阪神入りの2人の新助っ人が受賞の韓国のゴールデングラブ 実は守備の賞じゃない?DHも金グラブをもらう
2020年シーズンに韓国KBOリーグで大活躍した、メル・ロハス・ジュニア外野手(前KT)とラウル・アルカンタラ投手(前トゥサン)の阪神入りが先月発表になった。
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両選手については契約合意前から多くの日本メディアが取り上げていたが、その中には以下のような記述も見られた。
「ゴールデングラブ賞に輝いた守備力も兼ね備えている」
日本の感覚なら当然の表現なのだが、KBOリーグのゴールデングラブ賞は少し特殊で、守備のみを評価するものではない。日本の複数の記事には「ゴールデングラブ賞(日本のベストナインに該当)」という表記もあったが同じ媒体の中でもゆれがあり、その認識は書き手に委ねられているようだった。
韓国のGG賞選考基準とは?
以下が2020年のKBOリーグ・ゴールデングラブ賞受賞者だ。
投手:ラウル・アルカンタラ(トゥサン)
捕手:ヤン・ウィジ(NC)
一塁手:カン・ベクホ(KT)
二塁手:パク・ミンウ(NC)
三塁手:ファン・ジェギュン(KT)
遊撃手:キム・ハソン(キウム)
外野手:キム・ヒョンス(LG)、メル・ロハス・ジュニア(KT)、イ・ジョンフ(キウム)
指名打者:チェ ヒョンウ(KIA)
その選考基準は投手の場合、規定投球回に到達、または10勝以上、30セーブ、30ホールドのうち、いずれか一つに該当すること。野手は該当のポジションで720イニング(144試合×5イニング)以上出場した選手全員が候補者となる。また指名打者は297打席(規定打席の3分の2)以上で候補資格が得られる。
上記条件を満たしていない場合でも、個人成績の部門別1位の選手は候補者となり、その場合、当該選手が最も多くのイニングを消化したポジションが選考部門となる。
選考は取材記者、カメラマン、中継局のプロデューサー、ディレクター、アナウンサー、解説者がポジション別の候補者の中からそれぞれ総合的に判断しオンラインにて投票。その結果で決定する。
以前は「ベスト9」もあった?
実は韓国にも以前は守備の賞と攻撃の賞が別々に存在していた。今回、韓国のベテラン野球記者、SPOTVのイ・ジェグク氏に説明をお願いした。
「KBOリーグ初年度の1982年と翌83年の2年間は、『ゴールデングラブ賞』と『ベスト10』(指名打者を含む)がありました。『ゴールデングラブ賞』は守備率が選考基準で、『ベスト10』は現在のゴールデングラブ賞同様にポジション別の最高の選手を攻撃、守備、人気、品格など全てを考慮して選んでいました」
しかしリーグ発足3年目からはベスト10はなくなり、ゴールデングラブ賞に統合された。以下、イ・ジェグク氏の説明だ。
「当時は6球団制(現在は10球団)だったので選手も少なく、守備率でゴールデングラブ賞を選ぶと毎年受賞者が同じ顔ぶれになり、またベスト10とほぼ同じ面々が選ばれるということで、一つにまとめられました」
リーグごとに異なる点はある
KBOリーグのゴールデングラブ賞には「指名打者部門」もあり、受賞者が金のグラブを手にするというのも韓国ならではだ。
イ・ジェグク氏は「MLBのシルバースラッガー賞のように『ポジション別に攻撃力の高い選手を選ぶ賞もあるべき』という意見もあります。しかし守備と攻撃の両面を考慮してのゴールデングラブ賞授賞式がKBOリーグでは受け継がれているので、これまでその形で続いています」と説明する。
KBOリーグのゴールデングラブ賞授賞式はとても華やかで、映画祭などのそれを思わせる。記者投票の結果は会場で発表されるので、選手は自分が選ばれるのか知らない状況で出席するというのも特徴だ。
ある選手はゴールデングラブ賞についてこんなことを言っていた。
「自分がもらえると自信がある選手は見ればわかりますよ。蝶ネクタイをしていますから」
日本ではプロ野球選手が蝶ネクタイをするというと、結婚式かファッション関連のイベントや撮影ぐらいでNPBアワードではまず見かけない。しかしKBOリーグのゴールデングラブ賞授賞式では蝶ネクタイをしたフォーマルなコーディネートの選手を毎年3、4人見かける。
2020年のゴールデングラブ賞受賞者ではカン・ベクホ、イ・ジョンフ、チェ・ヒョンウ(上段左から)の3選手が蝶ネクタイ姿だった。
世界の一部の国と地域でのみ盛んなプロ野球。その中でもそれぞれのリーグにはちょっとした違いがある。今回は米、韓、日と渡り歩くロハス、アルカンタラを通して、その違いが以前よりも知られるきっかけとなった。
⇒ 2020年 韓国プロ野球個人成績(ストライク・ゾーン)