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(7) 対中国・多数決・法の支配:欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル演説全翻訳

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
演説中のユンケル委員長(おそらくファラージ議員に言っている場面)(写真:ロイター/アフロ)

この記事は、(1)(2)(3)(4)(5)(6)の続きです。

欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル欧州委員会委員長の演説 全文翻訳(1)

(2) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル欧州委員会委員長の演説 全文翻訳:一つのヨーロッパ

(3) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長の演説 全文翻訳:難民問題

(4) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全文翻訳:アフリカとの未来

(5)ブレグジット問題:欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全文翻訳 ※筆者のミスにより、このブレグジットの記事に一部でアクセスができない状況になっていました。このリンクで開けます。ご迷惑とご不便をおかけして申し訳ありませんでした。

(6) 日EU協定とユーロ通貨:欧州連合「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全翻訳

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<将来を見据えた、説得力ある全体像> (続き)

シビウへの道のりについて話を続けます。私は、私たちが外交政策を強化することに関して、具体的な目に見える進歩を実現してほしいと望んでいます。私たちは、外交政策では、ただ一つの声で話す能力を強化しなくてはなりません。

ジュネーブの国連人権理事会で、欧州が沈黙するのにとどめておく、中国での人権侵害を非難するのに大声で声高く話すことができないのは普通ではありません。これは、加盟国の一国が、決定をブロックすることができた(反対した)ためです。<場内より拍手>

(訳注:2017年6月、国連人権理事会の会合の機会において、ギリシャ一国の反対により、EUとして中国の人権問題に対する非難声明が出せなかったことを言っていると思われる)。

ベラルーシに課す武器の禁輸の更新や、ベネズエラに対する制裁について、ヨーロッパが人質になっているのは、普通ではありません。全会一致のせいです。(訳注:公式原稿にはあるが、言わなかった。「他にも例を挙げることができます」とだけ言った)。

このため、今にち欧州委員会は、対外関係のいくつかの分野で、特定多数決投票に移行することを提案しているのです。<拍手> 私は、外交政策において特定多数決の投票に移行するべきと話した昨年のメッセージを繰り返します。すべての分野ではありません。特定の分野、人権や民間(文民)のミッションなどです(訳注:ここは言わなかった)。

条約は現在、欧州理事会がこの方向に沿って決定を下すことを可能にしています。私はリスボン条約の「橋渡し条項」に命を与える時が来たと判断しています。 <拍手> 橋渡し条項は、特定多数決によって決定することへの道を開く、リスボン条約の「忘れられた美しさ」です。

さらに、財政問題に関連するいくつかの事柄についても、同じように特定多数決によって決定できるようにするべきです。<拍手>

(訳注1:特定多数決とは、EUの閣僚理事会の独特のやり方。単純に28カ国で28票ではなく、人口を基礎とした上で調整されたシステムの多数決。例えば、最も人口の多いドイツの大臣は29票分もつことになっていて、最も人口の少ないマルタの大臣は、マルタの人口はドイツの約200分の1ではあるが、3票分もつことになっている。これで投票を行う)。

(訳注2:「橋渡し条項」とはEU条約48条7項のことである。ただし、軍事や安全保障に関わる事柄では、この条項は採用されないことになっている)

付け加えますと、意見の不一致を議論する我々の方法がますます強くなっています。政府間や機関間の論争のやりとりが増えてきています。しかし、それは、ヨーロッパの建設を前進させる論争的なものではなく、傷つけるものであることが多いのです。

私が心配しているのは、政治勢力がお互いに論議している際の残念な調子(音色)だけではなく、特定の人々が扱うやり方なのです。なぜなら彼らは、すべての議論、メディアやジャーナリストを、終わらせたいからです。ヨーロッパは、報道の自由に疑問を差し挟む余地のない場所にとどまっていなければなりません。<拍手> 報道の自由なくしては、民主主義はありません。 <拍手> 

(拍手の際中、ユンケル氏は水を飲み「拍手してくれてありがとう。これで水が飲めるよ」というと、場内から笑いが起こる。にっこり笑い、ちょっとの間があったのち、ファラージ議員の方角に右手を伸ばして「Try again」と言った。他の議員が何か言ったのだろうか)。

あまりにも多くのジャーナリストが脅かされ、攻撃され、時には殺されることすらあります。私たちの民主主義の重要な主体でもあるジャーナリストを、私たちは一層守らなくてはなりません。

一般的な方法として、みなさん、私たちは妥協という美徳を再び見出すべきです。妥協案を探ることは、弱さではなく、私たちの信念を犠牲にすることや、他者の視点を尊重し、自由な議論を犠牲にすることを意味するものではありません。

欧州委員会は、法の支配に対するすべての攻撃に反対します。我々は、一部の加盟国における議論の発達について懸念しています。第7条は、法の支配(法治国家)が危険にさらされた場合、適用されるべきなのです。

ティマーマンス筆頭副委員長は、法の支配を守るために、卓越した、でも孤独なことが多い仕事をしています。彼は私の個人的な堅固な支持(防御)と、委員会全体の支持(防御)を受けています。

私たちが妥協してはならない点が1つあります。欧州司法裁判所の判決を尊重し、執行しなければなりません。それは必要不可欠です。欧州連合は法の共同体です。規則の尊重と裁判所判決の尊重は、選択肢(オプション)ではなく義務なのです。

続く

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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