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「現役最長の任天堂据え置きハード」になったスイッチ、改造すればまだ現役?後継機種の可能性も見えてくる

多根清史アニメライター/ゲームライター
(写真:ロイター/アフロ)

現行のNintendo Switchは発売から8年目に突入していますが、ついに「任天堂の据え置きハードが世代交代しない期間」がファミコンを超えました

海外ゲームメディアVGCによると、7月11日をもって2687日に達したとのこと。ファミコン発売(1983年7月15日)~スーパーファミコン発売(1990年11月21日)までの2686日を通り越し、未知の領域へと突入。もしも2025年3月1日まで後継機の発売がないとすれば、2920日以上に達する可能性さえあります

もっとも、携帯ゲーム機である初代ゲームボーイ~完全な後継機ゲームボーイアドバンスの4352日には及んでいません。発売から7年目、終わりが見えたはずのハードに新作『ポケットモンスター』が放り込まれるという、天変地異みたいな事態が起こってましたしね。

すでにスイッチが「2024年の最新ゲームに求められる仕様」を動かす上で力不足になっているのは、否定しようがありません。だからこそ盛り上がる界隈もあり、それがゲームハード改造コミュニティです。現行モデルの動作クロック数をアップする、RAM容量を増やしてみる、そこで様々なテストをしてみるというものです。

ただのハード改造マニアのお遊びだけにはとどまりません。もしも現行スイッチを強化した中世代機(次世代機までの中継ぎ)「Switch Pro」が出ていたら? スイッチ後継機種の噂されるスペックと比較して、通称「スイッチ2」はどれほどの性能が出せて、現世代のゲームがどの程度の速さで動かせるのか推測もできるからです

改造スイッチから「8GB以上のRAMを搭載した未発表ハード」の可能性が浮上

Image:naga/YouTube
Image:naga/YouTube

YouTuberのnaga氏は、CPUを2.6 GHz、GPUを1.26 GHzにクロックアップし、RAMを8GBへと増量した改造スイッチを自作しました。無改造のスイッチはCPUが1020MHz、GPUが携帯モードで307.2MHz/ドックモードで768MHz、RAMが4GBであり、かなりの魔改造っぷりです。

このうち最も重視すべきは、RAM容量でしょう。現世代機としてはPS5とXbox Series Xともに合計16GB、Xbox Series Sが10GB、1世代前でスイッチより数年前に発売されたPS4でさえ8GBです。コストが高くつくためにメーカーとしては少なく抑えたい、しかし開発側としては様々な用途に使えるため「多ければ多いほどいい」パーツです。

さらにカスタムカーネルOSのL64 Ubuntu 18.04上でBox64 + Wineを使うことで、複数のPCゲームを試しています。要はスイッチ上に別のOSを載せて、Windows用ゲームを動かす環境を整えているわけです。こうした改造そのものは、任天堂の著作権などを侵害しておらず、別に違法ではありません。

その結果は、たとえば『ファイナルファンタジーVII リメイク』や『Stray』はほぼ安定して30FPS前後で動作。『デビルメイクライ4』など古いゲームはそれ以上に滑らかに動き、『Fallout New Vegas』も小さな室内であれば60FPS、より開けた場所でも約30FPSで動いています。

これに先立ちnaga氏は、同じ改造ハードで複数のスイッチ用ゲームを動かしたところ、なんと一部のゲームは8GB RAMに対応していることが明らかに。その1つ『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は4K表示に対応、しかし12FPSには達せず。つまり任天堂は「8GB以上のRAMを搭載した未発表ハード」を想定している……?

スイッチ後継機種のRAMが12GBになるとの予想は、複数の情報源が伝えてきました。本当であれば高解像度のテクスチャも生成しやすくなり、Xbox Series Sの表示品質を超えるかもしれないとの分析もあります

有機EL版スイッチライトを自作した猛者も登場

Image:Taki Udon/YouTube
Image:Taki Udon/YouTube

現在販売中のスイッチ機種のなかで最も改善が求められているものは、おそらくNintendo Switch Liteでしょう。小さくて軽い、引き換えにコントローラーも取り外せないしテレビとの接続もできない。そこまでは、かつての携帯ゲーム機と同じなので別に問題ありません。

ただし画面のサイズが小さい上にディスプレイの品質も高くなく。文字が潰れて見えないこともある。据え置きハードも兼ねたスイッチ系列機ならではですが、有機EL版を望む人達も少なくないはず。

それを実際にやってしまった動画が公開されました。まだ途中経過ではありますが、ティアキン(略称)が無改造のライトよりはるかに彩度が高くて見やすくなっています。

スイッチライトは「最も安くて買いやすいモデル」だけに、コストが上がる有機EL版は任天堂にとって出せない、というより出したくないのでしょう

スイッチ後継モデルも、まず8インチ液晶モデルを発売した後に、間を置いて有機ELモデルが登場するとの噂もありました

すでに有機ELモデルの見やすさ、遊びやすさを知ってしまうと、液晶モデルは見送って有機ELモデルを待った方が……。そう思わせて発売直後の品薄を抑え、転売屋どもをけん制するのも、任天堂の転売屋対策のうちかもしれません。いや、単なる邪推や憶測でしかないのですが。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

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