コメダ珈琲店に「大型モニタ持ち込みの“最終形態”で仕事」が賛否! カフェで本気の仕事は許される?
カフェで仕事
カフェやファミリーレストランで勉強や仕事をしたことがありますか。
誰しも一度は経験があるかと思いますが、どのような環境で勉強や仕事を行っていたでしょうか。
少し前に、コメダ珈琲店で撮った写真が物議を醸しました。正確にいうと、その写真をキャプチャしたTweetが話題となっています。
そのTweetは以下の通りです。
カフェでこんな事する人の気がしれない
これ増えると経営悪化して、安くてデカいメニュー続けられなくなるよ
これに賛同する人多くてビックリ
そんなに仕事したいなら時間単位で借りれるオフィス行きなよ
最終形態の写真
2023年7月8日に「コメダ最終形態なう」というコメントと共に、写真がTwitterに投稿されました。コメダ珈琲店の席で、ラップトップPCを大型モニタに接続し、アームレストやトラックボールらしき機器を設置した一枚です。
翌日、上記のユーザーがこのツイートをキャプチャして拡散。すると、当記事執筆時点で、357.8万件の表示、5,660件のリツイート、1,074件の引用、2.6万件のいいね、523ブックマークと大きな反響がありました。
コメントを確認してみると「どれだけオーダーしたのだろう」「モニター持ち込むってすごい」「セキュリティ意識が低い」「ネットカフェに行った方がいい」「時間制限はどうなっているのか」といった批判から、「店が許容しているのなら、いいのでは」と擁護も少し見かけられます。
コメダ珈琲店
コメダ珈琲店はどのようなポリシーをもっているのでしょうか。
公式サイトによれば、“自宅のリビングルームの延長線上のように元気や英気を養い誰もがくつろげる「街のリビングルーム」”を目指しているといいます。そして、おいしさ、おもてなし、居心地に、徹底的にこだわっているということです。
居心地のよさをつくるために、席間隔を広くして、椅子をソファにしています。さらには、落ち着きのある木やレンガ素材を使用し、プライベート感のある高めのパーテーションを設置。
フリーWi-Fiを備えてネット環境を整え、ほぼ全ての席にコンセントを設置するという手厚さです。
空間の価値
飲食店の空間には価値があります。
なぜならば、空間には少なからぬコストがかけられているからです。
賃貸料があるのは当然のことながら、灯りや空調といった光熱費、テーブルやイス、インテリアやランチョンマット、カトラリーやプレート、グラスなどのテーブルウェアなどにも、お金がかかっているのです。
コメダ珈琲店は、フリーWi-Fiやコンセントがあったり、セミプライベートルームに仕上げたりしているので、通常のカフェに比べれば、空間によりコストをかけているといってよいでしょう。
回転率の重要性
飲食店の売上は、平均客単価と席数と平均回転率をかけあわせて算出されます。席数は変わらないので、客単価と回転率を上げていくしか売上を増やす方法はありません。
客単価を上げるには、オーダー数を増やすか、値段を上げるかのどちらかです。ただ、よりたくさんオーダーしてもらうのは難しく、客離れを恐れて値上げもしたがりません。そのため、飲食店は客単価ではなく、回転率を上げるように努めます。
ファインダイニングであれば完全予約制に近く、ディナーで1回転というところが多いですが、一斉スタートのカウンターガストロノミーや鮨店であれば、2部制を採用しており、2回転も普通です。
カフェは慌ただしいセルフ式から時間の流れが止まったかのようなオーセンティックで高単価なものまであります。スタイルが幅広いので、回転数も2回転から10回転とだいぶ異なるのが特徴。
滞在時間の長さ
回転率を上げるにはどうすればよいでしょうか。
客の滞在時間を短くし、すぐ次の客を入店させればよいです。ただ、客の滞在時間が短くても次の客が入らなければ意味がなく、反対に、行列ができているなどして客が待っていたとしても席が空いていなければ回転できません。
平均滞在時間の例を挙げると、ファミリーレストランは50分から70分、レストランは60分から90分、ファインダイニングは120分から150分。もっとカジュアルな業態であれば、立ち食い蕎麦店は5分から10分、牛丼店は10分から15分、ラーメン店は15分から20分くらいです。
カフェであれば30分から60分。セルフ式のドトールコーヒーショップは短くて30分、寛いでもらうことをコンセプトにするコメダ珈琲店は長めの1時間くらいであるといわれています。
コンセプトとは異なる
コメダ珈琲店のコンセプトは「街のリビングルーム」なので、ゲストにのんびり過ごしてもらえるのは嬉しいことです。平均滞在時間も長く、コメダ珈琲店の狙い通りにゲストが利用しているといってよいでしょう。
ただ、コメダ珈琲店が目指しているのは、あくまでも、“自宅のリビングルームの延長線上のように元気や英気を養い誰もがくつろげる「街のリビングルーム」”です。
今ではリモートワークも一般的になり、リビングルームで仕事する人もいるかもしれません。しかし、コメダ珈琲店がコンセプトにしているのは、ちょっと仕事をするのならまだしも、がっつり仕事をするための「街のリビングルーム」ではないでしょう。
なぜならば、コロナ禍前から言及したことであり、仕事することは「くつろぐ」および「元気や英気を養う」とベクトルが異なるからです。
飲食店とは
飲食店は、食品衛生法に基づき、自治体の保健所から飲食店営業許可を得て運営している施設です。食品衛生法によると、飲食店はあくまでも、調理された食品を販売する店であると定義されています。つまり、飲食店の存在意義は、食事の場を提供することです。
これらを鑑みれば、大型モニタまで持ち込み、完全に仕事環境を構築して過ごすのは、コメダ珈琲店が期待することからも、風営法の対象(とグレーなネットカフェ)ではない飲食店の存在意義からも、ずれているといってよいでしょう。
回転率の低下と雰囲気の悪化
大型モニタなどを設置するくらいなので、滞在時間が数十分ということは考えにくく、数時間は仕事に励んでいると推測されます。コメダ珈琲店の平均滞在時間は60分くらいなので、回転率も落ちるでしょう。
店の雰囲気は客がつくるもの。“本格的なオフィス環境”で仕事している客が、寛げて元気や英気を養える「街のリビングルーム」の雰囲気を醸成するようには思えません。
色々なことを考察してきましたが、冒頭でも紹介した大方の反響のように、大型モニタまで持って来て仕事することは、コメダ珈琲店ではあまり適切ではないように感じられます。