オートバイのあれこれ『ユニークなヤマハのエンジン』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『ユニークなヤマハのエンジン』をテーマにお話ししようと思います。
ハーレーダビッドソンといえば空冷Vツイン(V型2気筒)、BMWであればボクサーツイン(水平対向2気筒)、ドゥカティならLツイン(L型2気筒)といったように、外国の二輪メーカーはエンジン形式にこだわりを持つ傾向が強い一方、日本の二輪メーカーは黎明期から現在に至るまで、多種多様なエンジンを手掛けてきました。
ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキ…どのメーカーにも「名機」と呼ばれる秀逸なエンジンがいくつもあるわけですが、今回はその歴史において特にバラエティに富むエンジン作りをしてきたヤマハのエンジンをいくつか見てみましょう。
◆後方排気エンジン
メーカー同士による熾烈な“技術競争”でもあった80年代のレーサーレプリカブーム下において、ヤマハが編み出したのが後方排気レイアウトの2ストロークエンジンでした。
オートバイのエンジンというのは一般的に、空気(混合気)を後方から吸入し、燃焼後の排気ガスを前方へ吐き出す構造をしていますが、ヤマハは80年代後半のレーシングマシン『TZ250』に、このレイアウトを逆さにした〈前方吸気&後方排気〉を採用。
これが、市販車の『TZR250』(3MA型)にも採用されました。
後方排気レイアウトのメリットとしては、マフラーの形を直線状にすることができ、これによって排気ガスをスムーズに放出できることと、キャブレターが走行風を受け止める向きに付くので、バイクの熱に影響されていないフレッシュな外気を効率良く取り込めることなどが挙げられます。
後方排気は、高回転キープで走り続けるレース(サーキット走行)においてはそのメリットが存分に発揮されたものの、低い回転数&速度で走ることも多い公道においてはあまり旨味が無く、ストリート向けモデルへの採用は3MA型TZR250のみで廃止されてしまいました。
ちなみに現在では、BMWの『G310』シリーズに後方排気レイアウトが用いられています。
◆GENESIS
1980年代のヤマハを代表するエンジンといえば、やはり『GENESIS(ジェネシス)』でしょう。
“GENESIS”は日本語で「起源」や「創世記」という意味で、文字どおり“新たな時代を創る”パワーユニットとして生み出されました。
エンジンの形式自体はよくある並列4気筒だったものの、その4つの気筒が大きく前傾している(地面に対し45度前へ傾いている)のが何よりの見どころです。
これは元々、ヤマハが秘密裏にV4エンジンを開発しており、そのV4エンジンの後ろ側2気筒を前の2気筒の横へ並べた結果だといわれています。
V型エンジンのリヤバンク(後ろ側)が無くなり、前側だけが残った結果の形ということです。
燃焼室が45度傾くことでエンジン自体の重心を低くでき、またエアクリーナー等の吸気系統を上下方向に設置して、重力を活かし吸気効率を高めることができました。
また、これはジェネシスとは直接関係ないですが、ジェネシスエンジンを積んだ『FZ750』では5バルブ(吸気3・排気2バルブ)が用いられるなど、ジェネシスには多バルブが組み合わされることもよくありました。