、タイタニックの残骸のあるところに何度も潜水した、潜水艇オペレーションの世界的リーダーであるロバート・マッコーラム氏も登場し、「彼らは時限爆弾を操縦していたようなものだ。技術面を考えると、事故が起きたことに驚きを感じなかった。我々は事故を防ぐべく頑張ってきた」と事故は起こるべくして起きたという見方を示し、ラッシュ氏に安全性について警鐘を鳴らしていたと述べている。

 壊滅的な爆縮が起きた場合に起きることについては、同氏は「潜水艇は2ミリ秒で破壊され、人の脳が破壊を察知するのには25ミリ秒しかかからない。死ぬというより、存在がなくなる。ほとんど完全なる終わりだ」と乗船者は死ぬのだとわかる時間はなかったという見方を示した。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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