日本列島に猛暑をもたらした太平洋高気圧の勢力が弱まった影響で台風6号が沖縄近海で減速、その後は
台風6号の減速
令和5年(2023年)7月28日3時にフィリピンの東で発生した台風6号は、北上しながら発達し、28日15時には大型に、30日21時には大型で強い台風、21日15時には大型で非常に強い台風にまで発達しています。
ただ、台風6号は強まってきた太平洋高気圧に行く手を妨げられて北上を続けることができず、向きを次第に北西から西に変えて沖縄近海を進んでいます。
そして、沖縄本島と宮古島の間を速度を落としながら通過し、東シナ海に入ったあとさらに減速して8月4日頃から向きを東に変える予報となっています(図1)。
台風6号が進む海域は、台風が発達する目安となる27度を上回る29度ですので、台風は非常に強い勢力を維持したまま進む見込みです。
暴風域に入る3時間ごとの確率をみると、暴風域に入っている沖縄本島南部で8月2日夕方までで100パーセントですが、確率が50パーセントを切るのは8月3日未明になってからです(図2)。
台風の動きが遅いため、一日以上暴風域に入っている予想ですが、8月5日未明から暴風域に入る確率が再び高くなり始めます。
これは、沖縄本島では、いったん遠ざかった台風6号が再び接近する可能性があることを示しています。
また、宮古島地方は、8月2日朝から暴風域に入る確率が50パーセントを超え、昼前には100パーセントとなり、50パーセントを下回るのは夕方になってからと、半日にわたって暴風域に入ると考えられます。
台風の動きが遅いために、沖縄地方では300ミリ以上の雨になると予想されています(図3)。
沖縄地方では暴風や高波、高潮に厳重に警戒するとともに、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。
また、奄美地方では高波に厳重に警戒し、暴風に警戒してください。
九州南部でも高波に警戒が必要です。
太平洋高気圧の動向
台風6号の動きが遅くなったのは、日本列島に猛暑をもたらした太平洋高気圧が弱まる傾向にあり、台風を中国大陸へ向かって移動させる流れが弱くなっているからです。
令和5年(2023年)7月までに一番気温が高かったのは、7月27日に大阪府・枚方で観測した39.8度で、次いで、7月26日の埼玉県・鳩山と7月16日の群馬県・桐生の39.7度で、あと少しで40度の大台でした。
今年一番多くの猛暑日を観測したのが7月27日の251地点(約27パーセント)、一番多くの真夏日を観測したのが7月29日の847地点(約93パーセント)、一番多くの夏日を観測したのが7月28日の911地点(約100パーセント)でした。
これに比べ、8月1日に全国で最高気温35度以上の猛暑日を観測したのが155地点(気温を観測している913地点の約17パーセント)、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが694地点(約76パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが902地点(約99パーセント)と、少し少なくなっています(図4)。
太平洋高気圧が少し弱まった影響で、台風6号の動きが遅くなり、九州接近の可能性がでてきたのですが、このまま太平洋高気圧が弱まるわけではなく、再度強まって日本列島に猛暑をもたらすと予想されています。
太平洋高気圧が強まりすぎると台風6号を中国大陸へ押し流し、強まりがそれほどではないと台風6号が東シナ海で停滞もしくは九州接近となるため進路予想が非常に難しいのです。
予報円が非常に大きくなっている理由です。
統計的に見た8月の台風
夏は台風を流す上空の風が弱いため、夏の台風は動きが遅く、進路が定まりにくいという特徴があります。
気象庁の台風予報は5日先までで、8月7日以降については不詳ですが、沖縄地方や九州では台風の影響が長引く恐れもあります。
筆者が昔作成した8月の台風の平均的な経路図では、東シナ海の台風は迷走することが多いということで、沖縄本島の北でループを描くことで表現しています(図5)。
また、8月の東シナ海の台風は、西進して中国大陸に向かう場合や、東進して九州に接近する場合より、北上して黄海に向かう台風が多いようです。
気象庁の台風予報は5日先までで、台風6号が東シナ海に入って動きが遅くなるところまでですが、その後は、統計的に言えば、北上ということになりますが、進路予報のカギを握っているのは、太平洋高気圧の動向です。
タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図5の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年)、台風に関する諸統計 月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。