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マクロンの解散総選挙の爆弾宣言のあと、フランス政局が革命時のように凄いことになっている

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
お疲れ気味のマクロン大統領。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

やっと欧州議会選挙戦が終わったと思ったら、また選挙。解散総選挙をやるとマクロン大統領が爆弾宣言したからだ。

それはそれはみんな驚いた。当のフランス人だけではなく、ヨーロッパ中で驚いたようだ。

普段なら、選挙後の欧州の全体状況が報道されているはずなのに、それも脇に追いやられ、ウクライナもパレスチナもそっちのけ。

なぜ欧州選挙の結果で、国民議会(衆議院に相当)を解散しなければならないのか。よくわからない。

ドイツ人なんて「マクロンは気が狂ったのか?」と書いたという。

有名な政治週刊誌「 Die Zeit 」のセリフなのだが、「彼は神経を失い、マリーヌ・ルペンに国を譲ろうとしているのか? それともフランス大統領は、極右の台頭に歯止めをかけるという、ここ数年失敗してきたことをあと3週間で達成できると本気で考えているのだろうか」だそうだ。

いや、まったくごもっとも。

当のフランス人も驚き、いまだに飲み込めていない感じだ。でも、飲み込む間もなく、解散総選挙へと政治家たちは猛ダッシュ、そして驚くべきカオスと、激しい議論が繰り広げられている。

解散総選挙の理由は単純らしく、マクロンの党「ルネッサンス」が負けたから。マクロン氏は20−22%ぐらいは取るんじゃないか(つまり前回と大体同じくらい)と言っていたが、大幅に下回ってしまったのだ。これが民主主義だと言えば、まさにそうなのだが。

けげんそうに「なぜ解散?」と聞いたニュースキャスターに、アタル前首相がシンプルに「負けたから」と答えていた。

勝ったのは国民連合(旧国民戦線)という極右。31,4 % だ。前回よりも議席を増やしている。最近では、マイルド極右と言う方がいいのかもしれないが。

前回の選挙では、この極右党とマクロンの党がほとんど同じで両方1位と言ってよかったのだが、今回はマクロンの党が大幅に減ってしまった。14,60 %だ。

中道左派の復活

ただ、国内的に見るのなら、中道左派の復活と言えると思った。マクロンに入れるかもしれなかった浮動票で、左派よりの人のかなりの部分が、「社会党&公共広場」に投票したのだと思う。彼らは3位につけた。13,8 %

社会党はオランド大統領が退任してから、ずーーーっと鳴かず飛ばずだった。

お金が集まらなくなったからか、本拠地を引っ越しまでして。もっとも、だからこそ中道と呼ばれたマクロンの党が浮上できたのだが。

やっと今回、ラファエル・グリュックスマンという、かなり魅力的な人物が出て、中道左派復権の兆しが現れた。「公共広場」党という小党の創設者であり、今回社会党と完全なコラボを組んだ。もし左派連合(以下参照)が今度の選挙で勝ったら、グリュックスマンが首相になるだろう(メランションではないらしい)。

しかし・・・フランスの欧州選挙戦を見ていて思ったが、本当に若返りましたね。マクロン大統領が39歳で就任してから特に若返ったけど、今回、主要政党の代表者たちは、みんな40代以下なんじゃないか。半分は女性だし。

こういうのを見慣れると、日本の政界が男だらけの加齢臭くささで、目(鼻?)も当てられないと思う気持ちが、ますます強くなる。

それはともかく、あれから7年。やっと中道左派、社会党系の復活だ。

確かにマクロンの党の敗北は敗北なのだが、中道左派が復活しだして、票が割れたという感じがする。

マクロンの解散宣言の波紋

解散総選挙発表の驚きもやまないうちに、左派が連合を組むことになったと発表された。

社会党&公共広場、ヨーロッパエコロジー緑の党、不服従のフランス党、フランス共産党の4党だ。

ただし彼らは既にNUPESと呼ばれる、上記の4党と他の左派の党が加わった連合を組んだ実績があるので、それほど驚かなかった。

これはジャン=リュック・メランションという超有名政治家で、極左と呼ばれる「不服従のフランス」党の党首がつくったものだ。前回の大統領でかなりの善戦だったので、この連合が可能になった。今回のはV2.0という感じだろうか。

