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「観光二重価格」が早速注目され始めたのは良いが、外国人差別はダメ

木曽崇国際カジノ研究所・所長

以下、TBS News DIGからの転載。

外国人向け「二重価格」はアリ? 円安でインバウンド増加 一杯5500円ラーメンに観光客「とても安い」 日本人は1100円割安の海鮮バイキング店も
https://news.yahoo.co.jp/articles/9316eebfd2967891e69384e4b19df82fcdb6e444?source=sns&dv=sp&mid=other&date=20240503&ctg=bus&bt=tw_up
訪日外国人が増える中で、飲食店の中では価格を「日本人向け」と「外国人観光客向け」で分ける店も出始めました。皆さん、この「二重価格」どう考えますか?

先日、オーバーツーリズム対策として、そろそろ日本も「地元割」による二重価格を導入検討すべきだとする以下の様な提言記事を書きました。

観光公害対策:必要なのは「県民の日」よりも「地元割」
https://twitter.com/takashikiso/status/1784318680962326960

その途端、同種の施策に注目が集まり始め、社会的論議が広まって来た事に対しては喜ばしいのひとことである訳ですが、一方で私が先の記事内でも「註釈」として言及した問題点が既に見え始めています。先の記事内で、私はこのように書きました。

上記施策における「観光客」を「外国人」に勝手に読み替えて賛否を論ずる人が必ず出てきますが、本施策で割引優遇されるのはあくまで「地元民」であり、国籍や人種で区分けをするものではないです。

観光地における二重価格は、あくまで「地元民と観光客」の区分けであって「日本人と外国人」の区分けであってはなりません。

前者の地元民を観光客と区分けして優遇する前者の施策、すなわち「地元割」は、商業者として来訪機会の高い地元民に対して選択的優遇をするという商業上の合理的な施策であり、あくまで「区別」です。その施策において線引きとなるのは、あくまで「地元民であるかどうか」であり、そこに国籍や人種は勘案されません。

一方、日本人と外国人を区分けして優遇する後者の施策は、国籍や人種など生まれながらにして持つ変更不可能な「人の性質」に対し、異なる処遇を付す「差別」にあたる施策です。世の中には「日本国籍は持つものの日本に住んでおらず、日本語も喋れない在外邦人」も存在します。一方で「生まれも育ちも日本であり、言語も日本語しか喋れない外国人」も存在します。その様な多様な「人間のあり様」がある中で、その人物が日本人であるかどうかを線引きとして異なる処遇を付すことは、繰り返しになりますが社会的に「差別」であると認知されて致し方ないものだと思います。

私自身は前者の「地元割」という施策の社会的採用をオーバーツーリズム対策の一環として推進している人間として、「外国人差別」となる後者の二重価格には明確に反対のスタンス。寧ろ、このような差別的な処遇を支持する人間が増える事は、オーバーツーリズム対策になり得る「地元割」という施策の社会的評価を「見誤らせてしまう」危険性すらある。私としては明確に、それとこれとは別モノであるとここに断言しておきたいと思います。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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