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森、小泉、安倍のバトルロイヤル

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(54)

睦月某日

細川護煕氏と小泉純一郎氏の二人の元総理が並んで記者団の前に立ち都知事選挙への出陣を表明したのは、自公の推薦を受けた舛添要一氏が出馬会見を行い、また東京五輪組織委会長に森元総理の就任が予定されていた日にぶつけられた。

細川氏がもう少し早い時期の表明を考えていたのを押しとどめ、この日にしたのは小泉氏の意向だったとされる。だとするならば小泉氏は、自分の前と後の二人の総理にバトルロイヤルを仕掛けた事になる。

この日、小泉氏は「都知事選は、原発ゼロで日本は発展できるというグループと、原発なくして発展できないというグループとの争いだ」と宣言し、原発再稼働を目指す安倍総理に挑戦状を突きつけた。

これに対し安倍総理は「エネルギー政策は国民みんなの課題だ」と「脱原発」が都知事選の争点になることを牽制し、「東京都が直面する諸課題についてバランスよく議論される事を期待したい」と争点を絞らせない考えを示した。

一方、細川―小泉会談がこの日でなければ、自公が推す舛添氏は「史上最高の五輪をめざし、東京から日本を変える」と2020年のオリンピックを前面に押し出し、森元総理の組織委会長就任のニュースと連動して都民の目をオリンピックに向けさせる狙いだったと思うが、それが思惑通りにいかなくなった。

そのせいか森元総理はこの日の講演で「五輪を人質にとって原発をやめさせるかどうかを迫るのは卑怯なやり方だ」と細川氏出馬を批判し、また「安倍政権に大きなダメージを与えかねない事をやるのか」と小泉氏の動きに不満をぶつけた。細川氏出馬を主導したのが小泉氏であればいずれも小泉氏を挑発した事になる。

昔から「鮫の脳みそ」と揶揄されてきた森氏だが、何が卑怯なのか、発言の意味は良く分からない。おそらく流れに逆らわずに泳ぐタイプの森氏には小泉氏らの思考が理解できないのだろう。一方で森氏が安倍総理をどう見ているかと言えば、こちらもあまりに幼稚だと低い評価を下しているのである。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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