愛媛県松山城の土砂崩れ現場|ハザードマップ急傾斜地崩壊区域の隙間で起こっていた!
12日午前4時ごろに、愛媛県松山城付近で突然起きた土砂崩れを、国土交通省が公開している「重ねるハザードマップ」で確認してみました。
すると、松山城周辺の斜面の多くが「急傾斜地の崩壊区域」に指定され、レッドゾーンと呼ばれる「特別警戒区域」の指定範囲が広い地域でした。
ところが、読売新聞オンラインが公開している現場写真と比較すると、今回の土砂崩れは警戒区域の隙間で起きていたことが分かったのです。
重ねるハザードマップによる松山城周辺の土砂災害情報
これは国土交通省が公開している重ねるハザードマップの、愛媛県松山城周辺の土砂災害情報です。
- 黄色部分:急傾斜地の崩壊・警戒区域
- 赤色部分:急傾斜地の崩壊・特別警戒区域
着色部分は、上記の警戒区域です。
そのほかの土石流・地すべりによる危険個所の表示はありません。しかし、これを見れば、松山城周辺の斜面は「傾斜度が30度以上あり、崩壊する可能性が高い地域」となっています。
ただこれでは、警戒区域内の状況が見づらいので、着色の透過率をアップしてみましょう。
現場付近のハザードマップ警戒区域の透過率をアップ
今回土砂災害が発生した現場付近の、警戒区域の着色を透過させてみました。
これで、警戒区域内の状況が分かりやすくなったでしょう。次に、12日に報じられた読売新聞オンラインが公開している、現場写真の角度に合わせてみましょう。
土砂崩れは警戒区域の隙間で起きていた!
これが、7月12日に読売新聞オンラインが報じた、現場を上空から撮影した写真です。この角度に重ねるハザードマップを合わせてみると、次のようになります。
これ以上ハザードマップを拡大すると警戒区域が非表示となるため、この大きさが限界です。
先の読売オンラインの写真から、土砂災害が起きた個所をハザードマップ上に水色でトレースしました。
すると、見事に警戒区域の隙間で、土砂崩れが起きていることが分かります。これを見ると理由は分かりませんが、想定外の災害が起きたのかもしれません。
等高線や写真からも谷沿いに土砂が流れているので、土石流が発生したのでは?
重ねるハザードマップの地形図の等高線をみると、今回土砂が流れたルートは谷の形状であることが分かります。
航空写真の植生をみても、周囲と異なるため谷であることは間違いないでしょう。
そのため今回の土砂崩れは、土石流が発生したと想定できます。
土砂災害ハザードマップの精度は高い!
ハザードマップの中でも土砂災害については、現地調査も行い専用の3次元の解析システムを使用して特定しているため、精度は高くほぼ正確な情報となっています。
これは、筆者が長年従事した測量業務にて、実際に傍で見てきたので間違いありません。
現実として、平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害では、土石流が起きた個所と被害状況は、土砂災害ハザードマップとほぼ一致していました。
それなのに今回のように、予想されていない個所で土砂崩れが起きたことは、もはやどこで土砂災害が起きても、おかしくない時代になったといってよいでしょう。
近年では、突然起きるゲリラ雷雨でも、相当の大雨が降っています。今回も松山市では、災害が起きたころまでの48時間雨量が197.5mmに達するなど、予想以上の大雨が降らなければ、土砂崩れも起きなかったでしょう。
「土砂災害に気を付けて!」といわれても、今回のように就寝時間に突然起きる災害には、対処のしようがありません。
長年ハザードマップ作成に携わってきた者にとっては、もどかしいのが現状です。