政党の人権感覚は大丈夫か?〜性的マイノリティに関する政策調査から考える
衆議院議員総選挙を前に、政党の性的マイノリティ(セクシュアルマイノリティ)についての様々な公開質問が当事者団体であるレインボープライド愛媛により実施されました。様々な見解から各党の人権感覚が見えてきた中で、自由民主党だけが他党とは違う見解を表明していることについて、政権党として人権をどうとらえているのか問題視されています。このことについて公開質問を実施した「レインボープライド愛媛」の代表エディさんにお話を伺いました。
◆「性的マイノリティは人権問題ではない」という自民党の見解
レインボープライド愛媛では、2005年から地元の市長選や市議選の際に立候補者に向けた性的マイノリティの人権への見解について政策調査を実施してきました。2012年の総選挙時に東京や全国規模での同様の活動がないことから、同団体が調査を開始しました。
今回の調査結果に関して、他の政党とは一線を画す回答をしたのは自民党のみ。エディさんは「想定外でした。まともな政権政党の回答とは思えずショックを受けました」と話します。以下に代表的な質問と回答を引用したいと思います。
この質問に対して、自由民主党のみが「【B】人権問題として取り組まなくてよい 」と回答。
民主党、公明党、次世代の党、日本共産党、社会民主党の各党が「【A】人権問題として積極的な取り組みが必要だ 」。維新の党、生活の党、太陽の党、新党大地が回答無しという結果でした。
また、上記の質問に対しては、自由民主党のみが「【E】性同一性障害者への施策は必要だが、同性愛者へは必要がない 」と回答、
民主党、公明党、次世代の党、日本共産党、社会民主党の各党が「【A】社会の理解が不足している課題なので積極的な啓発や施策が必要だ 」。維新の党、生活の党、太陽の党、新党大地が回答無しという結果でした。
これらの回答に対してエディさんは、「愛媛の調査でも個々の議員の皆さんからはこのような回答はまずなく、回答を拒否する人はいても、あえてヘイトスピーチになるような回答を出す人はいませんでした」。つまり、「党」としての見解だけがとても異質だといいます。各議員と党の回答にズレがあることから、果たしてこのテーマについて党内ので話し合いがもたれているのか、共通見解として認知されているのか、と疑問を覚えますが、党としてこのような回答をすることに疑問を感じていないということのようです。
◆声を上げなければ、居ないことにされてしまう
「マイノリティー当事者が立ち上がって声を上げていかないと居ないことにされてしまう。私たちも同じ国を作っているメンバーなんです」、とエディさんは危惧します。
しかし、声を上げ、積極的活動をすることに後ろ向きな当事者も少なくないといいます。「隠れて生きているんだから、いらんことをしないで欲しい」そんな寝た子を起こすな、という事なかれ主義の当事者に対して、エディさんはそれでは何も変わらない、といいます。政治的に動くことで政治家を煽ってしまうことになり、危険だからやめるべきだという意見もあるが、「そんな馬鹿な、と思いたい」。
◆地域が変われば、日本が変わる。
地元を離れて活動する当事者について、エディさんは「やっぱり偏見があるので、生まれ育った土地では活動しにくいというのはあると思います。でも、地域に根ざしている活動でなければ共感が得られない。別の都市に行っても“へんなのがやってきた”で終わってしまう可能性もあります。地元ならへんなのでも“この町の問題だ”ってなる」
“地域が変われば、日本が変わる”という信条で活動しているエディさんの方法は、「地元の有権者から質問をすることで、自分たち存在を知ってもらえる」というもの。存在を知ったなら、「リーダーになる人ならば、国民全体を包含して愛して欲しい。まあ中には変なのもいますけどね(笑) 戦後日本を導いた各政党や政治家に対してはリスペクトしています。辞めるとか交代という方法もあるが、「改善」していくことが大事だと考えています」。
法務省がすすめる人権週間の課題として、すでに2002年から性的指向や性同一性障害が取り上げられています。そういった流れの中での回答と捉えると、性的マイノリティにとどまらない問題の根深さを感じます。
当事者だけで解決することは難しい問題です。是非この機会に当事者以外の有権者の方にも拡散して、どういう政党・政治家を支持したら良いか、また政治へどうアプローチしたら良いか、一緒に考えて頂ければ幸いです。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE)
関連サイト
レインボープライド愛媛・性的マイノリティに関する公開質問
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