ボーイング、航空自衛隊F15戦闘機の電子戦能力向上で新たな契約
米ボーイングは、航空自衛隊F15戦闘機の能力向上のための改修の一環として、同戦闘機の電子戦(EW)システムをアップグレードする契約を受けた。米国防総省(ペンダゴン)がこのほど発表した。
米政府の対外有償軍事援助(FMS)を通じて契約された。契約額は2455万ドル(約30億円)。米空軍で実戦配備が始まった最新のF15EXを製造する同社ミズーリ州セントルイス工場で同事業は実施され、2028年12月31日に完了する予定だ。
新たに搭載する電子戦システムは、F15EXにも導入される「イーグル受動/能動警戒生存システム」(EPAWSS: Eagle Passive/Active Warning and Survivability System)とみられる。EPAWSSは、周波数スペクトルのサンプル化や脅威の特定、周波数の妨害電波の送出などの面で優れる。1980年代に設計され、米空軍の約220機のF15Eに装備されている「戦術電子戦スイート」(TEWS:Tactical Electronic Warfare Suite)に取って代わるものとなっている。
●68機の単座のF15Jが能力向上の対象
防衛省は、J-MSIP(Japan-Multi-Stage Improvement Program:日本多段階能力向上計画)と呼ばれる近代化改修を終えた102機のF15J(単座型)とF15DJ(複座型)のうち、68機のF15Jを対象に新たな能力向上の改修を実施している。残りの34機のF15DJは、能力向上のための改修に適さないとして対象から外された。
米国防総省は、このF15Jの能力向上のための改修をF-15 Japan Super Interceptor(JSI)upgrade program(直訳:F15 日本の超迎撃機向上計画)と呼んでいる。昨年12月30日には米国防総省は、ボーイングにこのJSI事業プログラムの一環として4億7131万3000ドル(約570億円)を上限とする契約を授与したと発表した。F15J改造をサポートするための統合システムの設計と開発、さらには訓練用シミュレータの4機の開発・試験・納入が盛り込まれた。この事業も、同社ミズーリ州セントルイス工場で実施され、2028年12月31日に完了する見込みだ。
防衛装備庁は2022年2月4日、F15戦闘機の能力向上のための改修について、装備品の取得費や維持整備費を含めた総コストが68機分で6465億円(暫定値)になると発表した。
具体的には、今回の契約にもある電子戦能力の向上、多数目標を同時攻撃できるレーダーの更新、相手の射程圏外から攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」の搭載、搭載ミサイル数の増加などの能力向上の費用に加え、運用維持費を合わせた30年間の総コスト「ライフサイクルコスト(LCC)」が6465億円になると試算した。
主な内訳としては、30年間の運用維持段階の改修に5653億円、教育訓練に404億円、試験などに173億円、施設費用に24億円を見込んでいる。
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