台風9号発生するもフィリピンの東で停滞 記録的な猛暑を止めるきっかけは次に発生する台風10号
北陸から北日本を中心とした猛暑
太平洋高気圧が日本の東から日本列島に張り出し、北陸から北日本を中心に晴れて気温が高くなっています(図1)。
8月24日に全国で気温が一番高かったのは、新潟県・長岡の38.9度で、北陸や北日本海側が最高気温のランキング上位にはいっています。
また、8月24日に全国で最高気温35度以上の猛暑日を観測したのが142地点(全国で気温を観測している914地点の約16パーセント)、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが763地点(約83パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが906地点(約99パーセント)でした(図2)。
今年、一番多くの猛暑日を観測したのが8月3日の290地点(約32パーセント)、一番多くの真夏日を観測したのが7月29日の847地点(約93パーセント)、一番多くの夏日を観測したのが8月18日の912地点(約100パーセント)です。
これらに比べれば、観測した地点数は減っていますが、高い数値であることには変わりがありません。
8月25日も、福島県の会津若松や新潟県の津川や長岡で最高気温が38度の予想であるなど、北陸や関東、東北を中心に気温が高くなる予報となっています(図3)。
また、猛暑日は全国の140地点程度、真夏日は745地点程度、夏日は905地点程度と見積もられています。
厳しい暑さは8月25日も続く見込みですが、南海上から湿った空気が流入して雨が降っている所が多い西日本では、記録的な暑さは一服し、平年の夏の暑さになりそうです。
熱中症警戒アラート
熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係しています。
このため、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:wet-bulb globe temperature)」です。
「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。
「暑さ指数」の利用上の目安として、33以上:極めて危険、31以上~33未満:危険、28以上~31未満:厳重警戒、25以上~28未満:警戒、25未満:注意となっています。
熱中症で救急搬送される人を減らすため、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を発表していますが、発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表となります。
8月25日の前日予報では、北陸から北日本を中心として14地域に発表となっています。
熱中症警戒アラートの発表地域(8月25日の前日予報)
【北海道】石狩・空知・後志、十勝、胆振・日高、渡島・檜山
【東北】青森、秋田、岩手、山形、福島
【関東・甲信】千葉、神奈川
【北陸】新潟、富山、石川
令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表件数(前日17時と当日5時の発表をまとめて1回として集計)は、7月の前半までは前年、令和4年(2022年)より少ない発表回数で推移していたのですが、7月後半から急増し、8月24日には、前年の発表回数の年間累計である889地域を超えています(図4)。
そして、8月24日に初めて北海道の全地域にはに熱中症警戒アラートが発表となるなど、すでに昨年度の889地域を2割も上回る1072地域に発表となっています。
熱中症が問題となった前年以上のペースで熱中症警戒アラートが発表となっていますので、引き続き、熱中症対策をお願いします。
沖縄の南で台風9号が発生
記録的な猛暑を止める決定打になるかもしれないのが、日本の南の熱帯低気圧の動向です。
太平洋高気圧が南から張り出してくる例年の夏と違って、日本の南は気圧が低くなっており、所々で発達した積乱雲の塊が存在しています。
この雲の塊の中から、沖縄の南とマリアナ諸島近海で熱帯低気圧が発生し、沖縄の南の熱帯低気圧は、8月24日15時に台風9号に発達しました(タイトル画像)。
マリアナ諸島近海の熱帯低気圧も、間もなく台風10号に発達する見込みです(図5)。
台風が発達する目安の海面水温は27度といわれていますが、台風9号の近海の海面水温は、30度以上もあります。
このため、台風9号は中心気圧が940ヘクトパスカル、最大風速50メートル、最大瞬間風速70メートルという非常に強い台風に発達する見込みです。
ただ、台風を動かす上空の風が吹いていないため、ゆっくり南下し、フィリピンの東海上でほとんど停滞する見込みです。
日本への影響は来週半ば以降になりそうです。
連続して台風10号も発生
マリアナ諸島近海も、海面水温が台風が発達する目安の27度よりも高い30度ですので、まもなく台風10号になりそうです。
連続して発生した台風10号は、比較的早い速度で北上し、週明けには、関東地方にかなり接近しそうです。
台風10号の最盛期は中心気圧が996ヘクトパスカル、最大風速20メートル、最大瞬間風速30メートル程度と、台風9号よりは発達しない見込みですが、熱帯由来の暖湿気を持ち込むため、渇水気味の関東地方で大雨の可能性があります。
昔、筆者が調べた8月の台風の平均的な経路では、マリアナ諸島近海の台風は、西進したのちに北上して関東の東海上を北上するもの、北上して西日本の南海上に達したのち本州南岸を東進するもの、西日本の南海上から東シナ海へ入って北上するもの、いろいろなケースがあります(図6)。
台風10号がマリアナ諸島近海で発生した場合は、西進したのちに北上して関東の東海上を北上するという太線で描いている主要コースに沿って北上してきそうです。
【追記(8月25日7時30分)】
マリアナ諸島近海の熱帯低気圧は、北上した南鳥島近海で8月25日3時に台風10号になりました。台風10号は、北上して小笠原諸島に接近し、週明けには関東に接近の見込みです。
台風情報に注意してください。
そして、記録的な猛暑を止める決定打になるかもしれません。
とはいえ、記録的な暑さを止めたとしても、大きな災害をもたらす可能性があり、どちらになっても困った現象となります。
また、フィリピンの東でほとんど停滞する台風9号は、台風10号の大雨のあとに北上して被害を拡大させるという、油断できない台風になるおそれがあります。
過去に、「渇水だから台風が恵みの雨を降らせてほしい」というと「雨が降りすぎて大災害」になったということが少なくありません。
自然現象は、人間の都合が良いように動いてはくれません。
タイトル画像、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図4の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。
図6の出典:饒村曜・宮澤清治( 昭和55年(1980年))台風に関する諸統計 月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。