「政府は判決を尊重して」ノルウェー裁判官協会が異例の批判 先住民に対する人権侵害から2年
「ノルウェー政府は先住民サーミの人権侵害をしている」とノルウェー最高裁が判決を下してから2年。それなのにサーミ人のトナカイ放牧地であるフォーセン地域では、風力発電所は稼働したままだ。
「対話で解決したい」と風車を稼働させたままの政府に対して、今年サーミ人やノルウェーの若者たちは「国は違法行為を続けている」と抗議活動を繰り返してきた。
抗議は「市民的不服従」といわれる非暴力の違法行為が多く、警察に注意されても省庁の封鎖などをやめなかった若者たちにたいして罰金命令が出たばかりだ。
「違法しているノルウェー政府や企業は罰せられないのに」と、若者たちから抗議の声が出ただけではない。そもそも最高裁がすでに「違法だ」と判決を出しているのに風車が稼働したままの状態は「おかしい」と、ノルウェーの法の関係者からは先住民に連帯する声まで出ていた。
若者たちに罰金命令が出た翌日のことだ。ノルウェー裁判官協会は、「このままでは法の支配に対する信頼が弱まる」と国会と政府に書簡を送り説明を求めた。
「信頼」は北欧諸国が大切にしている価値観でもあり、アイデンティティーでもある。先住民や若者たちは「信頼ができない」と「信頼危機」も何度も強調していた。
書簡では、「最高裁判所の判決は出された時点で最終的なものである」と念を押している。未だに風車が稼働している「過去2年間の状況は法の支配の観点から持続可能ではない」と同協会のキルステン・ブレスケスタッド氏はサーミ新聞Ságatの取材にコメントしている。
裁判官協会は本来は政治的な件には口を出さないものだが、今回は異例となる。
書簡が送られたことに対して国会と政府は現地メディアへのコメントを控えている。
先住民の抗議活動を取材している筆者からしても、ノルウェー政府の対応を見ていると、「裁判の意味って何だろう」と法の役割に疑問を感じる。
抑圧政策などの差別と搾取の歴史を背負っている先住民に対して「罰」を与え続ける状況にも疑問が残る。
経済的に恵まれた国々には気候排出量を減らす責任が確かにある。しかし、「グリーン・シフトにあなたたちも貢献して」と先住民たちに強制して人権侵害を続けることは、「グリーン・コロニアリズム」と言われても仕方のない行為だ。
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