ところがところが・・・11日になって、爆弾が飛び込んできた。

その噂はあった。

中道右派とされる共和党。伝統的にはシラク大統領やサルコジ大統領をうんだ党だが、極右の国民連合と組むというのだ。

党首のエリック・シオティが13時のニュースで何かしゃべるというので、最近具合が悪くてふせっていた筆者は、横になったままで一応テレビをつけた。

そうしたら、あのマスオさんみたいに人好きのする顔つきで、いかにも地中海地方出身らしい、なんだか明るい雰囲気をもった男シオティが、柔和な笑顔で「極右と連携します」と言ったではないか!

思わず起き上がってしまった。キャスターの女性も、一瞬「げっ」という感じで、驚きで固まっていた。後ろ向きだった男性解説者も、同じ様子だった。映った時には、眉間にシワが。

歴史の長い中道右派政党が、極右と連携って!!!

極右と中道右派が連合の衝撃

欧州(というか西欧)では、極右とだけは連携したくなくて、でも極右が票を伸ばして困っており、中道右派と中道左派が大連立を組むということが、時々起こっている。

そうまでしても、絶対に極右に政権は渡さない!あの人達とだけは組めない!という拒否感があるのだ。

ああ、共和党もこれで終わりだ、と思った。極右が台頭して、中道右派が霞んできて、焦って、極右っぽくなっていくのは、どの国でも似ている。でも、極右との間には、明確な一線があるはず・・・だったのに。

ああ、何だかフランスが崩れてきた。

なぜシオティはこんなことを言うのだろう。

女性キャスターが質問した。「あなたはこのまま共和党の党首でいられると思いますか」。彼は答えた。パリの本部で聞いている話と、私がニースなどの現場で聞く話には大きな隔たりがある、と。

ああ、なるほど、と思った。

彼はニース出身。コート・ダジュールを含むアルプ・マルティム県の人である。ニースは極右の隠れ牙城である。住んでいた筆者が言うのだから間違いない。

あの地域の人だから、極右と中道右派の境目が、彼には曖昧なものなのだと思う。

地中海沿岸部のコート・ダジュール、特にニースが極右シンパになってしまうのは、住んでみればやむを得ないのがわかる。

まず、単純に割合的に地中海の向こう側からやってきた人が多い。しかも小さい街の中、繁華街といえば、あそことあそこみたいな感じで、いつも彼らと近くに接している。

しかも、パリなどの寒い北部と異なり、彼らはとても活発である。出身地と気候が似ているせいだろうか。

また、彼らに限らないのだが、外国人というものは、外国で変にはじけることがよくある。出身国では出身国の秩序があってその中で暮らしている。特にイスラム教徒は、こちらから見ると、結構厳格な秩序の中で生きている。

外国に来てあまりにも違う文化にタガが外れ(どうするべきなのかわかっていない)、現地の人がしないことまでしてしまう。これが小さい街の中で繰り広げられる。

さらに、嫌な言い方だが、失業率が高いと(特に若者)、やはり犯罪も身近になってしまう。嫌がらせのようなからかいから、泥棒、強盗まで。ごく一部の人の行いではあるが、小さい街なかで行われては、誰もが「嫌な実体験」をもってしまう。

人々は「もう移民が嫌だ」となってしまうのは無理もない。しかもニースでは、大きなテロがあった。

あともう一つ大きな理由を挙げれば、ニースにはフランス革命の伝統がない。革命時、あそこはまだフランス領ではなかった。ルイ14世はニース城を破壊した敵(?)である。そこはカンヌと違うところだ。

土地の風土というのはいかんとも変えられない。あそこには、人権・平等といった、フランス革命という歴史の体験によって刻まれた左派思想というものが極めて薄いのだ。

でも人々は普通にバランス感覚をもっているし、フランス人としての教育を受けている。他の土地のフランス人と同じように。そして世界中から来る観光客を受け入れる度量のある、明るくタフな人達である。

極右支持の人も、極右であることを隠そうというくらいの品位はもっていた。

しかし、時代はすっかり変わってしまった。

エリック・シオティよ。極右が台頭して、極右に張り合って、もはや中道ではなくなるほどに極右っぽくなる時代の共和党の党首には、貴殿はぴったりだったのだろう。でも、極右との連携は、完全に一線を越えている。

マクロンにやや有利?

