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所得税減税、実現できたらいつから? 今からだと早ければ…ではなく、実は早くても…

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
岸田文雄首相が言及した「所得税減税」は、実現するか(写真:イメージマート)

10月20日に開会された臨時国会において、23日に岸田文雄首相は所信表明演説を行った。所信表明演説の中で、

現世代の国民の努力によってもたらされた成長による税収の増収分の一部を公正かつ適正に「還元」し、物価高による国民の御負担を緩和いたします。

出典:第二百十二回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説

と表明した。

ただ、ここには、「減税」の文字は見られない。この所信表明演説で減税と述べたのは3か所だけである。それは、

賃上げ税制を強化するための減税措置や、戦略物資について初期投資だけでなく投資全体の予見可能性を向上させる過去に例のない投資減税、特許などの所得に関する新たな減税制度、人手不足に苦しむ中堅・中小企業の省力化投資に対する補助制度をはじめ、抜本的な供給力強化のための措置を講じていきます。

出典:第二百十二回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説

にある、法人税の減税だけだった。

とはいえ、所得税減税がにわかに注目を集めている。それは、所信表明演説に先立ち、10月20日に、岸田首相が与党幹部を首相官邸に呼んで、前掲の「還元」の具体策を与党の税制調査会で検討するよう指示した際、所得税減税に言及があったからである。

所得税減税には、定額減税と定率減税の2種類が候補となっているが、その両者の詳細は、拙稿「所得税に法人税、『減税ラッシュ』がやってくる 法人税減税は『賃上げと研究開発』が要件」に譲ろう。本稿では、その実施時期に焦点を当てる。

今から所得税減税を検討し始めて、早ければいつ実現できるのか。所得税減税を行うには、所得税法の改正が必須である。それは、租税法律主義に基づく。租税法律主義とは、事前に法令の根拠なしに、事前に法令の根拠なしに、 租税を賦課されることはないとする原則である(出典:土居丈朗『入門財政学(第2版)』日本評論社)。法律を改正するには、国会で改正法案が可決・成立しなければならない。

今の臨時国会は会期が12月13日までとなっている。この臨時国会に間に合うように、所得税減税を盛り込んだ所得税法改正を成立させれば、早ければ2024年1月1日から所得税減税が実現できる。

所得税は、わが国において、1月1日から12月31日までに生じた所得に対して課されることとなっている。

しかし、本稿執筆時点で、政府に、所得税減税を盛り込んだ所得税法改正案を今臨時国会に提出する動きはない。現に、前掲の岸田首相の指示も、年末の税制改正に向けての指示で、臨時国会に間に合わせるとは解されていない。

そうなると、次の機会は、例年通りなら2024年1月に開会される通常国会である。そこで所得税減税を盛り込んだ所得税法改正案が提出されれば、ようやく議論の俎上に載る。

だから、もうこの段階で、2024年1月1日からの所得税減税の実現はない。

では、早くともいつになったら所得税減税は実現できるのか。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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