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(6) 日EU協定とユーロ通貨:欧州連合「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全翻訳

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
演説をするジャン=クロード・ユンケル委員長(写真:ロイター/アフロ)

この記事は、(1)(2)(3)(4)(5)の続きです。

欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル欧州委員会委員長の演説 全文翻訳(1)

(2) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル欧州委員会委員長の演説 全文翻訳:一つのヨーロッパ

(3) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長の演説 全文翻訳:難民問題

(4) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全文翻訳:アフリカとの未来

ブレグジット問題(5):欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全文翻訳 ※筆者のミスにより、このブレグジットの記事に一部でアクセスができない状況になっていました。このリンクで開けます。ご迷惑とご不便をおかけして申し訳ありませんでした。

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<将来を見据えた、説得力ある全体像>

議員の皆さま、

今から欧州議会選挙までに、そして今から2019年5月9日にルーマニアのシビウで開催される加盟国首脳会議(サミット)までに、まだ多くのなすべき仕事があります。

(訳注:次の欧州議会選挙は2019年5月23~26日)。

シビウでは、私たちは本質的に、私たちの連合の最終目的で同じ概念を共有するのだということを、同胞市民に説得しなければなりません。

ヨーロッパの人々は不確実なことや、最終目的の散乱は、好きではありません。彼らは明確に表されることが好きです。大体であるとか、半分の尺度とかは嫌いなのです。

シビウ・サミットを見据えて、ヨーロッパの議題(アジェンダ)の成功が全面的に賭けられているのです。サミットは、ブレグジット(英国のEU離脱)から6週間後、そして欧州議会選挙のたった2週間前に開催されます。

今からシビウ・サミットまでに、我々は経済と同様に地政学的理由から、欧州連合と日本との間のパートナーシップ協定を批准しなければなりません。

今からシビウ・サミットまでに、2020年以降の欧州連合の予算について、原則的な合意を交渉するべきです。

もし、若いヨーロッパ人に最大限に提供された可能性を活用する機会を、さらなる資金投入の方法をつくるのに価するエラスムス・プログラムによって与えたいと我々が望むのならーーそれはしなければならないのですがーー欧州議会選挙の前に、この予算枠を、その他の予算枠と同じように、我々は決定しなければなりません。

もし、私たちの研究者やスタートアップス(新興企業)にもっと多くの機会を提供し、資(金)源の不足のために研究者のポストの数を大幅に減らすのを避けることを我々が望むのなら、欧州議会選挙の前に決定しなければなりません。

もし、私たちを武装化せずに、防衛費を20倍に増やすことを我々が望むのなら、迅速に決定する必要があります。'''

もし、アフリカに23%投資を増やすことを我々が望むのなら、迅速に決定する必要があります。

今から来年までには、我々はユーロの国際的役割をさらに発展させる必要もあります。わずか20年しか存在していないのに、今までの行程でいつも悲観論者の声があったにも関わらず、ユーロはすでに豊かな歴史を築いてきました。

ユーロは世界で2番目に最も多く使われている通貨になりました。60カ国が、ユーロを使っているか、自国通貨をなんらかの形でユーロに結びつけています。

しかし、私たちの単一通貨が国際的な場面において完全な役割を果たすことができるように、我々はもっと多くのことをしなければなりません。

最近の出来事は、私たちの経済通貨同盟を深化させて、深み(厚み)のある流動性の高い資本市場を構築する必要性を浮き彫りにしています。この分野における委員会の数多くの提案は、この議会と理事会が採択するのを待っているだけの状態です。

しかし、我々はさらに押し進めることができますし、そうする必要があります。ヨーロッパは、たった2%しかエネルギーを米国から輸入していないのに、エネルギー輸入の支払いの80%、年間3000億ユーロまでもが米ドル建ての請求書になっているのは異常です。ヨーロッパの企業がヨーロッパの飛行機を買うのに、ユーロではなくて米ドルで買うのは、異常です。

このために欧州委員会は、今年度末までに、ユーロの国際的役割を強化するためのイニシアチブを発表する予定です。ユーロは、新しいヨーロッパの主権の積極的な道具(手段)になるべきです。そしてそのために最初にやるべきことは、私たちはそのことから始めたように、私たちの経済通貨同盟を強化して、私たちの家を秩序立てることです。

深化した一つの経済通貨同盟なくしては、ユーロの国際的役割を強化するための信用に足る議論が我々には欠けるでしょう。ヨーロッパとユーロがより強くなるように、我々は経済通貨同盟を完成させなくてはなりません。

続く

(7) 対中国・多数決・法の支配:欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル演説全翻訳

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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