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お酒が飲めない人もソフトドリンクを注文するべき? 飲食店で飲み物をオーダーした方がよい理由

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

飲食店のドリンク注文

飲食店に訪れたら、何かドリンクを注文しますか。

コーヒーショップや喫茶店、バーなどを除き、食事が中心の飲食店に訪れて、料理をオーダーしない人はまずいません。幼児でなければ、1人1品は料理を注文するものです。ただ、料理は注文するものの、ドリンクについてはどうしようかと悩む人もいるかと思います。

少し前にソフトドリンクのオーダーに関する記事がありました。

お酒を飲まない人にありがちな「ソフトドリンクオーダー問題」無料の水じゃダメ?/マネーポストWEB

飲食店でお酒を飲まない人がソフトドリンクをオーダーするかどうか悩むということです。ちなみに、記事では「夜の飲食店」と表記されていましたが、クラブやキャバレーといった風営法に該当する飲食店ではありません。

「店の利益になるので、1ドリンク制でなくても1杯は頼むのがマナー」「お酒を飲む人から、ウーロン茶が500円もするのは馬鹿らしいといわれる」「無料の水だと割り勘で損した気分」「同席者に気まずいのでオーダーする」といった意見が取り上げられていました。

そして、無料の水を飲むのはルール違反ではないが、配慮してソフトドリンクを頼んでしまう人もいるということで、結んでいます。

当記事では、飲食店におけるソフトドリンクのオーダーについて考えていきましょう。

ドリンクオーダーの現状

飲食店におけるドリンクの扱いについて説明します。

ファインダイニングであれば、最初にシャンパーニュを勧められることが多いです。お酒が好きであれば、シャンパーニュをオーダーする時に、この後のお酒についてもソムリエなどのスタッフと相談し、ペアリングをお願いしたりします。私はワインが大好きなので、シャンパーニュの流れでペアリングを注文することがほとんどです。そうでなければ、好きなワインをボトルで選びます。

お酒が飲めなければ、モクテル=ノンアルコールカクテル、および、お茶などのソフトドリンクが提案されるでしょう。ドリンクのオーダーが必須というわけではないので、どうしてもドリンクを注文したくなければ、はっきりと伝えれば問題ありません。ただ、水であったとしても、有料のミネラルウォーターが促されたり、それが前提となっていることが多いです。

コーヒーショップや喫茶店、バーなど、ドリンクが主体の飲食店であれば、1人1ドリンクの注文が必須となります。フードは注文しなくてもよいですが、フードを注文しても、ドリンクを注文しなくてはならないケースがほとんど。そのため、遅れて到着すると、サービススタッフにメニューを渡されて、ドリンクの注文を訊かれます。

料理が主体である居酒屋も、1ドリンク制となっていることがほとんどです。もちろん、お酒が飲めない人は、ノンアルコールドリンクで構いません。

今回の事案について言及すれば、記事でコメントした方はソフトドリンクを注文するかどうか悩んでいるので、対象となっている飲食店は1ドリンク制ではないのでしょう。ドリンク注文が必須の飲食店が存在することは、補足したいところです。

飲食店とドリンク

どうしてドリンク注文が必須の飲食店があるのでしょうか。

それは、コーヒーショップや喫茶店、バーや居酒屋といった業態では、ドリンクが売上の中で高い割合を占めることを前提として設計されているからです。

売上に占めるドリンクの割合はだいたい、レストランが20%、居酒屋が40%、コーヒーショップや喫茶店が80%、バーが85%といわれています。コーヒーショップや喫茶店、バーや居酒屋では、ドリンクが売上に占める比率が高いので、ドリンクを注文してもらわなければ経営できません。

コーヒーショップや喫茶店は客単価が低く、回転率も悪いだけに、ドリンクを注文してもらう必要があります。

バーや居酒屋は、アルコールもノンアルコールも、他では飲めないドリンクを用意していることが少なくありません。その自慢のドリンクを飲んでもらいたいという想いもあります。有名なバーテンダーが在籍するバーへ訪れたのに、カクテルやモクテルを一切注文せず、市販されているような乾き物を食べてばかりいたのでは、何のために足を運んだのかわかりません。客にとってもバーにとってもミスマッチなので残念に思います。

ドリンクは優秀な商品

料理は注文できる数、食べられるボリュームに限界があります。しかし、ドリンクであれば何杯でも飲めるものです。

アルコールドリンクでは、ビールのように利益率が低いものから、ハイボールやサワーなどのように利益率が高いものまであります。ソフトドリンクであれば、手の込んだモクテルやブランドのコーヒーやお茶でない限り、原価率が低くて利益が多いです。

ドリンクはフードよりも平均的に利益率が高い上に、すぐ提供できるので、優秀な商品といえるでしょう。したがって、記事のコメントにあった、ドリンクは飲食店の利益になるというのは正しいです。

食体験を高めるために

ドリンクのオーダーが必須ではない限り、飲食店でドリンクをオーダーしなくても構いません。ただ、同席者に気を使ったり、飲食店に申し訳ないと思ったりするので、ソフトドリンクをオーダーせざるを得ないという声があります。その場合には、ネガティブに捉えるのではなく、食体験を高めるためと考えれば、よりポジティブにオーダーできるのではないでしょうか。

飲食店では、料理のメニューを考えるだけではなく、それに合わせたドリンクも考えて取り揃えているものです。コロナ禍の副産物でモクテルも非常に充実してきました。自宅では揃えられないようなグラスで提供されることも多く、貴重なテーブルウェアに出合えるのも楽しみのひとつ。

スタッフに料理とマリアージュするドリンクを尋ねれば、お酒でなくても、何かしらのソフトドリンクを提案してもらえるはずです。もしくは、その店で人気となっているノンアルコールドリンクをオーダーしてみるのもよいでしょう。

飲食店に訪れるのは、自宅ではできないような食体験をするため。ソフトドリンクであったとしても、自宅などで普段飲まないようなものや飲めないものを味わえば、食体験がより高められます。同席者がいて一緒に食事しているのであれば、なおさらのことです。

コストパフォーマンス至上主義の弊害

日本の産業はデフレで苦しんでいますが、飲食業界でもそれは顕著です。なかなか値段を上げられない上に、メディアでも安さばかりが強調されるコンテンツばかり。「コスパ最強」「利益度外視」「赤字覚悟」といったキーワードが連発され、まるで飲食店が利益を上げるのが悪いような空気が醸造され、外食でもコストパフォーマンスがことさらに強調されています。

しかし、普通の方であれば、毎日外食するわけでもなく、月に1度や週に1度外食する程度です。その時くらいは、ドリンクの1杯や2杯は、あまり細かく値段を気にしなくてもよいのではないでしょうか。

同席者とともに訪れた飲食店の料理とドリンクを味わえば、体験を共有できてより楽しく過ごせます。身体に必要な栄養をとれるだけではなく、心もリフレッシュできるので、飲食店に訪れた際には料理もドリンクも存分に楽しんでいただきたいです。

日本の未来のために

飲食店は基本的に利益を重要視しますが、もちろん訪れた客に満足してもらいたいと思っています。したがって、飲食業界が適切な利益を確保できるようになれば、よい食材を使うようになったり、スタッフに還元して調理やサービスのレベルが向上したり、什器を新しくしてオペレーションを改善したりするものです。

そうなれば、利用者はよりよい食体験を紡げるようになります。ひいては、世界に誇れる美食国家である日本の食が躍進し、我々の子孫により多くの財産を残せるようになるのではないでしょうか。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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