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朝倉未来は牛久絢太郎に勝てるのか?打撃戦にはならぬ予感─4・29『RIZIN LANDMARK 5』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
約1年5カ月ぶりにMMAファイトを行う朝倉未来(写真:RIZIN FF)

「格闘技に対する気持ちの差で勝つ」

「米国(アメリカン・トップチーム)での練習では、いろいろな面で勉強させてもらった。技術も学べたし強い選手とスパーリングをする中で自分の良い部分も再認識できた。(朝倉未来より)自分の方が引き出しは多いと思うし、すでに彼の穴も見つけている。1つのことにこだわらず総合的に闘う」

4月17日、東京・亀有にある自身が所属するジムでの公開練習を終えた後、牛久絢太郎(K-Clann)は、自信に満ちた表情でそう話した。

決戦の刻は近づいている。

朝倉未来(トライフォース赤坂)vs.前RIZINフェザー級王者・牛久が4月29日、東京・国立代々木競技場第一体育館『RIZIN LANDMARK 5』のメインエベントで行われる。王者クレベル・コイケ(ブラジル/ボンサイ柔術)に敗れた者同士の対峙。フェザー級戦線を生き残るためにも、互いにとって「絶対に負けられない」闘いだ。

牛久は、こうも話した。

「朝倉選手は、2年くらい前から闘いたいと思い意識してきた相手。(勝負を決めるポイントは)格闘技に対する気持ちの差になると思う。その部分で勝ち切りたい」

公開練習でミットにパンチを叩き込む牛久絢太郎(右)。軽快な動きを披露した(写真:RIZIN FF)
公開練習でミットにパンチを叩き込む牛久絢太郎(右)。軽快な動きを披露した(写真:RIZIN FF)

「コンディションはばっちりです」公開練習後にメディアからの質問に笑顔で答える牛久絢太郎(写真:RIZIN  FF)
「コンディションはばっちりです」公開練習後にメディアからの質問に笑顔で答える牛久絢太郎(写真:RIZIN FF)

その1週間前、4月12日にはトライフォース赤坂で朝倉が公開練習を行っている。

彼は言った。

「高いレベルの選手と練習をしてきて良い状態に仕上がっている。(牛久は)どこが強いのかよくわからない、全体的にまあまあ強いという印象。普通にやれば勝てる。29日は(全試合の中で)一番面白い試合にしてKOで勝つ!」

展開に関しては、「打撃戦になると思う」とも口にした。

両者ともにコンディション上々で自信をのぞかせている。

気になる牛久の出方

朝倉は、打撃戦を予想した。それはイコール「打ち合いに持ち込みたい」との意思の表れである。

だが、そうなるだろうか?

今回は、カード決定が早かった。昨年大晦日のリングで発表されているから、両者には約4カ月の調整期間があった。その間にフィジカルを鍛え、相手を存分に研究し作戦を練ったはずだ。リングではなくケージで闘うことも踏まえて。

打撃の威力で上回るのは朝倉である。特に左の蹴りは強烈だ。

だが、牛久陣営は朝倉の打撃のコンビネーションを研究し尽くしている。簡単に押し込まれることはないだろう。

では牛久は、どのような展開を望んでいるのか?

朝倉はカウンターパンチャーだ。よって牛久も、その餌食になるような闘い方はしない。自分から攻めるよりも「待ち」を選択する。よって序盤は互いがケージ内を広く使って間合いを取り、見合うシーンが続くのかもしれない。

どちらが先に仕掛けるかはわからないが、牛久は打撃の攻防の中から隙を見出してグラウンドの展開に持ち込みたいだろう。朝倉は腰が強く組みも上手い。よってテイクダウンは難しいとされるが、それでも狙うなら朝倉がハイキック等の打撃を繰り出した直後。タイミングよく自分が有利な形で組みつけるかどうか。

スタンドでの朝倉は強いが、寝技はいまだ未知数。もし牛久がテイクダウンに成功しグラウンドキープができたなら、朝倉の新たな闘い模様が見られることになる。

予想は難しい。実力は互角と見る。

殺傷能力の高い打撃を炸裂させ朝倉がKOで勝つのか。それとも縺れ合い、削り合った末に牛久が判定で勝利をものにするのか。

朝倉は闘い方を変えない。気になるのは、牛久の出方。

トリッキーな動きからの跳びヒザ蹴りも交えながら、牛久は打撃につき合うふりをする。しかし、狙いは組み合いから展開をグラウンドに移しての消耗戦。これが彼のプランと見るが、それはハマるのか。

単なる打撃戦にはならぬ予感─。

〈4・29代々木『RIZIN LANDMARK 5』主要対戦カード〉

上記の4カードを含め全9試合が予定されている(提供:RIZIN FF)
上記の4カードを含め全9試合が予定されている(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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