JR九州新幹線、JR北海道在来線から車内販売が消滅……なぜ、廃止になるのか?
先日、JR九州が新幹線での車内販売を3月15日で終了させ、JR北海道も特急列車での車内販売を2月28日をもって終了させるということが明らかになった。
新幹線や特急列車に乗ると、ワゴンにコーヒーやお酒、弁当、沿線の名物などを乗せた車内販売がやってくる。だがそうした車内販売も、どんどん少なくなっている。
新幹線でも消える車内販売
すでに、東海道・山陽新幹線の「こだま」からは、車内販売がなくなっている。利用客はそれほど多くなく、いても短距離の利用で、ゆったりと車内で過ごす時間が少ない、というのが背景にある。
加えて、ペットボトル飲料などの普及により、あらかじめ買って持ち込むことも可能になっているという理由もある。
比較的長い時間乗る、「のぞみ」のような列車でないと、車内販売は成立しないのだ。しかも「のぞみ」は、大変多くの利用者がいる。そんな恵まれた条件でない限り、ビジネスとしての車内販売は成立しないのだ。今回車内販売がなくなることになるJR九州エリアの新幹線は、距離も短く、最大でも8両編成と乗客も少ない。在来線の特急列車では、すでに車内販売をなくしてしまった列車も多い。
短距離運行、長距離でも短編成、乗客も多くない。そういう列車では、ビジネスとしても成り立ちにくいのである。JR九州に多く見られる短距離・高頻度停車の新幹線や特急は人の出入りが激しく、JR北海道にあるような長距離・短編成の特急だと、車内販売のワゴンが何度も往復することになる。
どんな会社が車内販売をやっているのか
車内販売は、鉄道会社が直接やっているものと、系列の車内販売会社に営業させているものの2種類ある。かつては、地元の駅弁店などが一部区間で乗ってきたということもあったという。
JR九州やJR北海道の場合、車内販売は鉄道会社の直営である。実際の車内販売にあたっているのは、契約社員が中心となっている。
その他のJRでは、JR東日本では日本レストランエンタプライズ、JR東海ではジェイアール東海パッセンジャーズ、JR西日本ではジェイアール西日本フードサービスネットが行っている。JR四国では、ステーションクリエイト東四国である。いずれも、各JRの系列会社だ。
それぞれの会社が車内販売の拠点を各地に維持し、列車で車内販売を行うべくスタンバイしている。この維持費用も、かなりかかる。各地に車内販売の拠点を設け、泊まりが必要なシフトなら宿泊場所も確保し、となると大変である。
利益になりにくく、労務難
車内販売で売れる金額、というのはたかが知れている。大量乗車・長距離運転でない限り、売上の数字が大きく出るということはありえない。その上、車内販売の求人は比較的多く出ており、人手がたりないという状況も見て取れる。少し前まで、JR九州やJR北海道でも、車内販売員の募集を行っていたくらいだ。なかなか採用ができない、しかも儲からない、ということになると、廃止してしまおうという考えにもなるだろう。
こういった構造は、食堂車がなくなっていくときにもあった。拠点の維持、労務難、儲かりにくい。車内販売でさえ、同じ状況がいまは起こっているのだ。加えて駅のコンビニなどの充実もその流れに拍車をかける。
戦略的に車内販売を残す一部私鉄
私鉄の中には、車内販売があるということを売りにしているところもある。たとえば小田急のロマンスカーは、車内販売が名物となっており、1時間とプラスアルファ程度の距離でも、車内販売のコーヒーが人気である。
富士急行の「富士山ビュー特急」では、50分に満たない運行時間であるにもかかわらず、グッズやコーヒーを主体とした車内販売が行われていた。「車内販売がある」ということ自体が、列車の売りなのだろう。
車内販売そのものを売りにする、車内販売で買うという体験に魅力を感じさせることができない限り、短距離特急での車内販売というのは難しい、という現実がある。しかも新幹線以外の長距離列車ではどんどん減っている。車内販売が置かれた厳しい現実があり、その状況を解決する策を見いだせない限り、車内販売の縮小は続くということになるだろう。