小栗旬さんやローラさんの投票呼びかけは、「若者の選挙離れ」を食い止めることができるか
「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」という動画が公開され、ツイッターを中心に話題になっています。
この動画は、小栗旬さんや渡辺謙さん、ローラさんに秋元才加さんなど、錚々たる著名人が参加して、投票を呼びかける動画になっており、賛同した他の著名人や著名人のファンを中心に拡がりを見せているようです。
参考:「私も投票します」俳優やミュージシャンが動画で宣言した。その理由は
結果的に、記事執筆時点でYouTubeの動画は25万を突破、ツイッター側に投稿されたGIF動画はすでに4万近いリツイートを集めています。
もちろん、日本の有権者の数は1億人を超えていますから、動画の再生数の25万を多いとみるか少ないと見るかは、人によってかなり違うと思います。
ただ、個人的に注目したいのは、こうした著名人による選挙を促す活動が日本の選挙の雰囲気に一石を投じる可能性です。
「広告でも政府の放送でもなく」
従来、著名人やタレントが政治的な発言を行うことは日本においてはタブー視されてきた歴史がありますが、ここまで錚々たるメンバーが自主的に投票を呼びかけるプロジェクトというのは画期的と言えるでしょう。
特に印象的なのは動画のオープニング。
「これは広告でも政府の放送でもなく」という二階堂ふみさんの台詞から始まるように、これまでこうした投票を呼びかける動画というのは、基本的に政府広報や政党が作成しているイメージでした。
それが、この「VOICE PROJECT」は、あくまで発起人である映画監督の関根光才さんやプロデューサーの菅原直太さん、大越毅彦さんが中心になり、政党に関わらない自主制作プロジェクトとして企画されたというのが興味深いポイントです。
海外では著名人が支持政党を明確にするケースも
海外においては、こうした著名人による発信が選挙に大きな影響を与えることが良く知られており、特にアメリカでは大統領選挙の際に支持政党を明確にする著名人が増えています。
最も有名な事例は、若者を中心に多大な影響力を持つテイラースウィフトさんが、2018年から政治的姿勢を公にしたことでしょう。
前回の大統領選挙でも、テイラースウィフトさんが、はじめて政治広告に自身の楽曲の使用許可を出したことは大きな話題になりました。
参考:大統領選のアメリカを駆け抜けたテイラー・スウィフトの2020年
メディアも著名人も政治的姿勢を明確にすることが多いアメリカに対し、日本においては、マスメディアも芸能人も政治的には中立を求められることが基本であるため、著名人が政治的話題に言及すること自体もまだまだ批判されることが多いのが現状ではあります。
そんな中で、今回14人の著名人がリスクを負ってでも投票を促す動画を出したということは、今後の日本の著名人の発言や姿勢にも一石を投じることになると思います。
実際に14人以外の様々な著名人も、今回の動画をリツイートしたり、自分なりの意見を表明し始めているようです。
20代の投票率は60代の半分以下という現状
今後、特に注目されるのは、若年層の投票率への影響でしょう。
日本の若い世代の投票率の低さは、以前から指摘され続けている問題です。
昭和40年代には60%台だった20代の投票率は、平成に入って30%台に低下。
一時的に上がったものの、その後前々回の衆議院選挙で最低記録を更新しています。
また、30代の投票率も前回前々回の衆議院選挙では50%を割り込んでしまいました。
60代の投票率が20代の2倍近くあることを見れば、選挙で選ばれる立場にある政治家が、どちらの世代の声を重視するかは火を見るより明らかです。
こうした問題を改善するために、これまでも様々な活動がネット上でも展開されてきました。
ただ、これまでのところ、それほど大きなインパクトを与える結果にはつながっていなかったのが現状です。
若者の投票率をあげることはできるか
しかし、今回の「VOICE PROJECT」は、視聴率的も好調なドラマ「日本沈没」の主演を務める小栗旬さんや、SNSでの影響力の高さでもお馴染みのローラさんをはじめ、渡辺謙さんや菅田将暉さん、橋本環奈さんなど現役の第一線で活躍するメンバーが堂々と発信をしており、様々な層に影響があることが期待されます。
前述のテイラースウィフトさんがはじめて2018年に投票を呼びかけた際には、テネシー州で前回の中間選挙の3倍の人が期日前投票を済ませたという話もあるほど。
参考:テイラー・スウィフトの影響力は絶大! アメリカ中間選挙の期日前投票する人が大幅増加
日本でも類似のインパクトが引き起こされる可能性があるわけです。
実際、ローラさんがインスタグラムにアップしている動画は、オフィシャル動画の倍以上である60万回以上再生されており、著名人個人のファンには、それぞれの著名人の個別のメッセージの方が届く可能性も見えています。
さらに今回の衆議院選挙では、ツイッターと全国の新聞やテレビ、インターネットメディアなど20社が共同で「#私たちの選挙」「#私たちの一票」というキャンペーンを展開することも発表されています。
参考:#私たちの選挙 ツイッターと報道機関20社で衆院選キャンペーン
両者とも目指しているのは選挙への興味を盛り上げることのようですから、今後こうした個別の活動がつながって、さらなる大きな活動に拡がる可能性もあるでしょう。
いずれにしても、今回の「VOICE PROJECT」の投じた一石が、この動画1つにとどまらず、12人以外の著名人の賛同を得る形で拡がれば、日本でも同様に若い世代の投票率向上につながる可能性は十分あるように感じます。
総選挙の投票日までもう2週間を切りました。
著名人による「#わたしも投票します」というメッセージが、どういう拡がりを見せるのか注目したいと思います。