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『THE SECOND』『UNDER5 AWARD』などのお笑い賞レースが続々と生まれている理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家
(提供:イメージマート)

5月20日に放送された、結成16年以上のベテラン漫才師を対象にした『THE SECOND~漫才トーナメント~』(フジテレビ)は、大成功を収めた。実力派漫才師のギャロップが見事に優勝を飾り、マシンガンズ、囲碁将棋、スピードワゴンなどのファイナリストも大会を盛り上げた。観客による審査の評判も上々だった。

新しいお笑い賞レースは『THE SECOND』だけではない。3月1日には吉本興業が若手芸人を対象とした新たなお笑い賞レース『UNDER5 AWARD 2023』を立ち上げることを発表した。基本的な参加資格は「2023年4月1日時点で芸歴5年目以内の芸人」であること。プロ・アマ、所属事務所の有無を問わず、誰でも参加することができる。

札幌・名古屋・福岡・沖縄などの全国各地でエリア予選があり、予選を勝ち抜いた芸人が決勝戦に駒を進める。決勝戦は6月18日に東京のルミネtheよしもとで行われ、ニューヨークがMCを務める。優勝者には賞金100万円が授与される。

今のところ、決勝戦の模様は吉本興業のオンラインチケットサイト「FANY Online Ticket」で無料配信されることが告知されているが、テレビ番組として放送される予定はなさそうだ。しかし、吉本興業以外の事務所の芸人の参加も認められている上に、予選が何段階もあって大会の規模は大きいため、それなりに存在感のある賞レースになりそうだ。

ニューヨークの屋敷裕政は『UNDER5 AWARD 2023』について「普段めっちゃおもしろい漫才やコントをやっとるのに、一発芸系の芸人に押されてなかなかテレビとかに引っかかってない芸人たちに暴れてほしいです!」とコメントしている。吉本興業がこの賞レースを新たに立ち上げた理由は、まさにその点にあると思われる。

芸人の数は年々増えていて、その生存競争は激しくなる一方だ。特に、キャリアの浅い若手芸人はなかなかチャンスに恵まれなかったりする。若いうちからテレビに出られる芸人の多くは、インパクトの強い一発芸や経歴やキャラクターを持っている人である。そうではない大半の芸人は苦戦を強いられる。

たとえネタが面白くても、それだけではなかなか見つけてもらえないようなところがある。そんな中で立ち上げられた「芸歴5年目以内」をターゲットにした賞レースというのは、明らかにそういった埋もれた才能を発掘するためのものだろう。

特に最近は、学生芸人、社会人芸人など、大学生や社会人でありながら舞台に立って活動するアマチュア芸人も注目されてきている。学生芸人からプロになってすぐに華々しい活躍をしているラランド、ダウ90000のような例もある。そういう即戦力の人材を見つけたいという意図もあるのではないか。

もともと吉本興業が主催する賞レースはたくさんあったのだが、近年ではそれがさらに増えつつある。なぜ吉本興業はお笑い賞レースを次々に立ち上げているのか。

その理由は、それがお笑い界全体を活性化させることにつながるからだろう。吉本興業は数多くの劇場と多数の芸人を擁するお笑い界のリーディングカンパニーである。芸歴制限などでさまざまな形の区切りを設けて、芸人同士をどんどん競わせることで、個々の芸人のレベルも上がっていくし、そこから新たなスターが生まれたりする。その結果、お笑い界がさらに盛り上がっていくことになる。これは吉本興業というトップ企業の使命のようなものだ。

2001年に始まった『M-1グランプリ』が商業的に大成功を収めたことで、お笑い賞レース文化が花開いた。プロ・アマ問わず、芸歴も問わず、そこからさまざまなタイプの新星がこれからも輩出されていくだろう。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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