もしかしたら、このことは、マクロンの党に有利に働くのではないだろうか。浮動票というのはある。あるから政権が交代するのだ。

もともと、大統領選の1回目投票とか、欧州選挙では、批判票が上位に来る事が多い(選挙では、1回目で5割を越えた候補者がいなければ、上位2名で2回目の決戦投票となる)。

欧州選挙で批判票が集まるとか、「移民反対!!」が票を多く集めるのはもう慣れっこになっているので、正直言って、極右が1党になっても、さほど驚かない。

でも人々は、大統領選の決選投票や、議会選挙、地方選挙になると、自分に直にふりかかると思うのか、もっと慎重になる傾向があるのだ(今後は未知数だが・・・)。

だから黙っていても、おそらく欧州選挙ほどの票は、国民連合には集まらないと思う。どの程度かわからないが、ある程度は減るだろう。

その票はどこに行くのか。

また、共和党がひ弱になっているといっても、それでも共和党に入れる人々がいるのだ。それは極右との一線を意識している人達だ。

あるいは、極右と極左は、どちらも極端だから似てくる所があるし、支持層も似てくるので、それを嫌う人達だ。

パリで言えば16区。またはベルサイユ地域。共和党の堂々たる牙城であり、ブルジョワジーであり、カトリック、保守である。

本当に共和党と国民連合が組むのなら、果たして彼らは入れるだろうか。

極右のほうがいいという人もいるだろうが(特に高齢者)、実業家やビジネスパーソンは不安に思って極右を避けたいのではないか。

思想的な面で一線を越えた極右は嫌だという人もいるだろう。また、極右支持者の、極左にも似ている特徴的な層を見て「あの人達と一緒なんてごめんこうむる」と思うかもしれない。

彼らの票はどこにいくのか。

やはり、マクロンの党に行くのではないだろうか。

あちこちから色々と集まったところで、どの程度になるのかは未知数だが・・・。。

ただ、どうでしょう。

本当にこの連合は実現するのかな。

11日は1日中、その話ばっかりで、共和党の人々が続々とシオティ党首を批判し始めた。

今回は関係ない上院の共和党グループは、一丸となって猛批判だし、「裏切りだ」とか「シオティを除籍しろ」とか。誰が支持した、誰が批判した、とか、そんなのばかり。副党首も批判しているし、前回の大統領戦に出馬したペクレスさんも批判。

あと、自分のニースの選挙区からの要望を満たすために、こうしたのだろうという批判もある。これは本当だろうけど、確かにニースに限らず、自分の選挙区に国民連合の候補者が出たら、有力な左派連合の候補者がいたら、自分が落選するかもと戦々恐々している政治家にとっては、この連合は歓迎すべきもののはずだ。

あまりに多い発言のうち、唯一印象に残った政治家の発言は「シオティのサラダ・ニーソワーズは吐き気をもよおす」だった(苦笑)。

しかし、シオティを批判する人は、なぜド・ゴールを持ち出すのかね。「ゴリストの、誇り高き我が党」みたいな。そこまで遡らなくても。

あと「国民連合」を旧称の「国民戦線」で呼ぶ人も多い。これはわざとなのだろう。

今回、28歳と若くて切れ者のジョルダン・バルデラ新党首を前面に出して戦い、イメージ刷新に成功した国民連合。元をたどればナチスの香りがするジャン=マリー・ルペンの党。そして後継者は、なんであなたが欧州議員?と心底叫びたいほど欧州連合やユーロ通貨の基礎知識もない娘、マリーヌ・ルペンだったのだから。高齢者に人気というイメージもあった。

