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大阪維新のクアトロ勝利で完全決着? 大阪IR開発の件

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:イメージマート)

昨日の投開票となった統一地方選の前半戦、大阪では大阪府市の両首長、および両議会の改選が行われ、現与党勢力の日本維新の会が両首長はおろか、両議会でも単独過半数を獲得し、クアトロ勝利を達成した。以下、TBSからの転載。

大阪府議会・市議会で維新が単独過半数を獲得 市議会での獲得は初 W選は維新が2勝(TBS)

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/424741

大阪における今回の統一地方選の前半戦、野党サイドは「夢洲IR構想の再考」を旗印に掲げ支持の拡大を狙った。しかし事前にマスコミが実施したアンケート調査では大阪IR構想への市民の賛成が、反対派を上回るなどとも報じられ、選挙の序盤から厳しい滑り出しとなった。苦し紛れともいうべきか、しまいには野党第一党となる自民党側の候補者からは「カジノの代わりにディスニーを!」などとする選挙ポスターまで飛び出し、後に「ディズニー誘致は公約ではない」として本部側からの火消しが行われるドタバタ劇も見られた。以下、日経新聞および産経新聞の関連する報道。

大阪IR「賛成」、反対を上回る 本社調査(日経新聞)

https://nikkei.com/article/DGXZQOUF021OL0S3A400C2000000/

IR候補地・夢洲に「ディズニーを!」自民ポスターが物議、大阪(産経新聞)

https://news.yahoo.co.jp/articles/af03c9a657ddbf8129dbc4cb1f25c302701888db

なにはともあれ、夢洲IR構想を公約として掲げた日本維新の会が大阪府市の両首長、および両議会選において完全勝利を達成したことにより、大阪のIR構想は「政治的には」推進という形で決着が付いたということになる。国は統一地方選への影響を考慮して、既にその募集を1年を経過しようとしているIR整備区域の認定を未だに発表していないが、今月後半に予定されている統一地方選の後半戦が終わった後には程なくその結果が発表されるのではないかと思う。以下、共同通信による関連記事。

IR認定判断、統一選後に先送り 大阪で争点化、長崎も懸念(共同通信)

https://news.yahoo.co.jp/articles/ad5d9c84f43eda9b5bac1eefcc23ca445f4451a5

但し、国から区域認定の判断が出たとしても、実はプロジェクトに最終的なGOサインを出すのはあくまで民間企業であることを忘れてはならない。実は昨年4月に大阪府市とIR開発事業者が結んだ基本協定には、以下の様な内容が取り決められている。

基本協定の解除

SPC の解除権

・判断基準日:認定後 30 日を経過した日

・通知期限:判断基準日から 60 日以内

SPC は、条件成就のために大阪府・大阪市と緊密に協力・連携し、合理的に可能な範囲で努力した上で、誠実かつ合理的な裁量により条件の成就・不成就を判断

(出所:大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域整備等基本協定)

実は大阪府市と開発事業者側が結んだ基本協定には、国からのIR整備区域の認定から30日まで民間事業者側にこの基本協定を解除する権能を定めている。その解除条件には、①IRにまつわる各種税制上の取り決めは元より、カジノ管理委員会が我が国のIRの国際競争力、および国際標準の確保の為に適切な規制をしいているか。②開発地となる夢洲の土地・土壌に関して大阪市が適切な措置を実施しているか、③そして国内外の観光需要がコロナ禍から真に回復したと言える見込みがあるかなど、複数の要件が定められているのだ。これらの項目で適切なIR開発環境の整備が行われていないと判断される場合には、国がIR整備区域を認定した後にも大阪IRは「撤回」もあり得ることは、これまであまり語られることのなかった大阪にとっての「不都合な真実」である。

現在の大阪IR整備計画は、コロナ禍前にその骨子が作られ、コロナ禍を経た後にもその主たる部分の修正が行われぬまま国へ提出されたもの。また、その提出後も国はおよそ1年に亘って、その判断を塩漬けし、結論を先延ばしにしてきたものである。その間に、アメリカではニューヨーク・マンハッタンエリアのど真ん中で新規のIR開発計画が進み、マカオではこれから10年間で凡そ2兆円のIR投資が発表された。このように激変するIRへの国際的な投資環境の中で、我が国のIR計画は既に業界内では殆どテーマとして語られない、時代遅れの存在として見なされてきた。

果たして、我が国で無事IRは誕生するのか。その判断を座して見守ってゆきたい。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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