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【中学受験】入試当日の過ごし方と2日目以降の受験計画

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
(写真:イメージマート)

いよいよ首都圏の中学入試が始まった。この記事を、いままさに受験に立ち向かっているわが子を待ちながら読んでいる方も少なくないと思う。今回は入試当日、駆け込みで多い質問について、30年間中学受験に関わってきた筆者の経験をもとにまとめてみたい。

当日の復習はするべきか?

同じ学校を複数回受験する場合は、復習に大きな意味がある。学校にもよるが、複数回受験がある学校では、算数なら数字だけ違うとか、他教科なら同テーマだったり、問われ方が共通しているなど、一部変更のみで1回目と近い出題がされることも多い。複数回まとめて一番点数の高い回を評価してくれるなどのメリットがある学校もある。その学校への進学を熱望しているなら、複数回受験を計画しているはずである。学校側は、その熱意を見て評価しようとしているわけだ。

一方で、同じ学校をもう受験しない場合、その日の復習や解き直しに時間をかけるのは、あまり得策ではない。どうしても気になるところだけ確認するに留め、翌日の試験に向けての対策に切り換えた方が賢明だろう。

どう声掛けをするべきか?

初日の夜に結果が発表される学校も多いが、まだ序盤である。初日に結果が出なかった場合、親が勝手に落ち込みすぎたり、なげやりになったりするパターンもよく目にするが、これは絶対にやめるべきだ。受験生自身、初めての経験で、プレッシャーの中に身を置いて挑戦している。たとえ緊張感がないように見えても、何も言わなくても、本当に平常心でいられるような小学生はいない。それを理解して、子どもが最後まで試験に挑めるよう、モチベーションを保つ声がけを心がけたい。

翌日からの受験計画を変更すべきか?

中学受験の動機がポジティブで積極的なものであれば、変える必要はない。動揺せずに計画通りにチャレンジすべきである。しかし、どうしても公立に行きたくない理由があったり、本人が強く望むようなら、より合格しやすい学校への変更を考える事も必要である。

入試直前でも出願できる学校や、追加入試を行う学校もある。追加入試の情報などは、連日の受験でバタバタしながらチェックすることは精神的にも物理的にも難しいので、塾に相談することも検討したい。ただし、複数回受験や、急遽志望校を変更するなどの場合、家族間での合意形成が大前提であることも留意したい。両親で意見が割れたりすると、子どもが迷って不安になってしまう。

最終的な受験校は本人に決めさせていいのか?

どちらの学校を受験するかなどの最終決定は、本人がすることが望ましい。小学生だけでは決められるほど情報も判断力もないという意見もあるだろう。当然、保護者の意見や塾の意見を伝えることは前提である。だがそのうえで、本人の意志で自己決定することが、受験を経験として人生の糧にするために絶対的に必要なことだ。

親や先生が決めた、となれば、うまく行かなかったときに他者のせいにしてしまう恐れがある。また、うまく言っても自分で勝ち取ったという達成感は低くなるだろう。自分で決めることは簡単なことではない。しかし、この年齢でそういう体験をすることが、今後の成長や自立に直結する。

最後に前回の記事(【中学受験】入試前日の過ごし方と最終確認チェックリスト)でも触れたが、必ずしっかり睡眠を取ること。繰り返すが、まだ始まったばかり。喜怒哀楽の中でうまく自分をコントロールする経験は、親子共に成長の糧になるはずだ。すべての受験生、保護者にとってかけがえのない経験になるよう祈念する。

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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