日本の統治機構は奇々怪々でぐちゃぐちゃなり
フーテン老人世直し録(362)
卯月某日
奇々怪々なことが起きた。民主主義国家ではありえないことがまた一つ明らかにされた。2004年から06年までの自衛隊のイラク派遣に関する日報が今頃になって「発見」されたのである。
これまで「森友疑惑」を巡る財務省の公文書改ざんを、あるはずがない「前代未聞の出来事」と書いてきたが、日本の統治機構の「情報隠蔽」はいつどこにでもある「日常的な出来事」のようだ。
権力機構が情報を日常的に隠蔽する国は民主主義国家ではない。その現実が国民に突きつけられているのだが、それにしてもなぜ今「ねつ造」「改ざん」「隠蔽」が次々に明るみに出るのだろうか。
第一次安倍政権を痛撃したのは社会保険庁の「消えた年金記録」である。国民生活に関わるデータ管理のずさんさが明るみに出て、それが民主党への政権交代の原動力になる。なぜ明るみに出たかについては安倍政権の「社会保険庁改革」に対する「自爆テロ」との見方がある。
安倍政権は社会保険庁を非公務員型の日本年金機構に変えようとしたが、非公務員になることを望まない勢力がいずれ明るみに出る「消えた年金記録」を安倍政権時にリークしたというのである。
この「消えた年金」に加え、閣僚の不祥事と小泉構造改革が生み出した格差拡大の痛みが参議院選挙で「国民の生活が第一」を掲げた小沢民主党を大勝させる。安倍総理は政権にしがみつこうとするが、当時の小池防衛大臣と二階国対委員長が表と裏の工作で退陣を余儀なくさせた。
第二次政権を発足させるにあたり安倍総理は第一次政権の反省と、その後の民主党政権の失敗を繰り返さないことを胸に誓ったはずである。それが米国の言うがままになることと、霞が関の反乱を許さない体制を作らせた。
経産省出身の今井尚哉秘書官を司令塔に菅官房長官と警察庁出身の杉田官房副長官が霞が関ににらみを利かせ、2014年には内閣人事局を作って幹部クラスの官僚の人事権を掌握した。
人事権の掌握は直ちに内閣法制局長官人事に現れる。内閣法制局のそれまでの見解を真逆にするため外務省の小松駐仏大使を法制局長官に起用する異例の人事を行い、米国が望む集団的自衛権行使容認の解釈改憲を可能にする。
第一次政権ではブッシュ・小泉の個人的信頼関係に入り込む隙はなく、米国大統領と親密な関係を築くことが出来なかった、それを跳ね返すように安倍総理は集団的自衛権行使容認を土産に米国議会で「ネギ背負った鴨」さながらの演説を行い、また「絶対反対」していたTPPにも参加を表明してオバマ大統領の歓心を買った。
この「ネギ鴨」演出の背後に今井秘書官がおり、その演出はロシアにも向けられる。北方領土を巡るプーチン大統領との交渉は外務省でなく経産省が主導権を握り、北方領土における共同経済活動が前面に出て、「4島返還」どころか「2島返還」にもならない「2島引き渡し」に向かっている。
「2島引き渡し」とは共同経済活動の見返りにロシアの領土である歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すシナリオで、北方4島を「日本固有の領土」としてきた外務省は認める事ができないが、官邸の司令塔である今井秘書官の前に沈黙を強いられている。
そして今井秘書官は「森友疑惑」のキーマンでもある。安倍昭恵夫人に経産省の官僚3人を秘書官として配置し夫人の活動を支えた。これまでに例のない総理夫人に対する手厚い扱いで、それに乗って昭恵夫人は思うままに行動した。
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