コロナ禍の折、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。さて昨日、政府よりGoToトラベルの全国一斉停止の方針が発表されました。以下、東京新聞より。
私自身はそもそも本「GoToトラベル」施策の実施の決まった、今夏の時点でGoToトラベルというのは「振り戻し」があるのが前提の施策として見ていたので、本件に関しては特に驚きは御座いません。以下、7月16日のエントリからの引用。
一方で、上記エントリのタイトルにも表れている通り、私自身はこのコロナ禍にあたって必要なのは、GoToトラベルそのものの実施よりも、むしろ観光産業がこの産業の危機にあたって急速に変容してゆくことであり、行政はむしろその変化を強力に支援してゆくことが必要であると主張しておりました。また特にwithコロナ期を我々観光産業が何とか生きて乗り越える為に必要な施策として、私は以下の様なことも述べて来ました。以下、今年の7月28日のエントリから。
ここで私が述べた「同一圏域内の近距離で発生する小グループ観光」というのは、星野リゾートの星野佳路さんなどが「マイクロツーリズム」という非常にキャッチーなフレーズで世にアピールし、それこそ6月、7月あたりのマスコミではこの用語を見ない日がない程の一時的な流行語となりました。ところが、観光庁さまはそのマイクロツーリズムという概念自体を、自身でその後にまとめるコロナ期における観光施策の中で一切無視し、行政文書の中では見事にマイクロツーリズムの「マ」の字も出てこないという異常事態が発生しておりましたね。当時私はこれを「この国の観光政策には絶望しかない」と評し、以下の様に書きました。以下、上でご紹介したエントリの続きからの転載。
そして、これらマイクロツーリズムの代わりとして、観光庁の皆様が「withコロナ期における観光振興策」として打ち出したのがワーケーションという、労働者が遠方観光地で仕事を行うという「謎施策」でありました。以下、GoToトラベルの開始にあたって今年の7月30日に行われた政府施策に関する報道。
この観光庁が打ち出したワーケーションという施策には全国自治体が飛びつき、6月・7月には「マイクロツーリズム」という用語が席巻していた観光業界が、その後「ワーケーション」一色になりましたね。11月には観光庁さま自身が、ワーケーション普及に向けて実証実験を行うなどという報道もなされましたが、その実績は如何でしたでしょうか?以下、日経新聞からの報道。
不祥私めには、このコロナ禍に息も絶え絶えな観光業界を目前にして、やっと11月に実証実験が始まるというのは何とも気の長い話に見えてしまったわけですが、その辺はやはり優秀な頭脳の集まる観光庁さまでありますから、これから再び起こる感染再拡大期の対策として、この「ワーケーションの推進」なるものがさぞかし役に立つのでしょうね。書き入れ時である年末年始を失い、世の観光業者は文字通り「死の淵」に直面している状況でありますから、このワーケーションの推進なる皆様「肝煎り」の施策が、お釈迦様が地獄に向かって吊るした一縷の「蜘蛛の糸」として機能する事を心からお祈りするところであります。
ということで聡明なる観光庁さまのお導きにより「マイクロツーリズムの振興」ではなく、「ワーケーションの振興」でここ数ヶ月のGoToトラベルによるブースト期を走り抜けて来た我が国の観光業界でありましたが、これから再び始まる感染再拡大期において我々は何を光明として生きて行けば良いのでしょうか。これは7月のGoToトラベル開始時に私が書いたエントリのタイトルでもありましたが、改めてここで申し上げたい。この国の観光政策には絶望しかないんだな、と。