明日あたりから、共和党党規で、党首の進退に関する手続きの記述があるのかとか、そんな話も出てくるだろう。

でも本当に時間がない。6月30日に1回目投票、7月7日に2回目投票。

各選挙区の候補者リストの提出締め切りまで、時間がない。

連合を組むのなら早く組んで、どの選挙区に連合内のどの党の人が出るのか出ないのか、決めなければならない。

マクロン氏のほうは、かなり前から、ごく小さい秘密のグループで、この欧州選挙の結果を色々とシミュレーションして考えてきたという。

ということは、この敗北と解散総選挙は、以前から練っていた想定と戦略の一つなんだろう。この電光石火は、前もって考えていたとしか思えない。

左派の連合は想定済みだっただろう。

今回の左派連合は、「人民戦線 Front populaire」と称され、1930年代の反ファシズムのレオン・ブルム政権にあやかろうとしている。

が、中には、社会党や緑の党はよくても、極左と言われる共産党や「不服従のフランス」党と一緒なんてまっぴらごめんという人々がある程度はいて、マクロンのほうに流れる可能性が大いにあることも、想定済みだろう。

もっともこちらも、本当に選挙区の議員振り分けの話し合いはまとまるのか、決裂しないのか、という疑問は残るのだが。

フランス人の行動様式

マクロンの戦略グループの内容は、機密なのでわからないが、一つ絶対に考えていたに違いないことがある。

バカンスである。

6月30日だの、7月7日だの、8月ほどではないにせよ、もうバカンスに入る人がいる時期なのだから、勘弁してくれという日程である。

ただでさえ、散々、欧州選挙で選挙キャンペーンや討論を見せられて、かなり食傷気味である。大いに関心を持ってみていた筆者ですら、お腹いっぱいである。

ああ、やっと終わったと思ったら、そこに立て続けにまた選挙?

投票所の人達は大変だ。

小学校や幼稚園はまだいいのだが、場所によっては市庁舎・町役場・村役場で行う。

選挙が行われるのは日曜日。しかも気候の良いこの季節なんて、結婚式の予約でホールは埋まっている。

となると、他の場所を借りなければいけないが、「もう予定が入っています」「バカンスでいません」と断られるというルポをやっている。

投票率が高くなるとはとても思えないが、このフランス人の行動様式が、果たしてどう選挙結果に現れるのか。

そのあたりは、マクロンの戦略グループは必ず計算に入れているに違いない。

それから、7月からパリ・オリンピックがあるのも忘れずに!

人々は政治や選挙に嫌気がさして、ますますオリンピックの爽快なニュースに注目したがるだろう。

これからまだまだ波乱がありそうだ。

本当に、うんざりするほどあきれながらも、政治家の政治への情熱がすごいなあと感心している。年配の人もいれば、若さもあふれている。

マクロンが負けた本当の理由?

実は筆者は、選挙の直前に、病欠の補償金を大幅に減らすという、国民を敵にまわすような提案をするから、マクロンの党は議席を減らしたのではと内心疑っている。

会計検査院の提案という形で、社会保障の大大大赤字を削減するためだ。

選挙後にすればいいものを。そういう事を選挙直前に平気でやるのが、マクロン政権の率直な良いところでもあり、傲慢に見えないでもない悪いところでもある。

フランスでは、病気の時は有給を使って休むことなどしない。有給は有給で労働者の休む権利だから別物。病欠が始まり、最初の数日は何も補償が出ない待ち時間がある。公務員だと2日めから、会社員だと3日。それ以降は、全額ではないが、国から補助金が出るのだ。この待ち時間を1週間にするという。

この費用が、2027年には172億ユーロに達すると言われる社会保障の大赤字の、半分弱を占めている。

さらに、国民側の制度悪用が指摘されている。筆者は断言するが悪用する輩はいる。働き手側が医者をだましているのか、ある程度グルなのか。そんなことが起きているのは、フランス人なら全員知っているはずだ。

というか、悪用したくもないのに悪用するような感じになってすらいる。

筆者は昔、風邪をひいて熱が出たと医者にかかったら、3日の病欠診断書をくれた。日本人的には「3日もいらないんじゃ?」と思ったが、3日というのはスタンダードらしかった。当時の制度では、1日補償金がもらえる。

