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PayPay 8月から「他社クレカ不可」に悲鳴の声 その理由は?

山口健太ITジャーナリスト
PayPayアプリに他社クレカを設定した様子(筆者撮影)

スマホ決済「PayPay」は、支払い時に選べる決済手段として、8月1日から他社クレジットカードの利用ができなくなることを発表しました。

この発表を受け、SNS上では利用者から悲鳴の声が上がっています。なぜこのような制限をかけるのか、運営会社に聞いてみました。

他社クレカは登録・利用不可に

PayPayの支払い方法としては、銀行から残高としてチャージできる「PayPayマネー」など複数の手段がありますが、クレジットカードを紐付けて使うことも可能でした。

PayPayアプリでは支払い方法を選べる(アプリ画面より、筆者作成)
PayPayアプリでは支払い方法を選べる(アプリ画面より、筆者作成)

PayPayのアプリでコードを読み取って(あるいはお店側の端末から読み取ってもらって)支払うことに変わりはありませんが、実際にはクレジットカード決済になるわけです。

しかし今回の発表により、8月1日からは他社クレカに非対応となり、PayPayカードが発行する「PayPayカード」「PayPayカード ゴールド」のみ使えるようになります。

これまでは、PayPayカードならポイント還元があるのに対し、他社クレカではポイント還元がないという差別化がされていました。今回はその差別化が強化された形になります。

ところで、なぜポイント還元がないのに他社クレジットカードを使っている人がいるのでしょうか。理由としては、そのほうがトータルの還元率が高いとか、管理がラクといったものがあります。

たとえば筆者の場合、プリペイドカードの「MIXI M」を紐付けています。PayPayの支払いに使ってもポイント還元はありませんが、MIXI Mへのチャージ手段によってはポイントや年会費無料などの特典を得られます。

あるいはd払いや楽天ペイなど、複数のアプリに同じカードを紐付けておけば、一元管理することができました。ポイント還元にこだわらず、自分が使いたいカードを使えることに魅力を感じていた人もいると考えられます。

d払い(左)や楽天ペイ(右)に同じカードを紐付けることで、一元管理ができていた(アプリ画面より、筆者作成)
d払い(左)や楽天ペイ(右)に同じカードを紐付けることで、一元管理ができていた(アプリ画面より、筆者作成)

これとは別に、ソフトバンクやワイモバイルの契約者が使える「ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払い」についても、8月から変更があります。

PayPayへのチャージにまとめて支払いを利用すると、毎月の携帯料金と合算で請求されるため、携帯料金を支払うクレカでポイントを得ることができました。

しかし8月1日以降は、毎月初回のチャージのみが手数料無料となり、2回目以降は税込2.5%の手数料がかかることになります。

毎月1回は無料でチャージできるので致命的な変更ではないものの、今後は多めにチャージしておき、毎月減った分を足しながら残高を維持するといった使い方になりそうです。

2つの変更に至った経緯について、PayPay広報部は「社内で協議し総合的に検討した結果、今回の発表をさせていただきました。PayPayではPayPayカードとの連携を強化しており、『PayPayあと払い』をご利用いただければ、残高チャージ不要で、PayPayポイントもより多く付与され、PayPayで当月に利用した金額を翌月にまとめて支払えます」と説明しています。

デビットカード、プリペイドカードも同様に使えなくなるとのことから、金融包摂の点からも利用者に厳しい変更といえますが、PayPayカードを持たない人向けには「銀行口座からのチャージやセブン銀行、ローソン銀行からの現金でのチャージなどをご利用いただければと思います」(PayPay広報)と案内しています。

PayPayカードに誘導したいのは分かるが……

PayPayはこれまで赤字覚悟でユーザーを獲得してきたこともあり、いよいよそれを「回収」する段階に入ったのではないかという見方があるようです。

PayPay側は他社クレカを使われた場合、決済手数料を負担していたと考えられます。その上で、利用スタイルによってはPayPayカードよりも他社クレカのほうがおトクだったり、便利だったりする場合があるというのは「不都合な真実」だったといえます。

それを是正し、本来あるべき姿に戻ろうとしている印象はあります。ただ、こういう場合にはPayPayカード自体の魅力を高めることで、PayPay利用者が自然とPayPayカードを選ぶような施策を期待したかったところです。

そういう意味では、今回の変更は他社クレカを使えなくすることで利用者を追い立てる形になっており、これがユーザーの心理にどのような影響を与えるのか気になるところです。

追記:

6月20日、ソフトバンクの株主総会に登壇した宮川潤一社長は、「他社クレカ利用について、継続してほしいとの声が複数寄せられている。8月以降の停止については延期も選択肢に検討が始まったとPayPayからは聞いている」と発言。今後、正式発表がありそうです。

追記:

6月22日、PayPayは他社クレカの利用ができなくなる日を2023年8月1日から「2025年1月」に見直すことを正式発表しました。新規登録の停止日も見直すとしています。

一部クレジットカードの新規登録および利用停止の見直しについて - PayPayからのお知らせ

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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