北朝鮮がミサイル発射。しかし公式発表は無し
9月25日午前6時52分ごろ、北朝鮮が内陸部から東の日本海上に向けて弾道ミサイルを1発発射しました。しかし翌日になっても北朝鮮側は公式発表を行っていません。
北朝鮮が公式発表でミサイル発射を伝えたのは4月17日の新型小型弾道ミサイル(名称不明)が最後で、今年はこれ以降はミサイルを発射しても説明を何も行っていません。
関連:北朝鮮が初登場の新型ミサイルを公開。小型の短距離弾道ミサイル(2022年4月17日)
9月25日発射の北朝鮮ミサイルの観測された飛行データは以下の通りです。発射推定地点は平安北道の泰川(テチョン)付近で、ここには2000m滑走路の飛行場があるのでおそらくは移動発射機が展開していたのでしょう。
- 自衛隊の観測・・・水平距離650km・最大高度50km
- 韓国軍の観測・・・水平距離600km・最大高度60km・速度マッハ5
なお自衛隊は25日発射当日は推定飛距離400km(ただし通常弾道軌道の場合)と発表していましたが、26日になって推定飛距離650km(変則軌道)と追加発表を行っています。
ミサイルの最大高度は低く、浅い弾道でそのまま飛行を続けていたら400kmの飛距離でしたが、弾道後半でプルアップ(機首上げ)を行って再上昇・滑空を行って+250km飛距離を伸ばしたと見られます。北朝鮮の泰川から600~650kmは韓国の釜山までの距離に近く、9月23日から釜山に入港していたアメリカ海軍の空母レーガンを「方向を変えれば届くのだぞ」と威嚇する意図があったのかもしれません。
今回の北朝鮮ミサイルの飛行性能は、過去の北朝鮮の発射ミサイルから性能が近いものを比べるとKN-23短距離弾道ミサイル(ロシア製イスカンデルを北朝鮮が模倣したもの)が該当します。実際の最大速度は観測されたマッハ5よりやや速かった可能性があります。
2022年10月10日追記:9月25日発射ミサイルはダム湖からのSLBM水中発射と判明 ※驚くべきことが発覚しています。
2022年の北朝鮮ミサイル発射一覧(9月25日まで)
- 1月05日朝 1号 「極超音速ミサイル」
- 1月11日朝 2号 「極超音速ミサイル」
- 1月14日夕 3、4号 KN-23鉄道型
- 1月17日朝 5、6号 KN-24
- 1月25日朝 7、8号 巡航ミサイル
- 1月27日朝 9、10号 KN-23車両型
- 1月30日朝 11号 火星12
- 2月27日朝 12号 火星17(予備実験)
- 3月05日朝 13号 火星17(予備実験)
- 3月16日朝 失敗 火星17(推定)
- 3月20日朝 カウントせず(多連装ロケット4発)
- 3月24日夕 14号 火星15?(火星17の偽装説)
- 4月16日夕 15、16号 新型小型SRBM
- 5月04日昼 17号 火星17(予備実験?)
- 5月07日昼 18号 イスカンデルSLBM型?
- 5月12日夕 19、20、21号 KN-25?
- 5月25日朝 22号、失敗、23号 火星17予備実験?と極超音速兵器?
- 6月05日朝 24、25、26、27、28、29、30、31号 KN-23・KN-24・KN-25・新型小型SRBM?
- 9月25日朝 32号 KN-23?
※失敗2発を含め18回の発射機会で34発のミサイル発射となります。予備実験を含め発射成功は32発です。
※KN-23(イスカンデル型)、KN-24(ATACMS型)、KN-25(超大型放射砲、放射砲は多連装ロケットの意味)、これらは短距離弾道ミサイル(SRBM)。KNナンバーはアメリカ軍のコードネーム。
※600mm超大型ロケット弾(KN-25)は並みのSRBM(短距離弾道ミサイル)より巨大なので、SRBM扱いされます。
※火星12は中距離弾道ミサイル(IRBM)、火星15と火星17は大陸間弾道ミサイル(ICBM)、SLBMは潜水艦発射弾道ミサイルのこと。
※北朝鮮が発射を報告したのは4月16日発射の新型小型SRBMまでで(翌17日公表)、それ以降は北朝鮮自身による発射報告はありません。