Yahoo!ニュース

なぜネコは12時間以上眠るのか。睡眠時間が短い子は命の危機が?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:イメージマート)

一般社団法人ペットフード協会の調べでは、2018年から2020年の間では、イヌの飼育頭数よりネコの飼育頭数の方が増えています。ネコは多数が飼育されていますが、意外と知らないこともあります。

先日、Newsweekに「なぜネコは1日じゅう寝ているのでしょうか?」という興味深い記事が掲載されていました。今日は、小動物臨床の検知も入れて深読みしていきましょう。

□ネコは薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)なので、よく眠る?

まずは、薄明薄暮の説明からします。

薄明薄暮とは、ざっくりと説明しますと、うす暗いときにという意味です。薄明は明け方と薄暮は太陽が沈む頃の時間帯です。他には、月夜の明るいときも含まれています。

ネコ科の動物は、この時間に活発に運動する、つまり狩りをするのです。

なぜ、薄明薄暮性なのか?

ネコの獲物であるネズミなどがこの時間帯に活動するので、それでネコはこのような時間に起きて狩りをするのです。

しかし、いまやネコは室内飼いの子が多く、自分で獲物であるネズミなどの小動物を獲りに行く子は、ほとんどいません。しかし、そのような習性が残っているのです。

ネコはイヌと違って、単独で狩りをする動物なので、自分の体調が悪いと獲物を獲り逃がします。狩りはエネルギーを使うので、飼い主が活動している昼間はよく眠るのです。

□子猫とシニア猫は、もっと眠る

Newsweekの記事によりますと、ネコの睡眠時間は以下のようになっています。

一般的なネコは約15時間

子猫やシニア猫は20時間程度

活動的なネコは12時間しか眠らない子もいる

ネコは真正肉食なので、その消化にも時間がいるので眠っているそうです。

臨床現場では、子猫の場合はあまり触らず抱っこをせずに眠らせてあげる子の方が、正常に免疫力が働くので病気になりにくいです。かわいいからといって、抱っこばかりして起こしていると病気になりやすいので、注意してあげてください。

□雨の日や寒い日には、より長く眠る

写真:アフロ

ネコは、雨の日はよく眠りますね。それは、獲物であるネズミなども雨の日は、あまり活動をしないという理由もあります。

ネコは、寒さに弱いです。寒い時期の野良猫は、やはり弱りやすいです。そのため、冬に野良猫を見ると心が痛みます。

それと、ネコは水に濡れることは好みません。濡れていると体を冷やすからです。例外的にイリオモテヤマネコは、水の中に入って獲物を獲りますが、こういうネコは珍しいです。

ネコの飼い主は、以下のことに気を付けていただくと病気になりにくいです。

・寒い日は、よく寝かす

・寒い日はエアコンをつける

・寒い日は、湯たんぽを寝床に入れる

・シャンプーしたときは、体を冷やさないようにすばやく乾かす

などです。

□うちの子、あまり眠らないけれど大丈夫?

写真:イメージマート

上述のように、ネコはよく眠る動物です。その一方で、「うちの子はあまり眠らない」という場合もあります。そのような子は、以下の病気がある可能性もあります。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、ネコに多い病気です。首のところにある甲状腺から甲状腺ホルモンが多く分泌されます。一見、元気になったように見えますが、あまり眠らないとこの病気の可能性があります。症状としては、活動的、怒りっぽい、よく食べるわりに痩せてくる、よく鳴く、心悸亢進(心拍数が早い)などがあります。

この病気は、動物病院で血液検査をしてもらうとすぐに判明します。

心臓病

イヌほどでは、ありませんがネコも心臓病があります。先天的でない場合は、シニア期になると多いです。重篤な場合は、胸をつけると痛い、座ったまま眠ったりや胸の周りを触ると嫌がったりします。呼吸が荒いのでわかると思います。また眠りにくいので、寝床を移動します。

認知症

鳴いて眠らないと飼い主にいわれると、甲状腺機能亢進症か認知症に当たることが多いです。上述の甲状腺機能亢進症は、血液検査で甲状腺を調べるとすぐにわかります。その血液検査が正常なら、認知症の可能性が高くなります。シニアでよく鳴いて、睡眠時間が少ない子は調べてもらいましょう。

がんなどの慢性疾患

がんなどの慢性疾患を持っている子は、疼痛がある場合は、やはり眠る時間が少ないです。短い睡眠時間を小刻みに取っている感じがあります。睡眠時間が少ない子もかかりつけ医に相談してみてください。

まとめ

撮影は筆者 ゲタの上で眠るネコの置物
撮影は筆者 ゲタの上で眠るネコの置物

身近なネコですが、睡眠時間でこれだけいろいろなことがわかるというのは、興味深いです。ただ眠っているなと眺めるのではなく、時間にも気をつけてくださいね。ネコは、寝る子と書いて寝子(ねこ)というぐらいなので、ネコの睡眠時間は大切です。

玄関先のゲタの上でネコが眠っている家は家内安全だという説もあります。その理由は、ネコは眠りやすいところで寝床にするので、人が出入りすところでも安全だということです。そのうえ、飼い主の帰るを待っていて寝入ってしまったということなどからネコに慕われてる飼い主のいるところからきています。

知り合いの家に遊びに行ったときに、ネコがどこで眠っているかを観察するのも面白いです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事