北朝鮮がダム湖からSLBMを水中発射していたことが判明
10月10日、北朝鮮が9月25日~10月9日に12発を発射したミサイルを纏めて公式報告しました。発表写真にはKN-23短距離弾道ミサイルのSLBM型が含まれています。驚くべきことに発射場所は内陸のダム湖からでした。
発表内容から9月25日~10月9日のミサイル発射を分析し直すと以下のようになります。
- 9月25日朝 泰川 KN-23・SLBM型×1 ※ダム湖から水中発射 ※核弾頭
- 9月28日夕 順安 KN-23拡大型×2 ※敵飛行場への攻撃訓練 ※核弾頭
- 9月29日夜 順川 KN-23×2 ※空中炸裂、直接精密、散布弾の攻撃訓練
- 10月1日朝 順安 KN-23×2 ※空中炸裂、直接精密、散布弾の攻撃訓練
- 10月4日朝 舞坪里 火星12×1 ※「敵」への警告目的の発射 ※改良型
- 10月6日朝 三石 KN-23×1、KN-25×1 ※敵指揮所への攻撃訓練
- 10月9日夜 文川 KN-25×2 ※韓国主要港湾への攻撃訓練
9月25日朝に平安北道の泰川の付近から発射されたミサイルは、市街地から10kmほど北にある泰川ダム湖(貯水池)からの発射です。公式発表では「我が国の北西部の貯水池水中発射場からの発射」という表現でした。水中にポンツーンを沈めた発射設備を内陸のダム湖に持ち込んでいたのです。
なお北朝鮮の公式発表文をよく読むと、ダム湖の水中発射場は試験発射設備ではなく実戦用の設備である可能性があります。公式発表文には「訓練の目的は戦術核弾頭の搬出および運搬、作戦時の迅速かつ安全な運用…」という表現で、試験発射を匂わせる内容が無く、実戦に即した内容の訓練になっています。これが実戦用の設備だとすると、世界初のダム湖に固定配備されたSLBMになります。
また9月28日発射のミサイルは北朝鮮の公式発表文に「南朝鮮作戦地帯の飛行場を無力化させる目的で行われた戦術核弾頭搭載を模擬した弾道ミサイル発射訓練…」という表現があり、戦術核ミサイル攻撃想定訓練だったことが判明しています。訓練内容は非常に実戦的で、具体的な核攻撃目標が飛行場であるという生々しい内容です。
戦術核弾頭の搭載について言及されていたのは9月25日のKN-23・SLBM型と9月28日のKN-23拡大型のみでした。9月29日と10月1日の発射は各種通常弾頭の発射訓練だった模様です。10月4日の中距離弾道ミサイルによる日本列島越え発射は朝鮮労働党中央軍事委員会の決定による「敵」への警告目的、10月6日の発射は敵指揮所想定目標の射撃訓練、10月9日の発射は韓国の港を想定目標にした射撃訓練でした。
※KN-23はイスカンデル型の短距離弾道ミサイル。
※火星12は中距離弾道ミサイル。今回の公式発表では「新型地対地中長距離弾道ミサイル」という表現でしたが、写真を見る限り以前の火星12と同一の大きさで、弾頭形状などが改良されている可能性があります。
※KN-25は超大型ロケット。短距離弾道ミサイル並みに巨大。
※KN-23系は弾道ミサイルとしては低く飛び滑空可能な機動式弾道ミサイル。火星12とKN-25は通常の弾道で飛行する。
※空中炸裂弾・・・エアバースト弾。空中で炸裂することで破片を広範囲に散布する。
※直接精密弾・・・精密誘導弾。GPS、グロナス、北斗などを利用したミサイル誘導と推定。
※散布弾・・・クラスター弾頭の可能性が高い。
9月25日朝 発射地点:泰川ダム湖 KN-23・SLBM型
Google地図座標(40.002844, 125.490744)
写真左下の物体はSLBMの底部カバー。底部カバーの白い長い部品はSLBMの折り畳み操舵翼を水中で保護していた覆い部分。また操舵翼の覆い部分同士の中間に、グリッドフィン(格子状の翼)の水中安定翼らしき部品も小さくですが確認できます。
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9月28日夕 順安 KN-23拡大型
過去に発表されているKN-23拡大型のミサイル弾体の塗装パターンと一致しています。形状も同一でしょう。
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10月4日朝 舞坪里 火星12中距離弾道ミサイル
北朝鮮の公式発表は「新型地対地中長距離弾道ミサイル」。大きさは従来の火星12と同一で液体燃料ロケットである点も同じ。ただし、
- 弾頭形状が若干異なっている。
- 姿勢制御用のバーニア・スラスターの噴射炎が見当たらない。
これらの点から弾頭とロケットエンジンの改良がおこなわれている可能性があります。あるいは北朝鮮側が情報攪乱目的で発表画像をフォトショップで加工している疑いもあります。
高精細の発表画像を拡大すると、噴射ノズルの周辺の構造から姿勢制御をどうやっているのかよく分かりません。バーニア・スラスターもジェットベーンも操舵翼も無いのです。推力偏向ノズルの機構も見当たりません。
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