PayPayの主戦場は「クレカ」に移るのか
スマホ決済「PayPay」の登録者は5700万人を突破し、ちょっとした「改悪」にも大きな反響が巻き起こるなど、存在感を増しています。
その親会社であるソフトバンクやZホールディングスの決算資料からは、PayPayが次に目指す姿が浮かんできました。
決済取扱高の気になる変化
PayPayに関する重要な数字の1つに、どれくらいの金額が使われたかを示す「決済取扱高」(GMV)があります。
年度ごとに見ていくと、2022年度(2022年4月1日〜2023年3月31日)もしっかり伸びていることが分かります。
(PayPayの決済取扱高には、PayPayカードを利用した「あと払い」と「PayPay残高チャージ」の数字も含まれています)
しかし四半期別に見ると、気になる点があります。2022年度第4四半期(2023年1-3月期)は2.19兆円と、前の四半期の2.22兆円から少し下がっているのです。
何が起きたのかPayPayに確認してみたところ、「1-3月期はお正月休みや2月の日数が少ないなど、季節的要因がある」(広報)といいます。
そのため、通常であれば10-12月期(上のグラフではQ3)が大きくなるのですが、これまで1-3月期には大規模な「超PayPay祭」によるブーストがかかっていました。
しかし今年は販促コスト削減のためにポイント還元を絞り込んだことでYahoo!ショッピングなどの売上が低迷。PayPayの決済取扱高にも影響したようです。
なお、PayPayの登録者数や決済回数は1-3月期にも伸びており、PayPayの拡大自体は続いているといえそうです。
もう1つ注目したいのは、「連結」の決済取扱高です。PayPay(単体)に加えて、100%子会社となったPayPayカードの数字を足すことで、「10兆円」を突破したとアピールしています。
(決算資料によってはPayPayカードの決済取扱高は3.6兆円となっていますが、このグラフでは重複を避けるため「PayPayあと払い」と「PayPay残高チャージ」を除外して2.3兆円となっています)
ソフトバンクの決算説明会資料では、2021年度と2022年度について、連結後の数字を示しています。
PayPayカードの発行枚数は1004万枚と、こちらも大台を突破しています。しかしPayPayのユーザーが5700万人いることを考えると、単純計算で4696万人がまだPayPayカードを持っていません。
もちろん、PayPay登録者の全員が熱心な利用者ではありませんし、銀行からの残高チャージだけでも十分便利に使えることはたしかです。
しかし楽天カードの発行枚数2863万枚(2023年3月末時点)、ショッピング取扱高18.2兆円(2022年度)という数字に比べると、まだまだPayPayカードには伸びしろがあるように思います。
PayPayカードに足りないもの
日本のキャッシュレス決済比率では、コード決済が伸びているとはいえ、大部分を占めるのは依然としてクレジットカードです。今後はPayPayにとってもクレカが主戦場になりそうです。
その一環なのか、8月からPayPayアプリで他社クレカを利用不可とする変更が話題になりました。PayPay側は「(他社クレカの)ユーザー数、利用額はかなり少ない」(広報)と説明しています。
このことから、他社クレカを塞いでもPayPayカードの発行が急増するとは考えにくく、本質的にはPayPayカード自体の魅力を高めていく必要がありそうです。
クレジットカードによっては実店舗で5%還元があったり、100万円利用などの「修行」で特典を得られるなど、なにかと使いたくなる要素が盛り込まれています。
また、PayPayもポイントから投資への誘導は進めていますが、新しいNISAを見据えたカード投信積立の囲い込み競争では出遅れているのが現状です。
PayPayに紐付けて使うだけでなく、日常的にPayPayカードを持ち歩き、メインのクレカとして使いたくなるような施策に期待したいところです。