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「楽天Edyがなくなる」というのは誤解 アプリ統合の狙いとは

山口健太ITジャーナリスト
複数のアプリを統合へ(楽天ペイメント提供資料より、筆者撮影)

楽天のスマホ決済「楽天ペイ」は、2024年12月以降に「楽天ポイントカード」や「楽天Edy」のアプリを統合する方針を発表しました。

このニュースを見て、楽天ポイントカードや楽天Edy自体がなくなると誤解した人が少なからずいたようです。そこで本記事では、楽天が発表したアプリ統合の狙いを解説します。

楽天ポイントカードや楽天Edyは引き続き利用可能

楽天の発表後、SNSやコメント欄などには「ポイントカードを出す手間がなくなる」とか、「楽天Edyの残高はどうなるのか」といった投稿が一定数あったようです。

結論から言えば、ポイントカードとしての「楽天ポイントカード」や、電子マネーとしての「楽天Edy」は、アプリ統合後もこれまで通り利用できます。

すでに楽天ペイのアプリには、楽天ポイントカードのバーコードを表示する機能が搭載されています。これとは別に、「楽天ポイントカード」専用のアプリもありましたが、2024年12月ごろに楽天ペイのアプリに統合され、役目を終えることになりました。

スマホ用アプリは統合されるが、楽天ポイントカードや楽天Edyは引き続き利用できる(楽天ペイメント提供資料より)
スマホ用アプリは統合されるが、楽天ポイントカードや楽天Edyは引き続き利用できる(楽天ペイメント提供資料より)

アプリ統合により、楽天ポイントカードのアプリが即座に消滅するわけではないとのことですが、段階的に楽天ペイのアプリに誘導していくことになりそうです。

楽天ポイントカードのアプリ。最新バージョンでは楽天ペイアプリへの誘導が始まった(アプリ画面より筆者作成)
楽天ポイントカードのアプリ。最新バージョンでは楽天ペイアプリへの誘導が始まった(アプリ画面より筆者作成)

アプリ統合により、支払い手段としての楽天ペイの利用が必須になるわけではありません。楽天ポイントカードのアプリ利用者向けのWebサイトでは、「楽天ポイントカード提示のみの利用もOK」として案内しています。

楽天ポイントカードの機能だけ使い続けることも可能(楽天ペイメントのWebサイトより)
楽天ポイントカードの機能だけ使い続けることも可能(楽天ペイメントのWebサイトより)

たとえば、楽天ペイのアプリで楽天ポイントカードのバーコードを提示してポイントを貯めつつ、支払いには現金やSuica、クレジットカードなどを使うことが引き続き可能です。

支払い手段は自由に選べるとはいえ、楽天ペイのアプリで楽天ポイントカードを提示したのであれば、そのまま楽天ペイで支払うのが最も簡単といえます。

楽天ポイントカードと楽天ペイの両方に加盟している店舗であれば、「楽天ポイントカードを提示し、楽天ペイで代金を支払う」ことで、ポイントの二重取りもできます。

楽天ペイ利用者の裾野を広げる施策として、最近ではチャージ方法を増やしており、2月には全国の金融機関からのチャージ、4月からはローソン銀行ATMからのチャージに対応しています。

さらに2024年夏からは、ポイント還元がチャージ払い時の1.5%還元に統一されます。これにより、楽天カードを持っていない人やチャージに使いたくない人でも、現金によるチャージで1.5%還元のポイ活を楽しめるようになるといえます。

楽天Edyについても同様に、2025年には楽天Edyアプリの残高確認やチャージといった機能が楽天ペイのアプリに統合される見込みです。アプリ統合後も、支払い手段としての楽天Edyが引き続き使えることに変わりはありません。

最近、楽天ポイントカードについては、マクドナルド丸亀製麺が取り扱いを終了していますが、全体の中では例外的な事例とみられます。直近では4月22日から全国の「なか卯」452店舗で楽天ポイントカードが利用可能になったとの発表がありました。

誤解の原因は楽天サービスの複雑さ?

なぜこのような誤解が生じるのか、考えられる原因の1つとして、楽天のサービスが複雑であることの影響は少なからずあるように感じます。

たとえば、コード決済の楽天ペイと電子マネーの楽天Edyは歴史的経緯から別のサービスとして普及しています。それぞれの残高は相互に交換できるようになったといえ、基本的には別物です。

レジでよく見かける決済サービスのロゴ。楽天は電子マネーとコード決済の両方を提供している(筆者撮影)
レジでよく見かける決済サービスのロゴ。楽天は電子マネーとコード決済の両方を提供している(筆者撮影)

また利用者の幅も広く、スマホですべてを完結したいという人もいれば、スマホを持たない人、スマホを決済に使いたくないという人も一定数存在します。

そのため、支払い手段をアプリに統一するのは現実的ではなく、それぞれの利用者層に向けてサービスを提供していく必要があります。そういう意味ではプラスチックカードも、楽天経済圏との接点として引き続き重要な存在といえます。

楽天ポイントカード、楽天Edyの一体型カード(筆者撮影)
楽天ポイントカード、楽天Edyの一体型カード(筆者撮影)

一方、経済圏争いが激化する中で、消費者がその中身を理解するのに使える時間が限られていることもたしかです。どうしても複雑になりがちなサービスをいかに分かりやすく説明していくか、さらに工夫が求められることになりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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