でも2日で治ったので3日目に職場に行ったら、上司に「帰れ!」と怒られた。

私が「治ったから働こうと思ったのですが、治ったら働いちゃいけないんですか」と言ったら、異星人を見るような目でしげしげと見られ、丁寧に「医者が3日と出しているのに働かせるのは法律違反だ。私達雇用側が大きなペナルティを課せられる」と言われた。

そんな社会だから社会保障費が赤字になるのを、フランス人はみんな黙っているだけでわかっている。「社会保障費が高いから、ちょっとくらいはいいじゃない」と思っているのかもしれない。でも、仕事をなめすぎだ。

マスコミも、この途方もない大赤字という論調で報道しているし、表立った反対デモなどは起きていない(まだ提案だし)。

しかし、人々は嫌に決まっている。ただでさえ物価は上がり、定年年齢も上がった。他の国でも同様のことが起きている、仕方のない大きな流れと言っても、嫌なものは嫌だ。

社会党が凋落したのも、家庭への補助金削除という、社会党にあるまじきことをしたことが、最大の理由だと筆者は疑っていた。

現実なんて、人々の隠れた本音なんて、こんなものではないかと。

病欠の補償金とEUが何の関係があるのか? それは国政でEU選挙と関係ないのでは? そのとおりです。関係ありません。

でも目の前に選挙があります。ウクライナ戦争もあって「物価の高さ」は問題になっています。与党と違って、我が党なら国民ファーストで政治を行う、というような主張をする党が、第一党になりました。

トランプ氏なら、本当に強権を発動しそうですが、フランスの欧州選挙第一党は、別にEUを離脱するとも言っていません。その考えはとっくに放棄しているようです。

マクロンの今後

最後に、筆者のしょうもない予想を現時点で言ってみよう。

マクロン氏は、なんというか、この人は何か星のめぐり合わせを持っている人、という印象があるので、大きく見て悪い方向には行かないのではないか。

マクロン氏は、必ず大統領の次を考えているはずだ。まだ40代で若いのだから、引退するわけがない。

次は、欧州委員会の委員長か、欧州理事会の議長(EU大統領)あたりを狙っているのではないかと勝手に想像している。そこまで考えて、戦略を練っているのではと思う。

フランス大統領という地位をステップアップに使う発想そのものが、全く新しいものだ。歴代の人達は、欧州・EUなんかよりフランス。あるいは欧州構築に専心した人達だった。

好むと好まざるとに関わらず、この人には、欧州の未来を大局的に考える能力と才能がある。もし欧州のリーダーになったら、新しい幕を開く新しい世代の強力なリーダーになるだろう。

もし投票権があったら進んで彼に投票するかはさておき、筆者は才能がある人を見るのは好きだ。あと数年、国政で相当の苦労が待っているだろうが、頑張れ、マクロン。

写真:ロイター/アフロ

追伸:久しぶりにバルニエさんを見ました。この人は共和党なので、発言を求められたのです。ミスター・ブレグジットです。覚えていますか。ちょっとふっくらして(当時は激務で痩せていたのか?)すっかりおじいさんっぽくなっていました。でも相変わらず紳士ぽくて、いかにも共和党員らしい人です。サルコジ氏のような感じが、むしろ例外的なのかもしれない。

え、なぜ「二大政党」と言われた社会党が沈没したのか、って?

オランド大統領は、人々に優しくなければならない社会党のくせに、家庭に出す補助金を減らすから、人々にそっぽを向かれてしまったのだと思う。

冷静に見れば、彼は実務畑から出た人だけあって真面目な人で、国の赤字を減らそうと一生懸命頑張ったのだと思うのだが。

移民が押し寄せ、欧州全体で危機になったとき、人権と人々の平等をとりわけ守る立場でなければならない社会党のくせに、どうしても「守る」と言えなかった。

あの移民の大群を見れば、言えないのは無理もない。でもそれは、人権平等思想に忠実な人達から見限られる結果になってしまった。

オランド大統領は最後に、フランスに既に滞在していて、滞在許可がもらえるかもらえないかのボーダーの人達に滞在許可を与えるという、移民に優しい見えない行為をしているんだけどね・・・人々には伝わらなかった。損な人だった。

その噂はあった。

中道右派とされる共和党が、極右の国民連合と、

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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