”ゲリラ豪雨”は正式用語じゃない? マスコミの俗語が定着
連日の暑さから、関東エリアでは頻繁に”ゲリラ豪雨”が発生しています。きのう7月31日は、夕方から首都圏各地で激しい雨となり、あちこちで道路冠水が起こりました。東京23区では6年ぶりに「記録的短時間大雨情報」が発表されたとのことです。またその4日前の27日には、埼玉県内の広い範囲で雷雨となり、4万2千軒超が停電しています。
大気の不安定な状態により、「狭い地域で短時間に激しい雨が降る局地的な大雨の現象」を指す”ゲリラ豪雨”という言葉。実はこの言葉、正式な気象用語ではないことをご存知でしたか?
今回は、執筆記事1万本以上、取材経験5000回以上の元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、『ニュース記事に使われている何気ない言葉』を解説。今回は”ゲリラ豪雨”について解説します。(構成・文=コティマム)
流行語にもなった”ゲリラ豪雨”
ニュースでも頻繁に使われる”ゲリラ豪雨”という言葉。2008年の第25回「現代用語の基礎知識選『ユーキャン 新語・流行語大賞』」では、トップ10にランクインしています。
このゲリラという言葉は、もともとはスペイン語の「guerrilla」。大辞泉(小学館)によると、guerrillaという言葉には
という意味があります。
”ゲリラ”豪雨”は、いきなり局所的に発生する集中豪雨の予測が難しいことから、奇襲を行うゲリラに例えて呼ばれています。しかし、冒頭にも書きましたが、これは正式な気象用語ではないのです。
使い方を配慮している媒体もある
”ゲリラ豪雨”という言葉は、1970年代頃にすでに新聞等では使われていましたが、気象庁が定めた言葉ではありません。気象庁では「局地的大雨」といった言い方をします。また、その地域の災害発生につながるような、滅多に観測しない雨量を知らせる時には、「記録的短時間大雨情報」を発表します。
テレビや新聞、ニュースなどでは、「どこで発生するのか分からない短期的な大雨」を”ゲリラ”に例えて頻繁に使っており、近年は豪雨が多発していることから、マスコミでは定着しています。
しかしゲリラという言葉が軍事的な意味を連想させることから、不適切として使用しない媒体もあります。
筆者は普段執筆している原稿で気象について書く機会はありませんが、報道番組のディレクターで過去に天気コーナーも担当していた筆者の夫に聞くと、「いわゆる”ゲリラ豪雨”」という言い方で使うこともあるということでした。「いわゆる」を付け足したり、テロップでは「””」を入れて、俗語であることや特別な呼び方であることを表すのです。
一方、新聞出身の記者の先輩によると「ゲリラ豪雨は普通に使っていた」そうで、原稿にもそのまま使っていたとのこと。「ただ、”ゲリラライブ”は使用を控えていた記憶。奇襲を彷彿(ほうふつ)とさせるからかもしれない」とも教えてくれました。”ゲリラ”という本来の意味への配慮などもありつつ、媒体によって扱い方はさまざまです。
まとめ
現在”ゲリラ豪雨”について書かれているニュース記事は、「””」などは使われず、そのまま表記されている媒体が多いです。テレビニュースなどのナレーションでは、「いわゆる」という補足がついている媒体もあるかもしれません。”ゲリラ豪雨”のニュースが流れている時は、チェックしてみてくださいね。
8月に入り、ますます暑さが続く季節です。突然の”ゲリラ豪雨”に気をつけて過ごしましょう!
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※ニュース参照:ウェザーニュース、TBS NEWS DIG、 埼玉新聞、現代用語の基礎知識選『ユーキャン 新語・流行語大賞』