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来週の沖縄から西日本は、台風21号に対して厳重な警戒が必要 その前に活発化している秋雨前線の雨に注意

饒村曜気象予報士
台風20号と秋雨前線の雲(左)、台風21号の雲(右下)(10月25日15時)

台風の月別上陸数

 気象庁では、台風の中心(気圧が一番低い場所)が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「台風の上陸」と定義し、情報を発表しています。

 従って、沖縄本島など島の場合は、中心が達しても、「台風の通過」であり、上陸ではありません。

 台風の統計が行われている昭和26年(1951年)以降、昨年までの73年間で上陸した台風は210個あります(年平均2.88個)。

 月別では8月が一番多く、次いで、9月、7月が多いのですが、その次は10月です。

 10月の上陸台風は、6月の11個より多く、18個上陸しています(図1)。

図1 台風の月別上陸数(昭和26年(1951年)~令和5年(2023年))
図1 台風の月別上陸数(昭和26年(1951年)~令和5年(2023年))

 平成13年(2001年)以降は、10月に上陸する台風の割合が増えていますが、それでも10月下旬になると台風はほとんど上陸しなくなります(表)。

表 上陸日時が遅い台風(昭和26年(1951年)から令和5年(2023年))
表 上陸日時が遅い台風(昭和26年(1951年)から令和5年(2023年))

 しかし、10月下旬にほとんど台風が上陸しないといっても、台風が影響しなくなるということを意味していません。

 筆者は、昔、月別の台風進路を調べたことがありますが、10月にマリアナ諸島付近で発生した台風の中には、北西進のち北東進して日本の南岸を東進するものがあります(図2)。

図2 10月の台風の平均経路
図2 10月の台風の平均経路

 その日本の南岸を東進する台風のうち、日本にかなり接近、あるいは上陸するものが増える傾向にあるのかもしれません。

 ただ、日本にかなり接近、あるいは上陸しなくても、10月の台風は日本付近の前線を活発化させ、大雨を降らせることがあるので油断できません。

台風21号の北上

 10月25日6時にマリアナ諸島付近で発生した台風21号は、西進しながら発達し、週明けの30日の水曜日に沖縄の南に強い勢力で接近する見込みです(図3)。

図3 台風21号の進路予報と衛星画像(10月26日0時の予報)
図3 台風21号の進路予報と衛星画像(10月26日0時の予報)

 気象庁は台風進路予報を5日先までしか発表しておらず、しかも、5日先の予報円は非常に大きなものです。

 沖縄の南に達した台風21号が、そのあと、どのような推移をするのかはっきりしていませんが、来週の沖縄から西日本は、台風21号に対して厳重な警戒が必要です。

 ただ、その前に、台風周辺の暖湿気流が北上して活発化している秋雨前線の雨に注意が必要です。

秋雨前線の停滞

 西日本から関東の南海上に秋雨前線が停滞し、この秋雨前線に向かって台風21号周辺の暖かくて湿った空気が北上する見込みです(図4)。

図4 予報天気図(左は10月26日9時、右は27日9時の予想)
図4 予報天気図(左は10月26日9時、右は27日9時の予想)

 このため、10月26日からは北陸や北日本は概ね晴れるものの、西日本~東日本太平洋側ではくもりや雨となり、九州南部や伊豆諸島では雷を伴った激しい雨の降る所もある見込みです。

 また、南西諸島も雲が広がりやすく、所によりにわか雨や雷雨があるでしょう。

 秋雨前線でまとまった雨が降ると土の中に含まれる水分量が多くなり、そこに台風21号の雨が加わると、大災害の恐れがありますので、秋雨前線による雨の降り方には注意が必要です。

 加えて、南シナ海を西進している台風20号が、Uターンしてくる予報となっています(図5)。

図5 台風20号の進路予報と海面水温(10月26日0時)
図5 台風20号の進路予報と海面水温(10月26日0時)

 台風20号は、日本に接近する来月初めには温帯低気圧に変わっているかもしれませんが、秋雨前線を活発化させて大雨を降らせる可能性があります。

 秋雨前線、台風21号、台風20号と、しばらくは気象情報等の入手に努め、警戒してください。

タイトル画像、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図4の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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